大洗に建つ大正期の医院併用住宅

武石家住宅主屋は、茨城県東茨城郡大洗町磯浜町1107-1にある大正6年(1917年)建築の医院併用住宅で、平成17年(2005年)に国の登録有形文化財となった。

この建物は、二つの性格が腰でつながっている。診療所として洋館を、家族の住まいとして和館を建て、両方を一つの工事としてまとめた。屋根の考え方も一つ、予算も一つ。その接ぎ目こそが、この住宅の設計の要である。

大洗は那珂川の河口が太平洋に開く場所にあり、明治から大正にかけて港町・漁師町として厚みを増していった。大正6年(1917年)にここで開業する医師は、金と人が動く土地で仕事をしていたことになる。武石家住宅主屋の構えは、長く続ける前提で建てられた診療所のそれだ。

武石家住宅主屋が登録された理由

登録は平成17年(2005年)2月9日、登録番号は08-0172、第45回の登録である。告示は同月28日に出された。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」が適用されている。

文化庁の解説は評価をひと言でまとめている。地方における大正期医院併用住宅の好例、というのがそれだ。この建物の型は当時ありふれていて、いまは珍しい。地方で開業した医師は、診察のための洋間を表に構え、暮らしの側は日本間のまま残した。そして二つの半分は違う速度で古びていく。診療部分は近代化され、増築され、あるいは壊された。家族の側は建て替えより改造で済まされることが多かった。両方が一件の登録物件としてそろって残っていること、それが武石家住宅主屋の価値である。

大洗町の国登録有形文化財は4棟あり、武石家住宅主屋はその一つにあたる。町は規制の緩やかな登録制度を意図的に選んできた。建物を私有のまま、日常の使用のまま残す道である。

見どころ

武石家住宅主屋に通りから近づくと、まず洋館が口をきく。木造2階建、寄棟造の屋根に桟瓦葺。外壁はドイツ下見板張で、これは下見板張の一種だが、板の合わせ目に丸い溝を彫るため、影が段ではなく細い線として落ちる。床の高さに合わせて胴蛇腹が建物を一周し、上下の階を締めながら立面に腰の位置を与えている。

いちばん個性の出ている細部は玄関庇にある。鼻隠が瓔珞形に切り抜かれているのだ。仏具の垂れ飾りから写した形で、うっかりすると見落とす小ささだが、大工が西洋の型録を写す手を止めて土地の造形に手を伸ばした瞬間がここにある。

洋館の内部は、1階が診察室、2階が書斎と子供室であった。上下の分かれ方がそのまま患者と家族の分かれ方になっている。その背後に接する和館は寄棟造の平屋建で、背の高い表の棟に対して低く静かに構える。登録上の記載は木造平屋一部2階建、瓦葺、建築面積133平方メートルである。

二棟の取り合う角に立つと、造りの筋道が見えてくる。片側は下見板と胴蛇腹と瓔珞形の鼻隠、もう片側は塗り壁と瓦と軒。一軒の家に二つの語彙があり、その両方を必要とした施主がいた。

武石家住宅主屋の見学方法

武石家住宅主屋は個人の所有であり、現在も個人の住宅である。内部公開はなく、受付も拝観料も公開時間の設定もない。見学は公道からの外観のみとなる。

この制限は試すものではなく、守るものだと考えてほしい。敷地に立ち入らないこと、玄関に近づかないこと、撮影は道路から見た外観の全景にとどめること。窓の中や庭を覗き込むような撮り方は避ける。日本の登録制度は公開の義務や立入りの権利を伴わない。こうした住宅が残り続けられるかどうかは、所有者が来訪者に消耗させられずに済むかどうかにかかっている。

現状の確認や、まれに行われる公開の情報が必要な場合は、大洗町生涯学習課の文化財係が町内の登録建造物を担当している。

アクセスはわかりやすい。鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の大洗駅はJR水戸駅から約15分、磯浜町はその西側にすぐ広がっており、徒歩でおよそ10分である。周辺は道幅の狭い住宅地で駐車の余地も乏しいので、鉄道で来て歩くのが現実的だ。

Q&A

Q武石家住宅主屋の内部は見学できますか?
Aできません。個人が所有し現に住まわれている住宅で、内部の一般公開は行われていません。見学は公道からの外観のみとなります。
Q武石家住宅主屋はどのような建物ですか?
A大正6年(1917年)に、診療所と住まいを兼ねて建てられた住宅です。洋館が医院部分で、1階が診察室、2階が書斎と子供室でした。背後の和館が家族の生活の場にあたります。
Q武石家住宅主屋はいつ登録有形文化財になりましたか?
A平成17年(2005年)2月9日に登録され、登録番号は08-0172です。大洗町にある4棟の国登録有形文化財のうちの一つにあたります。
Q武石家住宅主屋へはどう行けばよいですか?
A鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の大洗駅(JR水戸駅から約15分)で降り、西へ徒歩およそ10分の磯浜町一帯です。駐車場所が限られるため、鉄道の利用をおすすめします。
Q武石家住宅主屋の写真を撮ってもよいですか?
A公道からの外観の全景であれば差し支えありません。住まいとして使われているため、窓の中や庭を撮ること、敷地に入って撮影することは控えてください。

基本データ

名称武石家住宅主屋
所在地茨城県東茨城郡大洗町磯浜町1107-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成17年(2005年)2月9日登録、登録番号08-0172
員数1棟
寸法木造平屋一部2階建、瓦葺、建築面積133平方メートル。大正6年(1917年)建築
所有者個人
公開状況非公開。個人住宅のため内部公開はなく、公道からの外観見学のみ。拝観料および公開時間の設定なし。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「武石家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004512
茨城県教育委員会「武石家住宅主屋」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6162/
大洗町「指定文化財・登録文化財」
https://www.town.oarai.lg.jp/kosodatekyouiku/rekishibunnka/bunkazaizenpan/1808/
文化遺産オンライン「武石家住宅主屋」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/169822

最終更新日: 2026.09.09