曳家で向きを変えた四間取の農家
旧根本家住宅主屋は、茨城県つくば市吉瀬字清水にある木造平屋建の農家住宅で、江戸時代末期の1830年から1868年の間に建てられ、2015年11月17日に登録有形文化財(建造物)に登録された。約1000坪、約3300平方メートルの屋敷地のほぼ中央に、東を向いて建つ。
もとは東向きではなかった。1883年の地形図と家に伝わる話を突き合わせると、当初の入口は敷地北側にあり、南を向いていたと考えられる。1886年ごろ、通りに面して長屋門を建てるにあたり、主屋そのものを曳屋で敷地の西側へ移し、正面を東へ振り直した。文化庁の国指定文化財等データベースも、移築の年を1886年として記録している。
規模は桁行7.5間、梁間5.5間。1間はおよそ1.8メートルで、登録上の建築面積は191平方メートルである。突き出した棟はなく、全体が一つの寄棟造の屋根に収まる直屋の形をとる。
屋根は二度替わっている。建設当初は茅葺だった。小屋組に残る痕跡と家の伝承から、瓦葺に改めたのは1912年から1926年の大正期と考えられている。2011年の東日本大震災で被害を受け、2012年に現在の鉄板葺となった。茅葺の時代からあった煙出しも、このとき撤去されている。
旧根本家住宅主屋が登録された理由
旧根本家住宅主屋の登録番号は08-0279。第82回の登録として、正面に立つ長屋門(08-0280)と同じ日に登録有形文化財となった。つくば市は登録有形文化財の一覧で、この二棟を「旧根本家住宅主屋ほか」2棟として一件に数えている。適用された登録基準は三つのうちの第一、国土の歴史的景観に寄与しているものである。
文化庁の解説は一行で要点を突く。つくば市郊外に建てられた近世上層農家の形をとどめている、という評価である。個々の部材や技法に珍しいものがあるわけではない。残っているのは組み合わせのほうで、土間の作業空間、床上の居住部、客を迎える式台の入口が、一棟のうちに今も読み取れる。
登録にあたって所見を書いたのは、筑波大学名誉教授の安藤邦廣である。安藤は文書ではなく軸組から年代を読み、大黒柱、ヒロマと茶の間の境およびザシキの境に入る差鴨居、三方に廻るせがい造の軒を根拠に、建築を19世紀前期と推定した。国のデータベースは1830年から1868年という幅で記録しており、二つの見方は重なりつつ完全には一致しない。
根本家は、家に残る位牌から18世紀初頭にはこの地に定着していたと伝えられ、司右衛門の屋号を用いた。屋敷内にはかつて主屋と並んで書院が建っていたが、現在は取り壊されている。敷地の東北には納屋、主屋の背後には味噌蔵が残る。
旧根本家住宅主屋で見ておきたいところ
正面に立ち、右から左へ順に見ていくとよい。右端は土間への戸口。中央には縁が設けられ、左手の上手に式台が構えられている。一棟に三つの入口があり、その三つには格の差がある。作業や出入りの者は土間から、家の者は縁から、改まった客は式台から迎えられた。
軒を見上げる。せがい造といって、壁から持ち出した短い梁の上に出桁を乗せ、軒先を壁面より大きく前へ出す構法である。正面と両側面の三方に廻り、その下を下屋が取り巻く。農家においては雨仕舞いの工夫であると同時に、家の格を示す仕掛けでもあった。
床上部は四つに区切られ、四間取と呼ばれる平面をとる。区画を支えるのは土間の大黒柱と、鴨居の高さに入って建具の上枠を兼ねながら荷を負う差鴨居である。前列上手の座敷には床と物入れが設けられている。ここが客を通す場所だった。
軸組ほど古くない部分もある。裏手の浴室は二代前の当主亀一郎が増築したもので、廊下と便所はそれより早い増築と伝わる。1981年までは土間の北面後方にウマヤが突き出し、土間の南側には小縁が付いていた。ウマヤはこの年に取り壊され、土間も現在の形に改築・増築された。
住居として使われたのは1989年まで。1995年からは近隣で採れた野菜を使うレストランとして営業した。登録所見はこれを、市内における古民家活用の先進的な例として挙げている。
旧根本家住宅主屋の見学
屋敷はつくば文化郷として開かれており、長屋門のギャラリー、納屋の珈琲店、家具店、陶芸工房、コワーキングスペースなどが旧農家の建物に入っている。敷地は無料で歩くことができ、運営者も散歩がてらの来訪をすすめている。旧根本家住宅主屋の内部に入れるかどうかは、その時どの店舗が使っているかによる。前提にせず、確かめてから出かけたい。
