明治6年創業、西条駅前に19件の登録文化財が並ぶ酒蔵
賀茂鶴酒造は、広島県東広島市西条本町にある明治6年(1873年)創業の酒蔵で、敷地に建つ一号蔵から八号蔵煙突、本社事務所、蓬莱庵画室棟までの19件が、平成29年(2017年)6月28日にそろって国の登録有形文化財に登録された。読みは「かもつるしゅぞう」で、英語の社名は Kamotsuru Sake Brewing Co., Ltd. である。
蔵元の公式サイトによると、賀茂郡で代々酒造りを営んでいた木村家の四代目、木村和平が灘で醸造の技術を学び、明治6年に西条で酒造りを始めた。「賀茂鶴」の酒銘は同じ年の9月9日、重陽の節句に付けられている。明治27年(1894年)には山陽鉄道が通って蔵から歩いて数分の場所に西条駅ができ、明治31年(1898年)には同じ西条で機械製作を営む佐竹利市に頼んだ動力精米機を導入した。大正7年(1918年)に県内の酒造家と共同出資して賀茂鶴酒造株式会社となっている。
東広島市によれば、創業者の木村和平が明治6年に建てた一号蔵は、近代に入って西条で最初に造られた酒蔵である。一号蔵は白牡丹酒造延宝蔵・旧広島県醸造試験場・福美人酒造大黒蔵とともに「西条酒蔵群」の名で令和6年(2024年)2月21日に国の史跡にも指定された。
賀茂鶴酒造の19件と建てられた順
賀茂鶴酒造の19件は、第87回の登録で登録番号34-0213から34-0231として登録された。文化庁の年代で並べると、次の4つの時期に分かれる。
- 明治前期(1868〜1882年):一号蔵の西棟・東棟・北土蔵・南土蔵・井戸の5件。創業の地に残る最も古い一群で、西棟には大正期と昭和前期の増築部分がある
- 明治後期(1898〜1912年):二号蔵の東西棟・南北棟・東井戸・西井戸・煙突の5件
- 大正期:三号蔵と三号蔵煙突(大正前期)、四号蔵・四号蔵井戸・四号蔵煙突(大正後期)の5件
- 昭和前期(1926〜1945年):本社事務所・研究室棟・八号蔵煙突・蓬莱庵画室棟の4件。蓬莱庵画室棟は平成17年(2005年)に東京から移築された
内訳は建物が11棟、井戸が4基、煉瓦造の煙突が4基である。登録基準は、三号蔵が「再現することが容易でないもの」、二号蔵西井戸と蓬莱庵画室棟が「造形の規範となっているもの」で、残る16件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」とされた。
建物の大きさの差も大きい。いちばん大きいのは建築面積1,099平方メートルの四号蔵、いちばん小さいのは31平方メートルの一号蔵北土蔵である。煙突は高さ14メートルの二号蔵煙突から23.4メートルの三号蔵煙突まであり、どれもイギリス積で積まれている。
賀茂鶴酒造の敷地の配置と歩く順
蔵元によると、賀茂鶴酒造はJR西条駅前の東側、西条酒蔵通りの北寄りにある。19件は大きく2か所に分かれる。西側の一角が創業の地で、一号蔵の西棟が敷地の西辺に沿って長く延び、東棟がこれと向かい合う。東棟の南に北土蔵と南土蔵が並んで西を向き、敷地の南東隅に一号蔵井戸がある。東広島市によると、一号蔵の南、もとの主屋が建っていた場所は西条本町歴史広場として市が整備している。
東側の一角はいまの本社と醸造蔵である。旧本陣の隣に本社事務所が建ち、その東、二号蔵の前面に研究室棟がある。二号蔵東西棟の背面に南北棟と三号蔵が接し、三号蔵の北に四号蔵、二号蔵の東方に八号蔵がある。煙突は二号蔵東西棟の西、三号蔵の西、四号蔵の西、八号蔵の脇の4か所に立ち、それぞれ上部に「賀茂鶴」の文字を掲げる。
蔵元の沿革によると、二号蔵は昭和59年(1984年)、八号蔵は昭和60年(1985年)、四号蔵は昭和62年(1987年)に改修された。平成7年(1995年)に郊外の御薗醸造蔵が醸造を始めた際に四号蔵は閉じられ、本社の二号蔵と八号蔵での手造りによる醸造はその後も続けられた。
賀茂鶴酒造の見学:一号蔵の蔵元直営店と醸造蔵見学ツアー
賀茂鶴酒造で誰でも中に入れるのは、一号蔵を改装した蔵元直営店だけである。令和元年(2019年)に見学室直売所として営業を始め、酒造りの道具や資料の展示、英語字幕付きの解説映像、有料試飲のバー、売店がある。営業は午前10時から午後6時(入館は午後5時45分まで)、入館無料で予約は要らない。休業はお盆・年末年始と酒まつり前などの臨時休業で、20名以上で訪れる場合はフォームで人数を知らせる。
