一人の寄付でできた町役場

梅津会館(うめづかいかん、旧太田町役場)は、茨城県常陸太田市西二町2186にある昭和11年(1936年)竣工の庁舎建築で、平成11年(1999年)8月23日に国の登録有形文化財となった。現在は常陸太田市郷土資料館の本館として使われている。

この建物は角から名乗る。南東隅に角塔が立ち上がり、通りに面した東面には大きなアーチを一つ架けた車寄が張り出す。鉄筋コンクリート造二階建、塔屋付、建築面積232平方メートル。1930年代半ばの地方の町にとって、これは相当な構えである。

費用を出したのは市出身の実業家、梅津福次郎。海産物問屋で成功し、故郷への寄付として町役場の建設費を負担した。建物には彼の名が付き、脇には胸像が立つ。翌昭和12年には県への寄付により西山修養道場(現在の県立西山研修所)も建てられている。

登録の理由

登録番号は08-0013。登録基準は「造形の規範となっているもの」で、登録告示は平成11年9月7日付である。

登録有形文化財は重要文化財の指定より緩やかな制度で、おおむね建設後50年を経た建造物を対象とし、外観の変更にあたっては届出を求めるにとどまる。平成8年(1996年)に設けられた枠組みで、指定の手続きが追いつかないまま失われていく近代の建物を受け止めるためのものだった。梅津会館はその趣旨にそのまま当てはまる建物といえる。

造形の要点は壁の扱いにある。主要部は筋面タイル貼で、1920年代末から1930年代の日本の公共建築に流行した仕上げである。斜めから光が当たると、表面がわずかにざらつき、光を吸うように見える。そこへ、視線が止まる箇所にテラコッタが入る。車寄アーチのキーストーンがその代表で、要所を締めている。筋面タイルとテラコッタの組み合わせ自体は当時珍しくないが、銀行や百貨店ではなく庁舎建築でこれだけ良好に残る例は多くない。

内部で見るべき材料は寒水石(かんすいせき)と呼ばれる白い大理石で、国会議事堂の中央階段にも使われている。受付カウンター、壁の腰板、二階へ上がる階段の親柱に残されている。

三つの時期と、見学の実際

建物は太田町役場として使われはじめ、市制施行後は常陸太田市役所となって昭和53年(1978年)まで庁舎の役目を果たした。市役所の移転後に内部を改装し、昭和55年(1980年)に郷土資料館として開館している。この改装では大型の展示ケースが設置され、当初の面はその内側に隠れた。

平成23年(2011年)の東日本大震災を受けて、市は文化庁の補助を得ながら耐震補強と竣工時への復原を組み合わせた工事に着手した。再オープンは平成26年(2014年)11月22日。展示ケースは撤去され、当初のカウンターや腰板が再び現れた。来館者が目にしているのは三つ目の内部であり、そのなかでは梅津の出した金がかたちになった時点にもっとも近い。

一階は市役所時代に市民課や出納室の窓口があった場所で、現在は常設展示室・企画展示室と受付にあてられている。展示品には、市出身の画家・宇佐見太奇の屏風などの美術資料、幡山古墳群や瑞龍古墳群から出土した考古資料、農具や漁具といった民俗資料が含まれる。二階は昭和期の雰囲気を残す空間として、展示やイベントに多目的に使われている。

入館は無料。開館時間は9時から17時までで、入館は16時30分まで。休館日は月曜日(祝日の場合は翌日)と12月28日から1月4日まで。展示替えなどによる臨時休館があるため、遠方から向かう場合は事前確認が安全である。

JR常陸太田駅からは徒歩約20分、バスなら約10分。車では常磐自動車道の日立南太田インターチェンジから約15分、那珂インターチェンジから約25分。駐車場は向かいにあるが、案内表示が「梅津会館駐車場」となっているため、資料館の名前だけを頭に入れて来ると迷うことがある。なお、近くには平成7年(1995年)開館の蔵造りの分館があり、こちらにも郷土資料が並ぶ。

Q&A

Q梅津会館は見学できますか。入館料はかかりますか?
A常陸太田市郷土資料館の本館として公開されており、入館は無料です。開館時間は9時から17時まで、入館は16時30分までとなっています。
Q梅津会館の休館日はいつですか?
A月曜日(祝日の場合は翌日)と、12月28日から1月4日までです。展示替えなどによる臨時休館もあるため、事前の確認をおすすめします。
Q梅津会館への最寄り駅からのアクセスは?
AJR常陸太田駅から徒歩約20分、バスで約10分です。車の場合は常磐自動車道の日立南太田インターチェンジから約15分、那珂インターチェンジから約25分。駐車場は建物の向かいにあり、「梅津会館駐車場」と表示されています。
Q梅津会館はなぜこの名前なのですか?
A建設費を寄付した常陸太田市出身の実業家、梅津福次郎にちなみます。海産物問屋で成功した梅津が故郷への恩返しとして寄付し、昭和11年(1936年)に太田町役場として完成しました。
Q梅津会館は建設当初から改造されているのですか?
A大きな改変が二度あります。昭和54年(1979年)ごろに郷土資料館とするための内部改装が行われ、その後、平成23年(2011年)から耐震補強と竣工時への復原工事が実施されました。平成26年(2014年)11月22日にリニューアルオープンし、当初のカウンターや腰板が再び見えるようになっています。

基本情報

名称梅津会館(旧太田町役場)
所在地茨城県常陸太田市西二町2186
指定区分登録有形文化財(登録番号08-0013)/登録基準「造形の規範となっているもの」
指定年平成11年(1999年)8月23日登録、同年9月7日告示
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造2階建塔屋付、建築面積232平方メートル、昭和11年(1936年)竣工
所有者常陸太田市
公開状況常陸太田市郷土資料館として公開。9時〜17時、入館無料。月曜・12月28日〜1月4日休館

参考文献

国指定文化財等データベース 梅津会館(旧太田町役場)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001240
文化遺産オンライン 梅津会館(旧太田町役場)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/185970
常陸太田市 常陸太田市郷土資料館 施設案内
https://www.city.hitachiota.ibaraki.jp/page/page003377.html
常陸太田市観光物産協会 梅津会館(郷土資料館本館)
https://www.kanko-hitachiota.com/page/page000038.html
茨城県教育委員会 梅津会館(旧太田町役場)
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6501/

最終更新日: 2026.08.06