旧中山道の茶舗と、奥へ延びる敷地
小見家住宅(水村園)は、群馬県高崎市本町にある安政4年(1857年)創業の茶舗「水村園」の屋敷で、明治から昭和初期にかけて建てられた土蔵・煉瓦造の蔵・湯殿・隠居屋の8棟が、平成12年(2000年)12月4日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「こみけじゅうたく(みずむらえん)」。小見は家の名、水村園は店の名で、登録名はその二つを並べている。
店は旧中山道にあたる国道354号に面する。店の説明によれば、創業以来、江戸・明治・大正・昭和・平成・令和と六代にわたって同じ場所で茶を商ってきた。
敷地は間口9.6メートル、奥行46メートル。文化庁の解説は、この南北に細長い区画を高崎城下町時代の町割がそのまま残ったものとしている。通りに接する幅に対して、奥行はその5倍近い。蔵はこの奥行を埋めるように建ち並ぶ。
表側の姿は一度失われている。昭和34年(1959年)の国道354号の拡幅で店の正面が取り壊され、売り場は建て替えられた。文化庁の解説も、道路拡幅によって店蔵と主屋が失われたと記す。登録された8棟は、その奥で拡幅を免れた建物である。
防火帯をつくる8棟の配置
小見家住宅(水村園)の敷地は、中央に路地を通して両側に建物を置く。店の説明では、売り場の後方に六棟の蔵が連なるように建てられている。
西側には5棟の蔵が、南から北へ妻を接するようにして一列に続く。南端が明治39年(1906年)の新座敷、その北に着物蔵、1間の蔵前をあけて味噌蔵、明治20年(1887年)の新蔵、北西の隅に前蔵。文化庁の解説は、この土蔵の列を防火壁、あるいは防火帯として繰り返し説明している。
東側は、隣地との境の塀を兼ねた煉瓦造の防火壁が受け持つ。この壁を背にして、新座敷の向かいに湯殿、着物蔵・味噌蔵・新蔵の向かいにレンガ蔵が建ち、北東の隅には昭和2年(1927年)の隠居屋がある。敷地は、西を土の壁の列、東を煉瓦の壁に挟まれた細長い中庭の形をとる。
- 新座敷:明治39年(1906年)、土蔵造平屋建、建築面積22平方メートル
- 着物蔵:明治初期、土蔵造2階建、建築面積17平方メートル
- 味噌蔵:明治初期、土蔵造2階建、建築面積29平方メートル
- 新蔵:明治20年(1887年)、土蔵造2階建、建築面積23平方メートル
- 前蔵:明治中期、土蔵造2階建、建築面積17平方メートル
- 湯殿:大正中期、煉瓦造平屋建、建築面積12平方メートル
- レンガ蔵:大正中期、煉瓦造2階建、建築面積53平方メートル
- 隠居屋:昭和2年(1927年)、木造2階建、建築面積36平方メートル
登録番号は10-0044から10-0051まで連続する。登録基準は隠居屋だけが「造形の規範となっているもの」で、ほかの7棟は「再現することが容易でないもの」。文化庁の種別も分かれ、新蔵・前蔵・レンガ蔵の3棟は商いの建物、残る5棟は住まいの建物として扱われている。茶を納める蔵と、家の暮らしを支える蔵とが、一つの列の中に混ざり合っている。
煉瓦の積み方と、蔵に眠る茶
小見家住宅(水村園)で目を引くのは東側の煉瓦である。店の説明によれば、湯殿にはフランス積、レンガ蔵にはイギリス積と、異なる積み方が使われている。フランス積は同じ段に長手と小口を交互に並べ、イギリス積は長手だけの段と小口だけの段を一段おきに重ねる。同じ敷地の中で二つの積み方を見比べられる。
文化庁も湯殿の解説でフランス積に触れ、風呂場と便所のための建物にまで丁寧な仕事がされていると評価している。
中庭には、明治43年(1910年)11月に高崎で本格的な給水が始まった当時の水栓柱が残り、今も毎日使われていると店は説明する。登録の対象ではないが、蔵の列と同じ時代を過ごしてきた設備である。
店が伝える話がもう一つある。土蔵の茶箱に保管されてきた明治14年(1881年)産の茶葉で、店の説明では、日本に現存する最古の茶葉と認定されたという。認定の主体や経緯は店の説明からは分からないため、ここでは店の伝える話として紹介する。新蔵の2階には壁に造り付けた茶箱が並んでおり、茶を蔵に納めて守る商いの形は、建物のつくりにも残されている。
見学とアクセス
小見家住宅(水村園)は現在も営業している茶舗で、売り場には買い物の客として入ることができる。登録された8棟は売り場の奥にあり、住まいと商いに使われている私有の建物のため、内部は一般公開されていない。店は高崎市の町めぐり見学コースに含まれていると案内しており、店内で写真展などの企画展示を不定期に開き、見学の希望には相談に応じるとしている。
営業時間と定休日は店の公式サイトに記載がない。訪ねる前に電話(027-322-3213)で確かめるのが確実である。敷地の奥や蔵を撮影したいときも、店に一声かけてからにしたい。店によれば、瓦屋根の連なりは隣の敷地から眺められるという。
所在地は高崎市本町123(登録上の地番は本町123-1)。JR高崎駅から北西へ直線でおよそ1.2キロメートルの位置にあり、駅の西口から歩いて20分前後が目安になる。国道354号に面した店を目印にするとよい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)新座敷
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002002
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)着物蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002003
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)味噌蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002004
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)新蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002005
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)前蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002006
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)湯殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002007
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)レンガ蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002008
- 国指定文化財等データベース(文化庁):小見家住宅(水村園)隠居屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002009
- 文化遺産オンライン:小見家住宅(水村園)新座敷
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/167312
- 安政四年創業 茶舗 水村園 公式サイト:水村園の歴史
- https://mizumuraen.jp/wp/
最終更新日: 2026.09.24
基本情報
| 名称 | 小見家住宅(水村園) |
|---|---|
| 所在地 | 群馬県高崎市本町123-1 |
| 所有者 | 個人 |
| 指定 | 登録有形文化財 8件 |
| 座標 | 36.33076, 139.00315 |