空襲のあとに建て直された本館

料亭得月楼本館は、高知県高知市南はりまや町にある木造2階建の料亭建築で、昭和25年(1950年)に建てられ、平成16年(2004年)11月8日に国の登録有形文化財に登録された。桁行十間・梁間六間、建築面積は319平方メートルある。

この建物には前身がある。昭和20年(1945年)7月の高知空襲で、はりまや橋一帯は焼けた。明治3年(1870年)から続いていた料亭の建物も失われ、本館はその焼け跡に建てられた復興建築である。

屋根は入母屋造桟瓦葺。北面の中央やや東寄りに切妻屋根の車寄せが突き出し、そこが玄関になる。正門をくぐった客が最初に向き合うのがこの面で、二階建の量感と車寄せの低い庇とが上下に重なって見える。

設計したのは柳生濟(やぎゅうわたる)である。高知県建築士会が生まれた頃の会員で、戦後の復興期に地元で仕事をした建築家であった。

登録の理由は2階にある

料亭得月楼本館に適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」で、登録番号は39-0155。同じ日に登録された客間の39-0156と番号が続いている。

評価の中心にあるのは2階の大広間である。80畳敷、縁まで含めれば100畳になり、店の案内では最大150人ほどが入る。ここで問題になるのは天井で、これだけの面積を継ぎ目だらけにすると、見上げたときに広さが分断されてしまう。

本館の大広間は、魚梁瀬杉の長尺物を用いることでこれを避けている。魚梁瀬は高知県東部の山で、良質の杉の産地として知られてきた。天井板は長さ10メートル、幅75センチ、厚さ1.8センチの一枚板である。

店には、この板についての話が伝わっている。当初は12メートルほどの寸法で用意する計画だったが、運び出す途中でどうしても通れない山道があり、2メートルばかり切り落として運んだという。戦後まもない時期に、山から市街地まで10メートルの板を運ぶという作業がどういうものだったかが、この一言から想像できる。

登録有形文化財の制度は、文化財としての価値が定まった建物だけを選ぶ仕組みではない。使われ続けている建物を、使いながら守るための制度である。本館はその趣旨に素直に当てはまる。

大広間で見るところ

料亭得月楼本館の大広間に通されたら、まず天井を見上げたい。継ぎ目の少ない板が同じ方向に走っているので、部屋の奥行きがそのまま目で追える。10メートルという数字は、床に立って見上げたときにはじめて実感になる。

1月中旬から始まる盆梅展の期間は、座敷を取り囲むように梅の鉢が並ぶ。80畳の広さは、このときいちばん分かりやすい。

外からなら車寄せを見るとよい。切妻の妻面が北を向き、2階の壁面から手前へ張り出している。本館全体は2階建だが、この部分だけが人の背丈に近い高さで受け止めるので、玄関に近づくにつれて建物の印象が変わる。

見学の条件

料亭得月楼本館は営業中の料亭の建物であり、館内は食事の客のために開かれている。大広間や座敷を見るには予約が要る。予約さえあれば初めての客でも受けるとしており、座敷はすべて個室で個室料金は取らない。

外観のうち、正門から見える北面の玄関と車寄せは、建物に入らなくても目に入る範囲にある。ただし敷地の内側なので、門前から覗き込む形になる。

撮影の可否は公式サイトに書かれていない。大広間の天井を撮りたい場合は、予約のときに伝えておくのが確実である。建物には段差があり、車椅子はタイヤを拭くことで店内に入れると案内されている。営業時間・定休日・行き方は、料亭得月楼全体のページにまとめてある。

Q&A

Q料亭得月楼本館はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A昭和25年(1950年)の建築で、平成16年(2004年)11月8日に国の登録有形文化財に登録されました。登録番号は39-0155です。昭和20年(1945年)7月の高知空襲で焼けたあとに建てられた復興建築にあたります。
Q料亭得月楼本館の大広間はどのくらいの広さですか。
A2階にある大広間は80畳敷で、縁まで含めると100畳になります。店の案内では最大150人ほどの利用が可能です。建物全体の建築面積は319平方メートルです。
Q料亭得月楼本館の天井板はどんな材ですか。
A高知県東部の魚梁瀬で採れた杉の一枚板で、長さ10メートル、幅75センチ、厚さ1.8センチあります。当初は12メートルほどの予定でしたが、運搬の途中に通れない山道があり、2メートルほど切り落としたと店は伝えています。
Q料亭得月楼本館は誰が設計しましたか。
A柳生濟です。高知県建築士会の草創期の会員で、戦後の復興期に地元で活動した建築家でした。文化庁の国指定文化財等データベースにその名が記されています。
Q料亭得月楼本館の中を見学することはできますか。
A営業中の料亭なので、食事の予約をして客として入ることになります。見学だけの受け入れはしていません。正門の内側からは、北面の玄関と切妻の車寄せを外から見ることができます。

基本データ

名称料亭得月楼本館(りょうていとくげつろうほんかん)
所在地高知県高知市南はりまや町1-17-3
指定区分国登録有形文化財(建造物) 登録番号39-0155 登録基準:造形の規範となっているもの
指定年平成16年(2004年)11月8日登録
員数1棟
寸法木造2階建、桟瓦葺、建築面積319平方メートル。桁行十間・梁間六間
所有者文化庁の国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし
公開状況営業中の料亭。館内は食事の予約による。外観は正門越しに見える

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 料亭得月楼本館
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004441
文化遺産オンライン — 料亭得月楼本館
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/141711
得月楼 公式サイト — お部屋
https://www.tokugetsu.co.jp/room.html
得月楼 公式サイト — よくある質問
https://www.tokugetsu.co.jp/question.html

最終更新日: 2026.09.14