屋敷でいちばん古く、いちばん大きな棟
コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋は、兵庫県西脇市市原町にある明治23年(1890年)建築の豪農の住宅で、平成25年(2013年)12月24日に国の登録有形文化財に登録された。屋敷の9件のうちこの主屋だけが先に登録され、ほかの8件はその2年後に加わっている。
敷地の中央に東を向いて建ち、構造は木造平屋の一部を2階建てとする。建築面積は351平方メートル。同じ屋敷の離れが82平方メートル、衣装蔵が79平方メートルであるから、主屋1棟でほかの建物を何棟も合わせたほどの広さがある。
屋根は入母屋造の桟瓦葺で、棟から軒へ向かう線をわずかにふくらませた起りをつける。周囲には下屋を廻らし、大きな屋根の裾を一段低い庇で受けている。
登録の理由:九間取の床上と三方の縁
文化庁のデータベースはコヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋を、上質で開放的な近代和風建築と評している。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
平面は南寄りを土間とし、残りの床上部を九間取にする。九間取は部屋を縦横3列ずつ、計9室並べる間取りで、農家に多い四間取(田の字形)より一回り大きい。その三方を縁が取り巻くので、建具を開けると床上の大部分が庭に向かって開く。開放的という評価はこの構成から来ている。
館の案内によれば、土間は屋根裏まで吹抜になっていて、その上を太い梁が1本通る。床上の座敷が九間取の整った構成であるのに対し、土間の側には農家の作業空間としての骨組みがそのまま見えている。
見どころ:天神橋を彫った欄間
コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋でまず探したいのは、座敷の欄間である。大阪の情景を透彫にしたもので、図柄の一つが天神橋、それも鉄の橋として彫られている。大川に架かる天神橋は大阪の代表的な橋の一つで、明治の豪農が、地元の播磨ではなく大阪の街を、しかも鉄橋の姿で座敷に飾ったことになる。
文化庁の解説がこの欄間を「近代的な趣向」の例に挙げるのはそのためだ。外観は伝統的な入母屋の農家でありながら、室内の飾りには同時代の都市の風景を取り込んでいる。透彫は光を通すので、座敷側から次の間の明るさを背にして見ると図柄の輪郭がはっきりする。
館によれば、平成17年から20年(2005〜2008年)の修復で床や壁は新しくしたが、建具や柱、上り框は明治の部材をそのまま使っている。框や柱の表面の古び方と、床の新しさの差にも目を留めておきたい。
主屋の見学のしかた
コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋は美術館の見学順路の起点で、案内付きの見学では土間と座敷を含めて内部に入ることができる。座敷には企画展示の品が置かれるため、部屋のしつらえは展示替えのたびに変わる。
撮影はフラッシュと三脚を使わなければ自由で、欄間のような透彫は内蔵フラッシュを切って撮るほうが陰影が残る。屋根の起りは室内からは見えないので、表門を入ったところで東側から屋根を見上げておくとよい。主屋の西からは離れへ向かう長い廊下が延びており、順路はそちらへ続く。
Q&A
- コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になったのですか。
- 文化庁のデータベースでは明治23年(1890年)の建築です。平成25年(2013年)12月24日に登録されました(登録番号28-0565)。屋敷のほかの8件は平成27年(2015年)11月17日の登録なので、主屋が2年早いことになります。
- コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋の中は見学できますか。写真は撮れますか。
- 見学できます。コヤノ美術館西脇館の案内付き見学で土間と座敷に入れます。館内撮影は可能ですが、フラッシュ(記念撮影時のカメラ内蔵フラッシュを除く)と三脚は使えません。
- コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋の欄間には何が彫られていますか。
- 大阪の情景が透彫で表され、その中に鉄橋の天神橋が含まれています。文化庁の解説は、この欄間を主屋の近代的な趣向を示すものとして挙げています。
- コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋の「九間取」とはどんな間取りですか。
- 床上の部屋を縦横3列ずつ、9室並べた間取りです。主屋では南寄りを土間とし、九間取の床上部の三方に縁を廻らせています。
- コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋はどのくらいの大きさですか。
- 建築面積は351平方メートルで、屋敷で最も大きな建物です。構造は木造平屋の一部2階建、屋根は入母屋造の桟瓦葺で、周りに下屋を廻らしています。
基本データ
| 名称 | コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県西脇市市原町字広畑ケ139 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成25年(2013年)12月24日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋一部2階建、瓦葺、建築面積351平方メートル |
| 所有者 | 株式会社コヤノ |
| 公開状況 | コヤノ美術館西脇館の案内付き見学で公開(日曜開館、平日・土曜は要予約) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース:コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009807
- 文化遺産オンライン:コヤノ美術館西脇館(旧藤井家住宅)主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/270866
- 西脇市:西脇市の指定文化財
- https://www.city.nishiwaki.lg.jp/kakukanogoannai/kyouikuiinkai/kyouikukanribu/kyoudoshiryoukan/bunkazai.html
- コヤノ美術館:フロアーガイド(西脇館)
- https://koyafron.co.jp/museum/nishiwaki/floor.html
- コヤノ美術館:コヤノの秘密(両館共通)
- https://koyafron.co.jp/museum/honkan/secret.html
最終更新日: 2026.10.04