挿肘木とは
挿肘木は、柱の側面に差し込んで外へ突き出させた肘木である。普通の組物では、柱の頂部に大斗を据え、その上に肘木を載せる。挿肘木は柱の頭ではなく柱の途中に枘穴をあけて肘木を差し込むため、柱から直接腕が生えたように見える。
JAANUS(日本建築・美術用語辞典)は、挿肘木を主に大仏様に用いられるものとし、代表例に東大寺南大門(正治元年・1199年)を挙げる。南大門では、柱に何段も挿肘木を差し込み、段ごとに前へ持ち出して深い軒を支える。禅宗様でも大きな虹梁の下や縁の下に用いられるが、和様の建物にはまれである。表記は「差肘木」「指肘木」とも書かれる。
近代の建物でも、構造を見せる意匠として使われる。横浜市の總持寺大僧堂(昭和12年)は、中央の2本の独立円柱の上に独特な挿肘木を組むと解説されている。
見るときの手がかり
柱の頂部に大斗があるかどうかを見るとよい。大斗の上に肘木が載っていれば普通の組物、柱の側面から直接肘木が出ていれば挿肘木である。何段にも差し込まれていれば大仏様の手法を疑ってよい。
門では、軒桁や梁を受ける短い腕として現れることが多い。浜松市の方広寺総門(明治中期)は「二段の挿肘木で軒桁を受ける」と記録され、広島県三原市の眞田家住宅表門(昭和3年)は、挿肘木と斗で薬医門の女梁・男梁を受ける。
記事では、記録が挿肘木と書いている場合にその語を使う。柱の上に載る舟形の横木は舟肘木、柱から突き出して桁を受ける水平材は腕木で、それぞれ別の部材である。
参考文献
- JAANUS(Japanese Architecture and Art Net Users System)sashihijiki 挿肘木
- https://projects.mcah.columbia.edu/jaanus/record/sashihijiki
- 国指定文化財等データベース(文化庁)方広寺総門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012930
- 国指定文化財等データベース(文化庁)總持寺大僧堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004722
- 国指定文化財等データベース(文化庁)眞田家住宅表門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013649
最終更新: 2026.10.04