商いを続ける明治の店構え

岡直三郎商店大間々工場店舗兼主屋は、群馬県みどり市大間々町大間々1013にある明治中期の木造商家建築で、平成25年(2013年)12月24日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は10-0306である。

建物は通りに東面して建つ。建てられた当時と同じ向きのまま、同じ道に面している。保存のために囲われた建物ではない。正面の戸を開ければ、そこは今も営業している醤油の直売店で、店を切り盛りしているのは天明7年(1787年)からこの地で醸造を続ける当の会社である。

創業者は近江出身の商人、初代岡忠兵衛。当時の大間々は、足尾銅山の銅を江戸へ運ぶあかがね街道(銅山街道)の宿場町だった。荷と人と現金が毎日目の前を通る場所に、屋号「河内屋」を掲げて醤油醸造を始めたことになる。現在の登録商標は「日本一しょうゆ」、本社は東京都町田市に置かれ、製造はこの大間々工場に集約されている。

登録の理由と、火を免れたこと

適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。つまりこの建物が、大間々の町並みの表情そのものを作っているという評価である。

明治28年(1895年)、大間々は大火に見舞われて市街の多くを失った。この建物はその火を免れている。外観が焼け跡の建て替えではなく明治の商家の姿のまま残っている理由は、ほとんどこの一点に尽きる。岡商店の敷地には明治から大正にかけての大型土蔵が並び、その一群が現在の大間々市街のなかで際立って見えるのも同じ事情による。

構造は木造二階建、切妻造桟瓦葺。外壁は漆喰塗で仕上げる。二階正面には横長の格子窓が左右に配され、屋根の両端には蛇腹付の袖うだつが立ち上がる。うだつは類焼を防ぐ実用の防火壁であると同時に、それを設けられるだけの身代があることを通りに示す装置でもあった。

平面は南北で用途が分かれる。南半が店舗、北半が事務室や座敷などの生活・執務空間で、店舗部の後方には煉瓦造の煙突が残る。みどり市の解説によれば、店舗部の規模はおよそ八間×五間半。曲屋状に増築された住居部分は明治33年(1900年)頃までに建て継がれたもので、近江から派遣された支配人の居宅として使われたという。登録上の建築面積は216平方メートルで、門および煙突も登録の対象に含まれている。

見どころと訪ね方

まず外から眺めたい。屋根両端の袖うだつは、この建物の格を読み取るいちばん手早い手がかりになる。二階の格子窓も見ておきたい。横に長く、天地が低い比例は、通りの向かい側まで下がって見上げるとよく分かる。屋根の背後からは煉瓦煙突が立ち上がっていて、正面の意匠が控えめに伏せている事実、つまりここが住まいであると同時に工場でもあることを教えてくれる。

内部は平成24年(2012年)に古民家再生の手法で改修されたが、抜き取られてはいない。会社の案内では、昔ながらのかまど、座敷、金庫、電話室が今も残っていると紹介されている。醤油瓶の並ぶ棚の合間にそれらが同居している。店に入るだけなら料金はかからない。

もうひとつの柱が仕込蔵の見学である。案内は無料、所要はおよそ15〜20分。案内開始時刻は10時、11時、13時、14時、15時、16時と公表されている。10名以上の団体は電話での事前予約が必要で、仕込みの繁忙期には受けられない場合もあるため、少人数でも一報を入れてから向かうほうが確実だろう。蔵の中には100年以上使い続けられている木桶が並ぶ。

交通は分かりやすい。わたらせ渓谷鐵道の大間々駅から徒歩約5分、東武桐生線などが乗り入れる赤城駅からは徒歩約13分。駐車場は無料で利用できる。ひとつ注意が要るのは段差で、明治の建物であるためバリアフリーには対応していない。

撮影の可否は公式に明示されていない。食品を製造している現役の工場でもあるので、店内や蔵で写真を撮る前に店頭で確認してほしい。徒歩圏には、大正10年(1921年)築の旧大間々銀行を転用したみどり市大間々博物館(コノドント館)や、昭和12年(1937年)築の木造劇場ながめ余興場がある。渡良瀬川が刻んだ高津戸峡も南へ歩いてすぐである。

Q&A

Q岡直三郎商店大間々工場店舗兼主屋の中に入ることはできますか?
Aできます。登録建物の一階部分が同社の直売店として営業しており、入場料はかかりません。醤油、味噌、漬物、うどん、菓子などを販売しているほか、醤油を使ったソフトクリームも人気があります。
Q岡直三郎商店の醤油蔵見学は有料ですか。予約は必要ですか?
A仕込蔵の見学は無料で、所要時間はおよそ15〜20分です。案内開始時刻は10時・11時・13時・14時・15時・16時と案内されています。10名以上の場合は事前の電話予約が必要で、仕込みの都合で実施できない日もあります。
Q岡直三郎商店大間々工場店舗兼主屋はいつ建てられたのですか?
A文化庁のデータベースは主体部を明治中期、西暦では1883年から1897年の間と記載しています。住居部分はその後、明治33年(1900年)頃までに増築されました。会社の創業自体はさらに古く、天明7年(1787年)にさかのぼります。
Q岡直三郎商店大間々工場へは最寄り駅からどう行けばよいですか?
Aわたらせ渓谷鐵道の大間々駅から徒歩約5分、赤城駅からは徒歩約13分です。車の場合は無料駐車場が利用できます。建物には段差があり、車いすでの見学には対応していません。
Q同じ住所にある岡直三郎商店大間々工場文庫蔵とはどう違うのですか?
A同じ敷地内にある別々の登録文化財です。店舗兼主屋は明治期の建物で、通りに面して商いと暮らしを担いました。文庫蔵はその北に建つ大正2年(1913年)の土蔵で、帳簿類を火から守るために建てられています。

基本情報

名称岡直三郎商店大間々工場店舗兼主屋(おかなおさぶろうしょうてんおおままこうじょうてんぽけんしゅおく)
所在地群馬県みどり市大間々町大間々1013
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号10-0306/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
指定年平成25年(2013年)12月24日登録(第76回登録)
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積216平方メートル、門及び煙突付
所有者株式会社岡直三郎商店
公開状況直売店として公開(入場無料)。仕込蔵見学は無料・所要約15〜20分、10名以上は要予約。段差があり車いす非対応

参考文献

国指定文化財等データベース — 岡直三郎商店大間々工場店舗兼主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009706
国指定文化財等データベース — 岡直三郎商店大間々工場文庫蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009707
日本一しょうゆ 株式会社岡直三郎商店 — 大間々工場
https://nihonichi-shoyu.co.jp/omama
日本一しょうゆ 株式会社岡直三郎商店 — 会社概要
https://nihonichi-shoyu.co.jp/company
みどり市観光ガイド — 日本一しょうゆ 岡直三郎商店
https://16106midori.jp/spot/play/136/
みどり市観光ガイド — 岡直三郎商店 醤油蔵見学
https://16106midori.jp/spot/play/230/
心にググっと観光ぐんま — 株式会社岡直三郎商店 大間々工場
https://gunma-kanko.jp/spots/183
群馬県 — 群馬の文化財
https://www.pref.gunma.jp/page/5190.html

最終更新日: 2026.08.08