恋しき主屋とは ― 三つの時期が重なった街道沿いの顔
恋しき主屋は、広島県府中市府中町の石州街道沿いに建つ元料亭旅館の主屋で、明治初期に建てられ、明治38年(1905年)と大正元年(1912年)に増築されたのち、平成16年(2004年)に登録有形文化財に登録された。
構造は木造2階一部3階建、瓦葺で、建築面積は347平方メートル。恋しきの5棟のなかでいちばん大きく、通りに面しているのはこの建物だけである。客を迎え、宴席を設けたのもこの棟で、奥の離れへはここを通って庭へ出た。
ひと目では1棟に見えるが、恋しき主屋は時期の違う部分の寄せ集めでできている。通りに沿った2階建の部分は切妻造の平入で、これが明治初期の姿。その背後へ奥行き深く延びる3階建の客室棟は明治38年と大正元年の増築で、正面の中央に載った望楼のような3階も、あとから加えられた。
恋しき主屋が登録有形文化財になった理由
登録有形文化財には3つの基準があり、恋しき主屋が該当するのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建物そのものの古さや技術よりも、町並みの中でどういう役割を果たしているかが評価された。
文化庁の解説は、格子や手摺といった細部に伝統的な意匠を残しながら、増築を重ねた結果として変化に富んだ外観になり、街路の景観の中で際立った存在になっていると述べている。通りに面した2階建の屋根の上に、3階の望楼がひとつ突き出る。その凹凸が、宿場町府中の通りに目印をつくっている。
登録は平成16年(2004年)11月8日で、登録番号は34-0067。同じ日に、恋しき主屋の背後にある離れ4棟も登録された。離れのほうはいずれも「造形の規範となっているもの」という別の基準で登録されており、恋しき主屋だけが景観の側から評価されている。
恋しき主屋の見どころ ― 通りと庭から時代を読み分ける
通りから見る正面
まず道の向かい側に立って、恋しき主屋の正面を眺めたい。軒の低い2階建が横に長く続き、屋根の棟は通りと平行に走る。その屋根の中央から、小さな3階がひとつだけ持ち上がっている。物見櫓を思わせる望楼風の造りで、これも後年の増築である。
1階と2階の格子、2階の手摺には細い部材が並び、近づくとそのリズムが外観を締めているのが分かる。大きく造り替えた建物でも、通りに面した細部は伝統的な町家の作法を守っている。
庭から見る客室棟
館内を抜けて庭へ出たら、振り返って恋しき主屋を見上げてほしい。通りからはほとんど見えなかった3階建の客室棟が、奥へ延びながら庭の上にそびえている。明治38年と大正元年の増築は、客室を上へ奥へと足していく工事だった。通り側の控えめな表情と庭側の高さの差に、料亭旅館として客を増やしていった過程がそのまま表れている。
2階の大広間
公開されている範囲では、2階の大広間が恋しき主屋でもっとも広い部屋で、50人ほどが入る。宴席の舞台になった部屋で、今も講演会や会合に貸し出されている。
恋しき主屋の見学方法
恋しき主屋は1階と2階が公開されており、入館は無料である。ただし一部の部屋は非公開で、3階には上がれない。3階の様子は、府中市観光協会が公開している3Dの館内映像で見られる。
大広間や1階の小部屋は時間単位で貸し出されているため、利用中は中に入れないことがある。大広間を見たい場合は、事前に恋しき(0847-41-5140)に空き状況を尋ねておくと確実だ。
正面の3階を含めた全景は、道の向かい側から見るのがいちばん収まりがよい。館内の撮影の可否は案内に明記されていないので、受付で確かめてほしい。開館日と敷地への行き方は、恋しきのページにまとめてある。
Q&A
- 恋しき主屋はいつ建てられたのですか?
- 恋しき主屋の通り側の2階建部分は明治初期の建築です。背後の3階建の客室は明治38年(1905年)と大正元年(1912年)の増築で、正面中央の3階もあとから加えられました。
- 恋しき主屋の中は見学できますか?入館料はかかりますか?
- 恋しき主屋は1階と2階が公開されています(一部非公開)。入館は無料で、開館時間は午前9時から午後5時までです。
- 恋しき主屋の3階には上がれますか?
- 恋しき主屋の3階は公開されていません。府中市観光協会の3D館内映像で、普段は見られない3階の様子を見ることができます。
- 恋しき主屋はなぜ登録有形文化財になったのですか?
- 恋しき主屋は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として、平成16年(2004年)に登録されました。伝統的な格子や手摺を残しつつ、増築で変化に富んだ外観が街道の景観の中で際立っている点が評価されています。
- 恋しき主屋の大広間は借りられますか?
- 恋しき主屋2階の大広間は、定員50人ほどで貸室として利用できます。府中市の案内では1日22,000円、1時間2,750円(税込)です。
基本情報
| 名称 | 恋しき主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県府中市府中町字横町564-1、字永井181-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2004年(平成16年)11月8日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階一部3階建、瓦葺、建築面積347平方メートル |
| 所有者 | 株式会社恋しき |
| 公開状況 | 1階・2階を公開(一部と3階は非公開)。入館無料、午前9時から午後5時、1月4日から12月28日 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)恋しき主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004416
- 文化遺産オンライン 恋しき主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/180636
- 「国登録有形文化財 恋しき」主屋の一般公開(広島県府中市)
- https://www.city.fuchu.hiroshima.jp/soshiki/keizaikanko/syokokanko/kankosinko/koisiki/9340.html
- 恋しきの貸室が時間単位で利用できます!(広島県府中市)
- https://www.city.fuchu.hiroshima.jp/soshiki/keizaikanko/syokokanko/kankosinko/koisiki/9343.html
- 恋しき(府中市観光協会)
- https://fuchu-kanko.jp/recommended/recommended-902/
最終更新日: 2026.09.24