問い合わせ先は029-857-3355。電話受付は午前9時から午後5時で、水曜日は定休、年末年始も休みとなる。管理は株式会社田園プランが行っている。敷地の見学に料金はかからないが、各店舗の営業時間と料金はそれぞれ異なる。
撮影についての規定は公表されていない。敷地や外観は来訪者が自由に撮影しているが、室内については、その部屋を使っている店舗に一言ことわってからにしたい。
車では常磐自動車道桜土浦インターチェンジから約10分。つくばエクスプレスつくば駅からは関東鉄道バスの土浦駅行きに乗り、吉瀬停留所で降りて徒歩約8分。JR常磐線土浦駅からは同じく関東鉄道バスの筑波大学中央行きに乗り、同じ停留所で降りる。両駅からタクシーを使うと1500円から2000円程度である。地図アプリを使うときは注意がいる。施設が案内する住所は吉瀬1679-1、文化財としての所在地は吉瀬字清水1680で、地番が一つ違う。
Q&A
- 旧根本家住宅主屋の内部は見学できますか。
- 敷地は無料で開かれており、開いている時間帯なら外観はいつでも見られます。内部に入れるかどうかは、主屋を使っている店舗とその日の営業内容によります。出かける前に029-857-3355へ電話で確認してください。水曜日は定休です。
- 旧根本家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
- 文化庁は建設年代を江戸時代末期の1830年から1868年とし、1886年ごろに敷地内で移築されたと記録しています。登録有形文化財(建造物)への登録は2015年11月17日、登録番号は08-0279です。
- 旧根本家住宅主屋の屋根が茅葺でも瓦でもなく鉄板葺なのはなぜですか。
- 建設当初は茅葺でした。1912年から1926年の大正期に瓦葺へ改められ、2011年の東日本大震災による被害を受けて2012年に鉄板葺となりました。茅葺時代の煙出しも、このときに撤去されています。
- 旧根本家住宅主屋の見学に料金はかかりますか。
- 敷地を歩くのに料金はかかりません。旧農家の建物に入っている各店舗が、それぞれ営業時間と料金を定めています。長屋門のギャラリーは展示が開かれているあいだ無料で入れます。
- 旧根本家住宅主屋へはどう行けばよいですか。
- つくばエクスプレスつくば駅から関東鉄道バスの土浦駅行きに乗り、吉瀬停留所下車、徒歩約8分です。JR常磐線土浦駅からは関東鉄道バスの筑波大学中央行きで同じ停留所へ行けます。両駅からタクシーなら1500円から2000円程度です。車では常磐自動車道桜土浦インターチェンジから約10分です。
基本情報
| 名称 | 旧根本家住宅主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県つくば市吉瀬字清水1680 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0279 |
| 指定年 | 2015年11月17日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積191平方メートル 桁行7.5間、梁間5.5間 平屋建、鉄板葺 |
| 所有者 | 文化庁の国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし。管理は株式会社田園プラン |
| 公開状況 | 敷地は無料で見学可。内部は入居する店舗の営業による。水曜日と年末年始は休み |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧根本家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010744
- つくば市 文化財の保護
- https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/kyoikukyokubunkazaika/gyomuannai/2/1/1001638.html
- つくば市 つくば市の登録有形文化財(PDF)
- https://www.city.tsukuba.lg.jp/material/files/group/156/R8_tsukuba_tourokubunkazai.pdf
- つくば文化郷 つくば文化郷について(登録有形文化財所見 安藤邦廣)
- https://www.bunkago.com/
- つくば文化郷 アクセス
- https://www.bunkago.com/blank-4
最終更新日: 2026.09.07