庭に南面する座敷

料亭得月楼高陽の間は、高知県高知市南はりまや町にある木造平屋建の座敷で、昭和32年(1957年)に建てられ、平成28年(2016年)2月25日に国の登録有形文化財に登録された。建築面積は86平方メートル、屋根は寄棟造桟瓦葺である。

この座敷は庭のために建てられている。南を庭園に向け、正面いっぱいに開く。庭は江戸時代末期のもので、料亭の建物より1世紀ほど古い。つまり高陽の間は、すでにあった庭に対して、あとから座席を据えるように置かれた建物である。

目の前には池がある。鯉が泳いでいて、座敷から水面までの距離はごく近い。

数寄屋の細さと、丸窓の付書院

料亭得月楼高陽の間の登録基準は「造形の規範となっているもの」で、登録番号は39-0280。同じ日に登録された喜久の間・渡り廊下・正門とあわせて、4棟が一度に加わった。

評価されているのは意匠である。柱には面取りを施した材が多く使われ、部材が細く見える。数寄屋造の手法だが、この座敷では古典の再現にとどまっていない。文化庁の解説は、繊細な数寄屋風でありながら新しさも取り入れた造形と評している。

床まわりは堂々としている。大床と棚をゆったり構え、その脇の付書院が丸窓の張り出し型になっている。付書院は本来、書見のために縁側へ張り出した棚であり、角ばった障子が入るのが普通である。ここではその開口が円形をとる。座敷の直線の中で、この一点だけが曲線になる。

天井も変わっている。格天井の格縁が幾何学模様風に組まれ、正方形の繰り返しにはなっていない。昭和32年という年代を考えると、伝統的な座敷の語彙で新しい図柄を試した仕事ということになる。

座って見る

料亭得月楼高陽の間は、立って眺める建物ではない。座敷に座ったときの目の高さで、庭と建具と天井の関係が組み立てられている。

まず丸窓の付書院に目を向けたい。光の入り方が一日のうちで変わるので、昼と夕方では窓の見え方が違う。次に天井を見上げると、格縁の組み方が角度によって表情を変える。真下から見るのと、部屋の端から斜めに見るのとでは、模様の読み取り方が変わる。

庭へ向き直れば、寄棟の軒が視界の上を横切っている。庭園と池を見るための開口が、屋根の軒先で切り取られる格好になる。

庭のほうが1世紀ほど古いことを思い出すと、この設計の狙いが見えてくる。古い庭をどう見せるかという問題に、昭和32年の側から答えが出されている。

見学の条件

料亭得月楼高陽の間は座敷として使われている。店の公式サイトは高陽邸の名で、庭園を一望できる部屋として紹介している。利用したい座敷があれば予約のときに相談することになり、見学だけの受け入れはない。

この棟は庭に面した敷地の南寄りにあるため、街路からは見えない。撮影の可否は公式サイトに記載がないので、丸窓や天井を撮りたい場合は予約時に確認したい。

建物には段差がある。車椅子はタイヤを拭くことで店内に入れると案内されている。営業時間や行き方は、料亭得月楼全体のページにまとめてある。

Q&A

Q料亭得月楼高陽の間はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A昭和32年(1957年)の建築で、平成28年(2016年)2月25日に国の登録有形文化財に登録されました。登録番号は39-0280、登録基準は「造形の規範となっているもの」です。
Q料亭得月楼高陽の間の付書院はどこが珍しいのですか。
A開口が丸窓になっている張り出し型である点です。付書院は縁側側へ張り出した書見用の棚で、角のある障子が入るのが一般的ですが、この座敷では円形の窓が据えられています。
Q料亭得月楼高陽の間から見える庭はいつのものですか。
A江戸時代末期の庭園です。座敷より1世紀ほど古く、目の前には鯉のいる池があります。高陽の間は南面をこの庭に向けて建てられています。
Q料亭得月楼高陽の間の天井はどうなっていますか。
A格天井ですが、格縁が幾何学模様風に組まれており、正方形の単純な繰り返しにはなっていません。面取り材を多用した細い部材とあわせ、数寄屋風の意匠に新しさを加えた例とされます。
Q料亭得月楼高陽の間を利用するにはどうすればよいですか。
A営業中の料亭の座敷なので、食事の予約をして客として入ります。公式サイトは高陽邸の名で紹介しており、希望は予約の際に伝えることになります。街路からは見えません。

基本データ

名称料亭得月楼高陽の間(りょうていとくげつろうこうようのま)
所在地高知県高知市南はりまや町1丁目255-3他
指定区分国登録有形文化財(建造物) 登録番号39-0280 登録基準:造形の規範となっているもの
指定年平成28年(2016年)2月25日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、桟瓦葺、建築面積86平方メートル
所有者合資会社得月楼
公開状況営業中の料亭の座敷。利用は食事の予約による。街路からは見えない

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 料亭得月楼高陽の間
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011000
国指定文化財等データベース(文化庁)— 料亭得月楼喜久の間
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011001
得月楼 公式サイト — お部屋
https://www.tokugetsu.co.jp/room.html
得月楼 公式サイト — よくある質問
https://www.tokugetsu.co.jp/question.html

最終更新日: 2026.09.14