二号蔵などの醸造蔵はふだん公開されていない。蔵元は不定期に予約制の「醸造蔵見学ツアー」を開いており、参加費は2,000円、所要約1時間、各回定員15名で、集合は一号蔵直営店の東棟である。案内は日本語のみで、小学生以下は蔵に入れない。秋の西条酒まつり(2026年は10月10日・11日)の日には、二号蔵の杜氏が醸造蔵の内部を案内する予約制の企画も組まれる。
蔵元は登録が決まった平成29年の案内で、各建物は外観のみの見学で建物内には入れないとしている(一号蔵はその後に直営店として公開された)。蓬莱庵は来客をもてなす迎賓館で、一般には公開されていない。
賀茂鶴酒造への行き方
賀茂鶴酒造の最寄りはJR山陽本線の西条駅で、蔵元の案内では一号蔵直営店まで徒歩約3分である。車の場合は、山陽新幹線の東広島駅から約15分、広島空港から約20分かかる。
普通車から長さ9メートルまでの中型バスは蔵元の駐車場を使える。大型バスは東広島市の観光バス専用駐車場を使うよう案内されている。所在地の表記は、直営店が「東広島市西条本町9番7号」、本社と醸造蔵が「西条本町4番31号」で、文化庁のデータベースでは各棟が地番で示されている。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):賀茂鶴酒造本社事務所
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011802
- 国指定文化財等データベース(文化庁):賀茂鶴酒造四号蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011811
- 国指定文化財等データベース(文化庁):賀茂鶴酒造一号蔵西棟
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011816
- 国指定文化財等データベース(文化庁):賀茂鶴酒造一号蔵北土蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011818
- 文化遺産オンライン:賀茂鶴酒造本社事務所
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/245598
- 東広島市:史跡 西条酒蔵群
- https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkaishogaigakushu/3/11/bunkazai/town/saijo/sakaguragun/index.html
- 東広島市:賀茂鶴酒造一号蔵(史跡 西条酒蔵群)
- https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkaishogaigakushu/3/11/bunkazai/town/saijo/sakaguragun/39657.html
- 賀茂鶴酒造株式会社:これまでの150年
- https://www.kamotsuru.jp/history/
- 賀茂鶴酒造株式会社:賀茂鶴の酒蔵が登録有形文化財に
- https://www.kamotsuru.jp/news/7884/
- 賀茂鶴酒造株式会社:一号蔵(蔵元直営店)
- https://www.kamotsuru.jp/tour/
- 賀茂鶴酒造株式会社:醸造蔵見学ツアー開催のお知らせ
- https://www.kamotsuru.jp/tour/touji/
- 賀茂鶴酒造株式会社:【酒まつり2026】杜氏による蔵案内 参加者募集
- https://www.kamotsuru.jp/news/16814/
- 賀茂鶴酒造株式会社:遠州流茶道呉支部創立60周年記念茶会 賀茂鶴「蓬莱庵」にて開催
- https://www.kamotsuru.jp/news/8021/
- 賀茂鶴酒造株式会社:会社概要
- https://www.kamotsuru.jp/company/outline/
最終更新日: 2026.10.01
基本情報
| 名称 | 賀茂鶴酒造 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県東広島市西条本町 |
| 所有者 | 賀茂鶴酒造株式会社 |
| 指定 | 登録有形文化財 19件 |
| 座標 | 34.43069, 132.74616 |