白牡丹酒造とは

白牡丹酒造は、広島県東広島市西条本町に延宝蔵と天保蔵の二つの酒蔵をもつ延宝3年(1675年)創業の蔵元で、両蔵に残る建物と工作物の計8件が平成29年(2017年)に登録有形文化財となった。社の表記では「延宝庫」「天保庫」と書くが、文化庁の台帳は「蔵」の字を用いる。

創業者は島六郎兵衛晴正で、「嘉登屋」の屋号で酒造りを始めた。社に伝わる古記録は、慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いで西軍に属した島左近の次男彦太郎忠正が安芸国西条四日市に逃れて住みつき、その孫が六郎兵衛であったと記す。島家は左近を初代、六郎兵衛を四代と数え、現社長が十五代目にあたる。

文化2年(1805年)には狂歌師の蜀山人(太田南畝)が島六郎兵衛の家に泊まり、牡蠣を肴に酒を飲んだことが紀行文に書き留められている。天保10年(1839年)12月、関白鷹司政通から家紋の牡丹にちなむ「白牡丹」の酒銘を賜り、これが今の社名になった。法人化は昭和14年(1939年)である。

酒銘の由来とともに社が大切にしてきたのが文人との縁で、夏目漱石は横山大観の牡丹図に句を寄せ、版画家の棟方志功は昭和30年代(1955年以降)にロゴの彫刻文字と「牡丹花」の版画を手がけた。

延宝蔵と天保蔵の配置

白牡丹酒造の登録文化財は、西条本町709番地の延宝蔵と879番地の天保蔵に4件ずつ分かれている。二つの敷地は南北におよそ100メートル離れ、延宝蔵が北、天保蔵が南にある。どちらも旧西国街道の宿場町、四日市宿の町割りのなかに入っている。

延宝蔵

延宝蔵は、社が創業の地とする敷地に建つ。南端棟には延宝3年(1675年)の棟札の写しが残り、文久2年(1862年)の「四日市町並絵図」ではこの場所に「醸造蔵」と記されている。もとは南端棟の南、街道に面して主屋が建っており、短冊形の細長い敷地の奥へ酒蔵を並べる宿場町の配置がいまも読み取れる。

敷地の西側を南端棟が画し、その北に北端棟が続いて東へ折れる。井戸は南端棟の南東、煙突は南端棟の東に立つ。社の年表によれば、延宝蔵は昭和19年(1944年)の企業整備で清酒製造の免許を失い、昭和35年(1960年)に醸造を再開した。

天保蔵

天保蔵は、敷地の中ほどに大きな仕込蔵を据え、南端に精米所を置く。井戸は仕込蔵の北、主屋の背後にあり、煙突は仕込蔵の北西に立つ。社の年表には、平成8年(1996年)に旧本社瓶詰場を改修して天保庫を新設稼働し、平成12年(2000年)に四季醸造の設備を入れたとある。全国新酒鑑評会への出品酒にも「天保蔵」の名が付けられており、現役の醸造場である。

延宝は創業の年号、天保は酒銘を賜った年号と同じだが、二つの蔵の命名の経緯を記した資料は確認できなかった。

白牡丹酒造の8件が登録された理由

白牡丹酒造の8件は、平成29年(2017年)6月28日に第87回の登録として同時に登録有形文化財となった。登録番号は34-0234から34-0241までの連番で、延宝蔵の南端棟・北端棟・井戸・煙突、天保蔵の仕込蔵・精米所・井戸・煙突の順に並ぶ。

登録基準で見ると、6件が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、天保蔵の精米所と井戸の2件が「造形の規範となっているもの」にあたる。建築年代は延宝蔵南端棟と井戸の江戸中期から、天保蔵仕込蔵の昭和前期までと幅が広い。土蔵造の酒蔵、石の井戸、煉瓦の煙突という、酒造りに欠かせない三種の構造物が一つの蔵元の二つの敷地にそろって残る点に、この登録のまとまりがある。

