茶商が蔵として建てた店
赤荻本店見世蔵は、茨城県結城市大字結城字浦町122にある明治中期の土蔵造の店舗建築で、平成17年(2005年)2月9日に登録有形文化財として国の登録を受けた。
見世蔵は、本来なら倉庫に使う厚い土壁の構法をそのまま店舗に用いた建物をいう。19世紀の末から関東の商都に広まった形式で、結城の旧街道筋には現在も数多く残る。赤荻本店見世蔵は街路に東面し、長辺を道に向ける平入の町家で、屋根は寄棟造の桟瓦葺である。
赤荻家は明治の初年からこの地で茶を商ってきた。結城市は現在の建物を明治20年(1887年)頃の建設と伝え、ほぼ同時期に建てられたとみられる奥の土蔵に残る墨書がその裏づけになるとする。文化庁のデータベースはより幅を持たせて明治中期、すなわち1868年から1911年の間としている。
登録上の建築面積は51平方メートルで、構えの印象に比べると小さい。間口は4間、奥行は2間半で、街路に面した正面には半間の下屋庇が瓦葺の屋根を伸ばしている。
国の登録を受けた理由
平成17年(2005年)の登録にあたって適用された基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。赤荻本店見世蔵に付された登録番号08-0167は、同じ回に結城市内からまとめて登録された一群に属しており、評価の単位が一棟の正面よりも通りの連なりに置かれていたことが分かる。
建物の前に立つ掲示は読み分けたい。赤荻本店見世蔵は登録有形文化財であって、指定を受けたのではなく登録された建物である。登録に伴う義務が指定より軽いことが、現役の茶店のまま文化財として扱われることを可能にしている。
近隣の見世蔵と最も違うのは壁の表情である。土蔵造の外壁はほぼ例外なく白い漆喰で仕上げられるが、この建物は黄褐色の砂摺仕上げをまとう。石灰の白とは光の受け方がまるで違う、ざらついた土の色である。文化庁は「景観に変化を与えている」と記し、結城市は創建当初からの仕上げであり、茶を商うという生業に合わせたものと考えられるとする。どちらもそこまでしか述べていない。
見どころ
まずは道の向かい側から眺めたい。目に入るのは黄褐色の壁と、下屋庇が正面を横切って引く低い水平線である。晴れた午後には、この線から上が影に沈む。正面1階の北端には雨戸を収める戸袋が据えられ、残りの開口にはガラス障子が建て込まれている。倉庫なら閉ざされるはずの面が、店として開いている。
内部は1階が店舗になる。下屋庇の下と南半分が土間、北半分が一段上がった帳場で、この配置は比較的よく当初の形を保つ。2階は8畳の座敷が2室。商品ではなく客を迎えるために設けられた、いわゆる蔵座敷である。
店の奥には半間の板床を挟んで土蔵が直接つながる。両者は当初から一体のものとして扱われてきた。明治20年(1887年)という年代に重みを与えているのは、この奥の土蔵に残る墨書である。
最後の見どころは目に見えない。昭和8年から10年(1933年から1935年)の道路拡張のとき、この建物は壊されなかった。奥の土蔵の桁行方向をわずかに切り詰めたうえで、全体を奥へ2間ほど曳屋で移動させたのである。赤荻本店見世蔵が今立っている位置は、当初より少しだけ街路から退いている。道路計画に敷地の形を変えられ、そのうえで生き延びた建物である。
赤荻本店見世蔵の見学方法
赤荻本店見世蔵は民間の所有で、現在も営業している店舗である。観光施設ではないため見学の受付制度はなく、拝観料もかからない。外観は公道からいつでも自由に見られる。1階の店舗部分には営業時間中に客として入ることができるが、2階と奥の土蔵は公開されていない。
営業日と営業時間は店の側が定めるもので、文化財の情報として市が公表しているわけではない。内部に入ることを予定に組み込むなら、事前に電話で確かめておきたい。公道からの外観撮影に制限はない。内部で撮る場合は一言断ること、そしてここが誰かの店であり、その上が誰かの住まいであることを忘れないでほしい。
建物が建つのは、JR水戸線の結城駅から北へ徒歩10分ほどの旧街道沿いである。同じ道筋には他にも登録有形文化財の建物が並ぶ。白い漆喰の壁が続くなかで、この一棟の黄褐色がどう見えるかを確かめたいなら、通り全体を歩いてみるとよい。
Q&A
- 赤荻本店見世蔵の内部に入ることはできますか。
- 1階の店舗部分には、営業時間中に客として入ることができます。2階と奥につながる土蔵は公開されておらず、建物としての見学ツアーや入場券の制度もありません。
- 赤荻本店見世蔵の見学に料金はかかりますか。
- かかりません。民間が商いに使っている建物で、料金の設定はありません。外観は公道からいつでも許可なく眺められます。
- 赤荻本店見世蔵はいつ建てられたのですか。
- 結城市は明治20年(1887年)頃としており、奥の土蔵に残る墨書がその根拠とされています。文化庁のデータベースはより幅のある表記で、明治中期、すなわち1868年から1911年の間としています。
- 赤荻本店見世蔵の壁が白漆喰でなく黄褐色なのはなぜですか。
- 外壁が一般的な白い漆喰ではなく、黄褐色の砂摺仕上げになっているためです。結城市はこれを創建当初からの仕上げとみており、茶を商う生業に合わせて選ばれた色と考えられるとしています。
- 結城駅から赤荻本店見世蔵へはどう行けばよいですか。
- JR水戸線の結城駅から北へ徒歩10分ほどです。旧街道沿いの大字結城字浦町122にあり、周囲には他の登録有形文化財の店舗建築も並んでいます。
基本データ
| 名称 | 赤荻本店見世蔵(あかおぎほんてんみせぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県結城市大字結城字浦町122 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(登録番号08-0167) |
| 指定年 | 平成17年(2005年)2月9日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積51平方メートル、間口4間・奥行2間半、2階建、土蔵造・瓦葺の寄棟屋根 |
| 所有者 | 民間所有。詳細は公表されていない |
| 公開状況 | 外観は公道から自由に見学可。1階店舗は営業時間中に入店可、2階と奥の土蔵は非公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「赤荻本店見世蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004507
- 結城市 登録有形文化財「赤荻本店」
- https://www.city.yuki.lg.jp/kosodate-kyouiku/shougaigakushuu/bunkazai/bunkazai/tourokuyuukei/page003230.html
- 結城市 登録有形文化財一覧
- https://www.city.yuki.lg.jp/page/dir002754.html
最終更新日: 2026.09.06