送水の軸線の終点に立つ建物
末浄水場緩速浄水集合井は、石川県金沢市末町の末浄水場にある昭和5年(1930年)築造の鉄筋コンクリート造平屋建の建物で、平成13年(2001年)8月28日に国の登録有形文化財に登録された。敷地の西端、6基の緩速ろ過池のあいだを通る中央通路の先端に立ち、建築面積は26平方メートルである。
集合井は、各ろ過池で浄化された水を一か所に集める井戸である。一号から六号までのろ過池の浄水井を出た水は、通路の下の集水管に合流し、この集合井へ流れ込む。末浄水場緩速浄水集合井は、緩速系の浄水がひとつにまとまる地点を覆う上屋にあたる。
金沢市企業局は完成を昭和5年6月としている。ろ過池の完成(昭和6年(1931年)6月)より早く、敷地の西端の要が先に形になったことになる。
円から小判型へ
登録基準は「造形の規範となっているもの」である。池の多くが景観への寄与で登録されたなかで、末浄水場緩速浄水集合井は旧着水井上屋とともに、建物の意匠そのものを評価された。
文化庁の解説によれば、平面は当初、円形で計画されていた。ところが井戸の面積を広げる必要が生じ、円を引き延ばした小判型の平面に改められた。6基分のろ過水を受け止める容量を確保するための変更であり、機能の要請が形を決めた例といえる。
この上屋は、前庭の東屋から西へまっすぐ延びる送水の軸線の突き当たりに位置する。東屋が軸線の起点なら、集合井はその終点である。軸線の両側に浄水井上屋が3棟ずつ並び、その正面奥に集合井が構えるという構成は、浄水場全体の計画と造園の意匠が一体で考えられていたことを示している。
三つのアーチと円の浮彫
上屋の側面には、大小3つの半円アーチが並ぶ。大きなアーチを中央に、小さなアーチを両脇に置いた構成と読める。
アーチとアーチのあいだ、弧の肩にできる三角形の部分をスパンドレルと呼ぶ。末浄水場緩速浄水集合井では、ここに円をモチーフとした浮彫があしらわれている。企業局は、スパンドレルをもともと偶然生まれた隙間が次第に装飾に欠かせない場所になったものと説明している。
小判型の平面は、壁が曲面を描いて回り込むことを意味する。曲面の壁にアーチを開け、その間に円の浮彫を置く。円、半円、小判型と、曲線の形だけで立面が組み立てられている点に、この建物の意匠の筋が見える。
企業局のページには設計図面も掲載されている。実物と見比べると、アーチの割り付けと浮彫の位置が当初の設計からどう実現されたかを確かめられる。
見学の方法
末浄水場緩速浄水集合井は敷地の西端にあり、予約不要で公開されている前庭からは離れている。前庭から見通せるかどうかは公表資料では確かめられなかった。
場内の水道施設は完全予約制の施設見学で案内され、企業局は見学内容に浄水処理の工程と沈澱池・ろ過池を挙げている。集合井が見学の範囲に入るかは明記されていないため、申し込みの際に確かめておきたい。対象は自治体や地域サークルなどの団体で、見学日の2週間前までに申し込む。
撮影の可否について企業局の案内に記載はなく、見学の際に案内の職員へ確かめるのが確実である。浄水場への行き方と前庭の公開時間は、末浄水場のページにまとめてある。
Q&A
- 末浄水場緩速浄水集合井は何のための建物ですか?
- 6基の緩速ろ過池で浄化された水を一か所に集める集合井の上屋です。各ろ過池の水は通路の下の集水管で合流し、ここへ流れ込みます。
- 末浄水場緩速浄水集合井の平面はなぜ小判型なのですか?
- 当初は円形で計画されていましたが、井戸の面積を広げる必要が生じたため、小判型の平面に改められました。
- 末浄水場緩速浄水集合井の見どころは?
- 側面に並ぶ大小3つの半円アーチと、アーチのあいだのスパンドレルにあしらわれた円をモチーフとする浮彫です。
- 末浄水場緩速浄水集合井はいつ登録有形文化財になりましたか?
- 平成13年(2001年)8月28日に、造形の規範となっているものとして登録されました。登録番号は17-0052です。
- 末浄水場緩速浄水集合井は見学できますか?
- 場内の水道施設は完全予約制の団体向け施設見学で案内されますが、集合井が見学範囲に含まれるかは公表されていません。申し込みの際に確認してください。
基本情報
| 名称 | 末浄水場緩速浄水集合井(すえじょうすいじょうかんそくじょうすいしゅうごうせい) |
|---|---|
| 所在地 | 石川県金沢市末町1-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)、登録番号17-0052、登録基準「造形の規範となっているもの」 |
| 指定年 | 平成13年(2001年)8月28日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造平屋建、建築面積26平方メートル |
| 所有者 | 金沢市 |
| 公開状況 | 予約制の団体見学の範囲は公表なし(前庭は予約不要) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 末浄水場緩速浄水集合井
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002240
- 金沢市企業局 — 登録有形文化財 末浄水場
- https://www2.city.kanazawa.ishikawa.jp/about_us/facility_tour/water02/water04/
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 末浄水場園地(詳細解説)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/401/00003666
- 金沢市企業局 — 末浄水場 水道施設(要予約)
- https://www2.city.kanazawa.ishikawa.jp/about_us/facility_tour/water01/
- 金沢市企業局 — 末浄水場園地 前庭(予約不要)
- https://www2.city.kanazawa.ishikawa.jp/about_us/facility_tour/water02/
最終更新日: 2026.09.24