山成酒造西仕込蔵

敷地の西端に、6棟のなかで最も大きな建物が、間口いっぱいに長く延びる。山成酒造西仕込蔵である。東仕込蔵と同じく明治前期(1868~1882年)に建ち、のちに昭和中期の増築棟を南へ継ぎ足して、長辺は建築面積262平方メートルに達した。妻側から見ると、継ぎ足された棟が一続きの壁のように見える。

どんな建物か

木造2階建、南北棟の切妻桟瓦葺で、外壁は縦板張の腰の上を漆喰で塗る。内部はほぼ一室で、中央西寄りの一画を除いて間仕切がなく、広い作業場をなす。

その一画が麹室であり、建物の造りはこの部屋を中心に組み立てられている。ほかはすべて作業の床に譲られ、麹室だけが蔵のなかで動かない管理された一室として立つ。

登録の理由と価値

令和6年(2024年)3月6日、登録番号33-0366として登録された。多くの仲間と同じく、その大きさが酒蔵の町並みをかたちづくる点が評価された。登録の制度は、国宝や重要文化財を選ぶ指定とは異なり、当時はありふれていても土地の景観の要となる大きな建物を、凍結せず使い続けながら守るためのものである。

広い床のなかで囲われた麹室は、酒造りの最も繊細な工程を受け持つ。米にコウジカビを繁殖させてデンプンを糖に変える麹づくりには、一定の温度と湿度が要る。そのため麹室は部屋のなかの部屋として築かれた。今もその場所に立つ麹室を見れば、蔵全体がこの一つの管理された空間を軸に組まれていることがわかる。

見どころ

外からは、わずかに段差を持つ長い輪郭が目をひく。建て替えではなく、商いの拡大に合わせて継ぎ足してきた歴史がそこに刻まれている。腰の縦板張は、古い蔵の海鼠壁よりも簡素な仕上げで、酒蔵が大きくなった後期の実用的な段階をうかがわせる。

内に入れば、間仕切のない広い床と、断熱された狭い麹室の対比から、どの工程に最も気を遣うかが見てとれる。

Q&A

Q内部の麹室とは何ですか。
A麹をつくる断熱された部屋です。米にコウジカビをつけてデンプンを糖に変える工程で、一定の温度と湿度が要るため、広い蔵のなかに密閉された部屋として設けられています。
Qなぜ6棟で最も大きいのですか。
A明治前期に建ち、商いの拡大とともに昭和中期に南へ増築されたためで、建築面積262平方メートルと6棟で最大になりました。
Q見学で麹室を見られますか。
A見学は要事前電話予約です。麹室は作業の場のため、入れるかどうかは季節や日によります。事前に営業時間・料金とあわせてご確認ください。
Q東仕込蔵とどう違いますか。
Aどちらも明治前期に建ち後に増築された蔵ですが、西仕込蔵はより大きく、腰は縦板張で、タンクの列ではなく麹室を軸に造られています。
Q指定ですか、登録ですか。
Aほかの蔵と同じく登録です。登録は、国宝などの指定とは別に、特徴ある古い建物を日常の用に供しながら守る仕組みです。

Basic Information

名称山成酒造西仕込蔵(やまなりしゅぞうにししこみぐら)
所在地岡山県井原市芳井町簗瀬字見瀬側23
種別登録有形文化財(建造物)
登録令和6年(2024年)3月6日/登録番号 33 - 0366
年代明治前期(1868~1882年)/昭和中期増築
構造及び形式木造2階建、瓦葺、建築面積262㎡
員数1棟
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
所有者公開情報に記載なし(山成酒造が使用する現役の建物)
公開蔵見学は要事前電話予約/敷地内に直売所あり(営業時間・料金は変更の可能性があるため事前確認を)

References

文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014945
山成酒造株式会社 公式サイト
https://yamanari.jp/
岡山観光WEB(岡山県観光連盟)
https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_10721.html
井原市観光協会
https://www.ibarakankou.jp/shop/shopping/sake/DJ019.html

最終更新日: 2026.06.25