延宝蔵はこれとは別に、令和6年(2024年)2月21日に史跡「西条酒蔵群」を構成する4か所の一つとなった。史跡は西条で最初期から酒造を行ってきた島家の蔵として延宝蔵を挙げ、宿場町の町家の背後に建てられた小規模な酒蔵の姿を示す遺構と位置づけている。天保蔵は史跡の範囲に含まれていない。

白牡丹酒造の見学と行き方

一般に開かれているのは、西条本町15-5の本社展示室である。公式サイトは天保蔵と本社展示室を一つの見学案内にまとめ、白牡丹酒造の歴史や酒造りの道具、棟方志功が先代社長と交わした手紙と作品を展示している。入場は無料で、試飲と蔵元限定酒の販売もある。

公式サイトの営業時間は、平日が午前9時30分から午後4時まで、土曜と日曜が午前10時30分から午後4時までで、祝祭日は休み。東広島市の観光サイトは4月から10月の第2・第4土曜も休みとし、酒蔵営業時間の表では平日の正午から午後1時を休憩として、電話予約とインターホンで応対するとしている。平日はスタッフが常駐しないので、着いたらインターホンで呼び出す。10名以上で訪れる場合は事前に連絡するよう求められている。

本社の前では、仕込みにも使う井戸水「冥加の井水」を飲むことができる。

延宝蔵は建物の老朽化のため原則非公開で、一般の立ち入りは断られている。東広島市も史跡の構成施設のうち延宝蔵を非公開施設としている。天保蔵の仕込蔵や精米所の内部見学は、公式サイトの案内に含まれていない。登録された8件は、いずれも敷地の外から見られる範囲で眺めることになる。撮影についての決まりは公式サイトに見当たらないため、展示室の中で撮る場合は現地で確かめたい。

JR山陽本線の西条駅から本社までは徒歩約5分で、駅前に広がる西条酒蔵通りのエリアにある。車の場合は山陽自動車道の西条インターチェンジから約10分。駐車は提携の有料駐車場を使う形で、買い物をすると1時間分の料金が無料になる。営業時間は変わることがあるので、訪問前に公式サイトか観光サイトの酒蔵営業時間のページで確かめてほしい。

参考文献

国指定文化財等データベース 白牡丹酒造延宝蔵南端棟(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011823
国指定文化財等データベース 白牡丹酒造延宝蔵北端棟(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011824
国指定文化財等データベース 白牡丹酒造天保蔵仕込蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011827
国指定文化財等データベース 白牡丹酒造天保蔵精米所(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011828
国指定文化財等データベース 西条酒蔵群(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/00004190
史跡 西条酒蔵群(東広島市)
https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkaishogaigakushu/3/11/bunkazai/town/saijo/sakaguragun/index.html
白牡丹酒造延宝蔵(史跡 西条酒蔵群)(東広島市)
https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkaishogaigakushu/3/11/bunkazai/town/saijo/sakaguragun/39656.html
蔵めぐり・見学(白牡丹酒造)
https://www.hakubotan.co.jp/sakagura/
会社案内(白牡丹酒造)
https://www.hakubotan.co.jp/about/
酒銘の由来(白牡丹酒造)
https://www.hakubotan.co.jp/origin/
文人墨客との交流(白牡丹酒造)
https://www.hakubotan.co.jp/story/
本醸造酒ほか 商品一覧(白牡丹 公式ネットショップ)
https://hakubotan.shop-pro.jp/?mode=cate&cbid=2191469&csid=0
白牡丹酒造(東広島おでかけ観光サイト「ヒガシル」)
https://higashihiroshima-kanko.jp/spot/hakubotan/
酒蔵の営業時間(東広島おでかけ観光サイト「ヒガシル」)
https://higashihiroshima-kanko.jp/sakagura-schedule/

最終更新日: 2026.09.16

基本情報

名称白牡丹酒造
所在地広島県東広島市西条本町709・879
所有者白牡丹酒造株式会社
指定登録有形文化財 8件
座標34.42979, 132.74520