城下町の酒蔵に立つ煉瓦の煙突

結城酒造株式会社煉瓦煙突は、茨城県結城市大字結城にある高さ約10メートルの煉瓦造の煙突で、明治36年(1903年)の建設と伝わり、平成12年(2000年)4月28日に登録有形文化財(建造物)に登録された。員数は1基である。

建つのは結城酒造の敷地内。結城駅の北側にひろがる旧市街の一角で、いまも見世蔵が通りに面して並ぶ地区にあたる。二十世紀の大半を通じて、この煙突は装飾ではなく設備だった。米を蒸し、酒を火入れするための湯を沸かす釜場の煙を引いていた。

その接続は地下にある。文化庁と結城市はいずれも、煙突が安政蔵の釜場と地下の煙道で結ばれていたことを記録している。仕込みの現場と敷地でもっとも高い構造物とが、目に見えないところでつながっていた。

創業年については二つの数字がある。会社は公式サイトで創業を1594年とする。結城市の文化財のページは、これとは別に安政6年(1859年)の酒造鑑札が残ることを記す。出所の異なる記録なので、無理に一本化せず並べて読むのがよい。

結城酒造株式会社煉瓦煙突が登録された理由

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。結城市の解説はその理由を端的に書いている。酒造施設の近代的な工夫が読み取れること、そして商業と酒造で栄えた町の景観の目印になっていることである。

登録と指定は別の制度である。平成8年(1996年)に始まった登録有形文化財の制度は、近代の建物や工作物を主な対象とする比較的緩やかな仕組みで、以後、各地の産業遺構が次々と登録に入った。この煙突も平成12年(2000年)に、敷地内の酒蔵2棟とともにその流れのなかで登録されている。

数え方に注意したい。員数は「棟」ではなく「基」である。煙突は屋根を持つ建築物ではなく工作物に分類されるため、文化庁のデータベースでは種別を「産業2次・その他工作物」とし、員数を1基と記載する。

この種の煉瓦煙突は、かつて酒造・製粉・染織の集まる町ならどこにでもあった。しかし建設当初の工場敷地に残るものは今では数少ない。結城酒造株式会社煉瓦煙突の価値の大きな部分はそこにある。鉄骨に建て替えられることなく残った、明治の工場設備そのものである。

いまの煙突の姿

2022年5月11日、結城酒造で火災が発生した。平成12年(2000年)に登録されていた安政蔵と新蔵、および木造2階建の家屋が焼失し、焼損面積は合わせて約1,100平方メートルにのぼった。当時の報道は、煉瓦の煙突が倒壊しなかったことを記録している。

その帰結は市の記録にあらわれている。火災後に更新された結城市の登録有形文化財のページは、結城酒造の項に登録物件を一つだけ、煉瓦煙突1基だけを掲げる。140年以上にわたって隣に建っていた酒蔵は失われ、その釜場に仕えていた煙突が残った。

したがって、見るべきものも変わった。2022年より前、この煙突は黒い蔵に囲まれた敷地の一要素として目に入るものだった。いまは周囲に空が大きく開いている。そのぶん、軸部のわずかな絞りや煉瓦の目地の並びが、離れた場所からでもかえって読み取りやすい。

結城酒造株式会社煉瓦煙突は、近づくよりも少し離れて眺めるほうがよく見える。10メートルは産業用の煙突としては高いほうではないが、二階建の店舗が続く低い町並みのなかでは遠くまで届き、通りを歩くたびに視界の端に入ってくる。

結城酒造株式会社煉瓦煙突の見学方法

煙突が立つのは現に事業を営む会社の私有地で、火災以降、敷地は整理と長期の再建の途上にある。有料の見学は設定されておらず、公開時間もない。敷地の前後を通る公道から外観を見る、という形で訪ねてほしい。

2022年より前は予約制の酒蔵見学が案内されていた。その後、現地の状況は変わっている。通りからの眺め以上を望む場合は、まず結城酒造(電話 0296-33-3344)に問い合わせるか、結城市生涯学習課文化係(電話 0296-32-1931)に確認するとよい。

行き方は分かりやすい。敷地はJR水戸線結城駅の北へ約750メートル、旧商店街を抜けて徒歩10分ほどの位置にある。東京方面からは東北新幹線または宇都宮線で小山へ出て、水戸線に乗り換えて2つめが結城駅である。

公道からの撮影に制限はない。ただし稼働している敷地の内部や従業員が入らないよう気をつけ、出入口の私道を撮影場所にしないでほしい。

Q&A

Q結城酒造株式会社煉瓦煙突は2022年の火災で無事でしたか?
A残りました。2022年5月11日の火災で安政蔵と新蔵、木造2階建の家屋が焼失しましたが、当時の報道は煙突が倒壊しなかったことを記録しています。結城市の文化財のページも現在、結城酒造の登録物件として煉瓦煙突のみを掲げています。
Q結城酒造株式会社煉瓦煙突はいつ建てられ、いつ登録されましたか?
A文化庁は建設を明治36年(1903年)とし、確かな記録ではなく伝承として記載しています。登録有形文化財への登録は平成12年(2000年)4月28日で、登録番号は第08-0023号、告示は同年5月17日です。
Q結城酒造株式会社煉瓦煙突を敷地内から見学できますか?
A事前の相談なしには入れません。敷地は私有地で、火災以降は整理と再建が続いています。煙突は周囲の公道から見えます。近くで見たい場合は、まず結城酒造(電話 0296-33-3344)に問い合わせてください。
Q結城酒造株式会社煉瓦煙突の高さと役割は何ですか?
A高さは約10メートル、構造は煉瓦造です。安政蔵の釜場に仕える煙突で、地下の煙道で釜場とつながっていました。米を蒸し、酒を火入れするための湯を沸かす火の煙を引いていました。
Q結城酒造株式会社煉瓦煙突へは駅からどう行きますか?
AJR水戸線結城駅から北へ約750メートル、徒歩10分ほどです。道筋は蔵の並ぶ旧商店街を通ります。東京方面からは小山で水戸線に乗り換えてください。

基本情報

名称結城酒造株式会社煉瓦煙突
所在地茨城県結城市大字結城1589
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成12年(2000年)登録
員数1基
寸法煉瓦造、高さ約10メートル
所有者結城酒造株式会社
公開状況敷地は非公開。外観を周囲の公道から見るのみ

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「結城酒造株式会社煉瓦煙突」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001551
結城市 登録有形文化財「結城酒造株式会社」
https://www.city.yuki.lg.jp/kosodate-kyouiku/shougaigakushuu/bunkazai/bunkazai/tourokuyuukei/page003227.html
結城酒造株式会社 公式サイト
https://www.yuki-sake.com/

最終更新日: 2026.09.09