丸太で組まれた武家門

旧上妻家住宅門(きゅうこうづまけじゅうたくもん)は、鹿児島県西之表市西之表字下小牧9819-2、旧上妻家住宅の敷地南辺に開く江戸時代末期の腕木門で、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

間口は2.0メートル。道から見れば数秒で全体が視野に入ってしまう小さな門である。それでも、立ち止まって見上げる価値がある。

形式は腕木門。二本の主柱から水平に腕木を出し、その先で軒を受ける。大がかりな軸部を組まずに屋根を架けられるため、中級の武家屋敷にはこの形式が広く使われた。主柱の前後にはそれぞれ控柱が立ち、前後方向の傾きを抑えている。

この門を特徴づけるのは材である。主柱に角材ではなく丸太を用いる。丸太造りの武家門は薩摩藩内でも珍しく、西之表市の調査でもその点が指摘された。整った形式の門でありながら、柱はまだ木の姿をとどめている。近くで見ると、この取り合わせが妙に印象に残る。

細部を見る

まず軒を見上げたい。垂木は一軒疎垂木、つまり一重に、間隔を広くとって並べる。上に葺かれるのは桟瓦である。二重の垂木も、密に並べた化粧垂木もない。装いを削った屋根まわりである。

次に冠木。二本の主柱を渡す横材の中央に、短い束が立つ。この束の左右には笈型と呼ぶ曲線の板が添えられ、荷を背負う笈のような輪郭をつくる。門のなかで、実用を離れて置かれた要素はここだけといってよい。

そして腕木の先。腕木が上の材を受ける部分の小さな肘木、実肘木には繰型が彫り込まれている。簡素な門に、大工がどうしても入れずにいられなかった仕事という見方もできる。登録時の解説が「全体に簡素ながらも、細部に装飾を持つ」と記すのは、こうした処理のことを指している。

門のまわりの植栽も、この構えの一部である。敷地にはソテツが植わる。文化庁の登録解説は、敷地のソテツなどと相まって南国の武家屋敷の構えを示す、と書いている。瓦屋根の日本建築と、放射状に葉を広げる亜熱帯の植物。この組み合わせを一度見れば、ここが本土の城下町ではないことが説明抜きで分かる。

再建された門を、なぜ守るのか

この門にはひとつ、説明の要る事情がある。西之表市はそれを隠さずに公表している。

現在建っている門は、昭和60年(1985年)に再建されたものである。江戸末期(1830年から1868年)とする文化庁の年代記録と並べると、ひっかかりを覚える人もいるだろう。国登録後に市教育委員会が行った調査は、この点を三つの根拠で整理した。丸太造りの武家門が薩摩藩でも珍しいこと。昭和初期の古写真に写る形態が忠実に継承されていること。そして、部材に当初材が使われていること。これらを踏まえ、門は主屋とともに令和6年(2024年)9月10日、西之表市指定文化財に指定された。

登録有形文化財の制度は、平成8年(1996年)にこうした建物のために設けられた。重要文化財より緩やかな保護のもとで、使いながら守ることを前提とする。自らの古材を用い、写真に残る姿にならって建て直された門は、この制度が想定する対象のひとつといえる。

見学について。門が立つのは保存修理中の敷地であり、屋敷全体に決まった公開時間はない。ただし門は敷地南辺、アプローチに面して開いているため、外側からであれば手続きなしに眺められる。屋敷の一般公開は平成29年から令和元年までに5回、令和5年11月にも行われたが、告知は地元中心で日程は不定期である。公開日やアクセス、撮影の可否は、西之表市教育委員会歴史文化課文化財係(種子島開発総合センター鉄砲館内、電話0997-23-3215)に確認するのが確実である。

種子島へは、鹿児島から高速船またはフェリーで西之表港に入るか、空路で種子島空港へ。空港から市街地までは車でおよそ30分。上妻家の敷地は西之表港から南西に1キロほど、坂を上った西之表麓の南西端にある。同じ麓の区域には八板家住宅主屋、遠藤家住宅主屋という登録有形文化財の住宅もあり、あわせて歩ける距離にある。

Q&A

Q旧上妻家住宅門はどのような形式の門ですか。
A敷地の南辺に開く腕木門です。二本の主柱から腕木を出して軒を受け、主柱の前後にそれぞれ控柱を立てます。軒は一軒疎垂木、屋根は桟瓦葺で、間口は2.0メートルです。
Q旧上妻家住宅門は再建されたと聞きましたが、当初の部材は残っていますか。
A現在の門は昭和60年(1985年)の再建です。西之表市の調査により、昭和初期の古写真の形態が忠実に継承されていること、部材に当初材が使用されていることが確認されました。丸太造りの武家門が薩摩藩でも珍しい点とあわせ、令和6年9月10日に市指定文化財となっています。
Q旧上妻家住宅門は外から見学できますか。
A門は敷地南辺のアプローチに面しており、敷地の外から眺めることができます。背後の主屋は保存修理中で常時公開はしていません。詳細は西之表市教育委員会歴史文化課文化財係(電話0997-23-3215)へお問い合わせください。
Q旧上妻家住宅門の細部にはどのような装飾がありますか。
A冠木の中央に左右笈型付の束が立ち、腕木の実肘木などには繰型が施されています。全体は簡素なつくりで、装飾はこうした小さな部材に集中しています。
Q旧上妻家住宅門へのアクセスを教えてください。
A種子島の西之表市西之表字下小牧9819-2、西之表港から南西へ1キロほど坂を上った場所にあります。島へは鹿児島から高速船またはフェリーで西之表港へ、空路の場合は種子島空港から市街地まで車で約30分です。
Q旧上妻家住宅門は主屋とは別に登録されているのですか。
A別登録です。門の登録番号は46-0120、主屋は46-0119で、いずれも平成29年5月2日の登録です。熊毛地区で初めての国登録有形文化財建造物にあたり、令和6年には二件そろって市指定文化財にもなりました。

基本情報

名称旧上妻家住宅門(きゅうこうづまけじゅうたくもん)
所在地鹿児島県西之表市西之表字下小牧9819-2(種子島)
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 46-0120、登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。ほかに西之表市指定文化財
指定年平成29年(2017年)5月2日登録/市指定は令和6年(2024年)9月10日
員数1棟
寸法木造、瓦葺、間口2.0メートル
所有者西之表市
公開状況外観は敷地外から見学可。敷地は保存修理中で常時公開なし。問い合わせは西之表市教育委員会歴史文化課文化財係(種子島開発総合センター鉄砲館内)電話0997-23-3215

参考文献

最終更新日: 2026.08.11