鯨ヶ丘の街道に東面する店蔵
駿河屋宮田書店店舗兼主屋は、茨城県常陸太田市内堀町にある文化7年(1810年)建築の商家建築で、平成26年(2014年)10月7日に登録有形文化財となった。常陸太田の旧市街をのせる台地、鯨ヶ丘の街道に東面して建つ。
鯨ヶ丘は標高38メートルほどの細長い台地で、丘の起伏が海に浮かぶ鯨に似ることからこの名がある。平安時代の末に太田城が築かれ、のちに佐竹氏の居城となった場所で、江戸時代には水戸と棚倉を結ぶ街道の物資集散地として問屋が集まった。間口が狭く奥行の深い敷地割は、そのころの町割をほぼそのまま引き継いでいる。
宮田家の過去帳には、享保15年(1730年)に当地へ秤屋として店を出したと記されている。先祖ははじめ佐竹氏の家臣で、のちに馬場村へ帰農したと伝わる。
建築年代は書き付けから分かった。主屋の仏壇の引出しの裏に「持仏堂文化七年庚午秋九月廿日造之 指物勇吉作」という墨書があり、文化7年にあたる。文化5年(1808年)に火災があったと伝えられており、駿河屋宮田書店店舗兼主屋はその後の再建と考えられている。構造は土蔵造の平屋一部2階建、瓦葺で、建築面積は221平方メートル。昭和20年(1945年)頃にも改修の手が入った。
登録有形文化財としての価値
駿河屋宮田書店店舗兼主屋は、平成26年(2014年)10月7日に第08-0257号として登録有形文化財の登録を受けた。同じ敷地の南西隅に建つ駿河屋宮田書店土蔵も、同じ日に第08-0258号として登録されている。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、個々の意匠の精粗よりも、建物が街路に対して果たしている働きが評価の軸になる。
守られているのは正面の一面ではなく、屋敷全体の構えである。街道に面してつし二階のミセを置き、その背後に主屋を接続し、さらに座敷のある棟が直角につながる。在郷町の商家が細長い敷地をどう使ったかが、代を重ねた増改築を経てなお読み取れる状態にある。
文化庁が地方的な特色として挙げるのは、つし二階の格子窓の内側に土戸と明障子を建て込む納まりである。近隣で火が出れば土戸を閉め、ミセへの燃え移りを防いだ。正面南側には門が付き、これも登録の対象に含まれる。
見どころ
街道側から見ると、駿河屋宮田書店店舗兼主屋の正面はほとんどが土壁である。上の階にあたる部分は天井の低いつし二階で、厚い壁に格子窓がはまる。ここは今も倉庫として使われている。
引戸を開けて中に入ると、1階は奥まで土間が続き、書棚が土の上に直接立っている。土間のまま商いを続けている店は、そう多くは残っていない。
天井を見上げてほしい。近代以降の改装で洋風のアーチが連続して入り、船底のように湾曲した天井面が奥へ繰り返す。江戸時代の土蔵造の躯体の内側に、後の時代の意匠が重なっている。
南側の門から奥をのぞくと、棟が折れながら敷地の奥へ続いていくのが分かる。同じ屋敷のなかには土蔵と離れも残る。
見学方法とアクセス
駿河屋宮田書店店舗兼主屋は現役の書店である。店舗部分は営業時間中であれば客として入ることができ、土間と船底天井はそこから見られる。営業日と時間は店の都合で決まるため、遠方から訪ねるなら事前に確かめておきたい。住居部分は非公開である。
文化財として公開されるのは、常陸太田市教育委員会が毎年秋に開く「集中曝涼」の日である。令和8年(2026年)は10月17日と18日の開催で、駿河屋宮田書店店舗兼主屋が公開されるのは17日のみ、午前10時から午後3時30分まで。写真撮影はできる。専用の駐車場とトイレはない。同じ敷地の土蔵は、この催しでは公開されない。
最寄り駅はJR水郡線の常陸太田駅で、北へ徒歩約15分。台地に上る坂を登った先になる。集中曝涼の総合案内が置かれる郷土資料館 梅津会館からは約300メートル。公開日程は年ごとに変わるので、常陸太田市の公式ページで確認してから出かけてほしい。
Q&A
- 駿河屋宮田書店店舗兼主屋の内部は見学できますか。
- 店舗部分は現役の書店で、営業時間中に客として入れます。土間と船底天井はそこから見られます。住居部分は非公開です。文化財としての公開は、常陸太田市の「集中曝涼」の日に限られます。
- 駿河屋宮田書店店舗兼主屋はいつ建てられましたか。
- 文化7年(1810年)です。主屋の仏壇の引出しの裏にある墨書から分かりました。文化5年(1808年)の火災の後に再建されたものと考えられています。
- 駿河屋宮田書店店舗兼主屋で写真を撮ってもよいですか。
- 集中曝涼での公開時は撮影が認められています。通常の営業時間中に店内で撮影したい場合は、書店として営業していますので、その場で許可を得てください。
- 駿河屋宮田書店店舗兼主屋へのアクセスは。
- JR水郡線の常陸太田駅から北へ徒歩約15分です。鯨ヶ丘の台地に上る坂を登ります。郷土資料館 梅津会館から約300メートル。専用駐車場はありません。
- 駿河屋宮田書店店舗兼主屋と駿河屋宮田書店土蔵はどう違いますか。
- 同じ屋敷にある別々の登録物件です。店舗兼主屋は街道に面した文化7年(1810年)の建物、土蔵は敷地南西隅に建つ明治41年(1908年)頃の建物で、いずれも平成26年(2014年)に登録されました。
基本データ
| 名称 | 駿河屋宮田書店店舗兼主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県常陸太田市内堀町字内堀西2357 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成26年(2014年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造平屋一部2階建、瓦葺、建築面積221平方メートル、門付 |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 店舗は書店として営業。集中曝涼の機会に文化財として公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「駿河屋宮田書店店舗兼主屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010094
- 文化庁 国指定文化財等データベース「駿河屋宮田書店土蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010095
- 茨城県教育委員会 いばらきの文化財「駿河屋宮田書店店舗兼主屋ほか1棟」
- https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-5988/
- 常陸太田市「【R8集中曝涼】鯨ヶ丘の文化財(駿河屋宮田書店店舗兼主屋・旧稲田家住宅赤煉瓦蔵・立川醤油店店舗及び主屋)」
- https://www.city.hitachiota.ibaraki.jp/kyoiku-bunka-sports/kyoiku-iinkai/bunka-geijutsu/shuju-bakuryo/page009084.html
- 常陸太田市「R8集中曝涼(10/17-18)」
- https://www.city.hitachiota.ibaraki.jp/kyoiku-bunka-sports/kyoiku-iinkai/bunka-geijutsu/shuju-bakuryo/page003787.html
最終更新日: 2026.09.07