恋しき離れ(桐・さつきの間)とは ― 書院造でまとめた最大の離れ
恋しき離れ(桐・さつきの間)は、広島県府中市府中町の元料亭旅館「恋しき」の主屋の後方に建つ大正後期の離れで、平成16年(2004年)に登録有形文化財に登録された。読みは「こいしきはなれ(きり・さつきのま)」。
木造平屋建、建築面積107平方メートル。恋しきの4棟の離れのうちもっとも大きい。真壁造で、屋根は棟をL字形に折り曲げた入母屋造の桟瓦葺である。
1棟の中に二つの客間が入っている。桐の間は6畳と8畳の2室続き、さつきの間は6畳の1室で、両者は東側の内玄関から延びる廊下でつながる。つまり恋しき離れ(桐・さつきの間)は、2組の客を同時に通せる離れで、玄関を共有しながらそれぞれの座敷へ分かれて入る造りになっている。
恋しき離れ(桐・さつきの間)が登録された理由
恋しき離れ(桐・さつきの間)は、登録有形文化財の基準のうち「造形の規範となっているもの」として、平成16年(2004年)11月8日に登録された。登録番号は34-0070。
同じ基準で登録されたほかの離れと違い、文化庁の解説はこの建物を数寄屋風ではなく書院造と説明している。書院造は床の間や違い棚を備えた格式ある座敷の形式で、細い丸太や皮付き材を好む数寄屋とは方向が逆になる。庭の奥に数寄屋風の小さな離れを散らし、主屋のすぐ後ろには書院造の大きな離れを据えるという配置に、座敷の使い分けが見える。
外観について解説は、外壁を黒漆喰塗とし、下屋庇を廻した堂々とした構成だと評している。黒い壁に柱の線が通り、低い庇が足元を締める。小さな離れが木立に隠れるのとは反対に、この棟は庭の中で存在を主張する側に回っている。
恋しき離れ(桐・さつきの間)の見どころ ― L字の入母屋と下屋庇
外から見てまず目に入るのは屋根の形だ。棟がL字に折れているため、入母屋の屋根が二方向に張り出し、見る位置によって妻の三角形が一つにも二つにも見える。庭を少し歩きながら、屋根の輪郭が変わっていく様子を追ってみてほしい。
その下を、下屋庇が建物をぐるりと巡っている。本体の屋根より一段低い位置にもう一重の庇を回す手法で、建物の足元に水平の線が加わり、平屋でも重心の低い、どっしりとした姿になる。
外壁は黒い漆喰で塗られている。真壁造なので柱が見えており、黒い壁の中に木の柱が等間隔に立つ。庭の緑を背にしても、書院造の大きな離れがはっきり浮かび上がるのはこの黒壁のおかげである。
内部に入れる機会があれば、桐の間とさつきの間が1本の廊下で結ばれている関係にも注目したい。内玄関から廊下を進み、どちらの座敷へ曲がるかで、同じ離れでもまったく別の客間に通されたことになる。
恋しき離れ(桐・さつきの間)の見学方法
恋しき離れ(桐・さつきの間)の内部は、通常の見学では公開されていない。ただし、登録された4棟の離れのうち、貸室として借りられるのはこの棟だけである。府中市の案内では、料金は1日5,500円、1時間690円(税込)で、定員は10人ほど。茶会や着付け、生け花などの利用が想定されている。
座敷の中まで見たい場合は、借りて使うのが唯一の方法になる。予約と空き状況は恋しき(0847-41-5140)に問い合わせる。
外観は庭から自由に見られる。主屋のすぐ後ろ、中庭に面して建っているので、主屋から庭へ出るとすぐ近くに見える。開館日と敷地への行き方は、恋しきのページにまとめてある。
Q&A
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)の中に入ることはできますか?
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)の内部は通常の見学では非公開ですが、貸室として借りれば利用できます。登録された離れで貸室になっているのはこの棟だけです。
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)を借りる料金はいくらですか?
- 府中市の案内では、恋しき離れ(桐・さつきの間)の使用料は1日5,500円、1時間690円(税込)で、定員は10人ほどです。
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)はいつ建てられたのですか?
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)は大正後期の建築で、平成16年(2004年)に登録有形文化財に登録されました。
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)はほかの離れとどう違いますか?
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)は建築面積107平方メートルで離れの中でもっとも大きく、数寄屋風のほかの離れと異なり書院造でまとめられています。
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)の部屋はどう分かれていますか?
- 恋しき離れ(桐・さつきの間)は、6畳と8畳の2室からなる桐の間と、6畳1室のさつきの間に分かれ、東側の内玄関から廊下でつながっています。
基本情報
| 名称 | 恋しき離れ(桐・さつきの間) |
|---|---|
| 所在地 | 広島県府中市府中町字永井178、179-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2004年(平成16年)11月8日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積107平方メートル |
| 所有者 | 株式会社恋しき |
| 公開状況 | 内部は通常非公開(貸室として利用可)。外観は庭園から見学可(無料、午前9時から午後5時、1月4日から12月28日) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)恋しき離れ(桐・さつきの間)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004419
- 文化遺産オンライン 恋しき離れ(桐・さつきの間)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/195419
- 恋しきの貸室が時間単位で利用できます!(広島県府中市)
- https://www.city.fuchu.hiroshima.jp/soshiki/keizaikanko/syokokanko/kankosinko/koisiki/9343.html
- 「国登録有形文化財 恋しき」主屋の一般公開(広島県府中市)
- https://www.city.fuchu.hiroshima.jp/soshiki/keizaikanko/syokokanko/kankosinko/koisiki/9340.html
最終更新日: 2026.09.24