教王護国寺五重塔とは

東海道新幹線が京都駅に近づくと、車窓の南側に高くそびえる塔が見えてくる。これが教王護国寺、通称「東寺」の五重塔である。総高は約五四・八メートルあり、現存する木造の塔として国内で最も高い。九条通に面した境内の南東に建ち、その姿は境内からも寺の外の通りからも望むことができる。

東寺は延暦十五年(七九六年)、平安京遷都の二年後に創建された官立の寺院で、弘仁十四年(八二三年)に嵯峨天皇から空海(弘法大師)に下賜された。空海はこの寺を真言密教の根本道場と定めている。現在の塔は江戸時代の寛永二十一年(一六四四年)に再建されたもので、京都市南区九条町に所在し、所有は教王護国寺である。

五度建てられた塔

いま訪れる人が目にする塔は、この地に建てられた五代目にあたる。初代の塔は空海が講堂に続いて造営に着手したが、資金も人手も不足していた。天長三年(八二六年)、空海は塔の用材を運ぶための勧進を願い出る表を朝廷に提出している。東山に適した材木を見つけたものの、巨木を曳く人手が足りないという窮状を訴えた記録が残る。初代の塔には、空海が唐から持ち帰った仏舎利が納められたとされる。

塔にとって最大の脅威は落雷であった。創建以降、塔は四度焼失し、そのたびに再建のための大事業が繰り返された。今日見られる塔は、寛永十八年(一六四一年)の焼失後、徳川三代将軍家光の援助のもとで造営され、寛永二十一年(一六四四年)に完成した。工事を率いたのは、大和守の官位を持ち、京都周辺の重要な造営を統括した大工棟梁、中井正純である。

国指定文化財等データベースは年代を寛永二十年(一六四三年)と記すが、再建が完了したのは翌年の一六四四年とされる。資料によって年次の扱いに差があるため、本稿では着工から完成までの経緯にしたがって記載した。

国宝としての価値

この塔は明治三十年(一八九七年)に重要文化財に指定され、昭和二十七年(一九五二年)に国宝となった。評価の根拠は、その規模だけにあるのではない。抑制のきいた造りにも価値が認められている。五つの屋根はいずれも方三間の正方形の平面を覆い、塔全体は縁を設けない壇上積の基壇の上に建つ。軒を支える組物は三手先で、その間には簡素な間斗束を置き、木鼻のような装飾的な細工はほとんど見られない。

江戸時代初期の京都では、より古く重厚な木割に立ち返る建築がしばしば造られた。この塔は、そうした復古的な傾向のなかでも優れた作例の一つに数えられる。木割は太く、全体が和様の伝統的な手法で構成される。初層には彩色が施されるが、十七世紀の建築に多い華美さを抑えており、専門家がこの塔を高く評価する理由の一つとなっている。

見どころ

初層の内部には、国内でも密度の高い密教の世界が広がる。塔を貫く心柱は、真言の教えの中心に位置する大日如来とみなされる。その四方を金剛界の四仏が囲む。東に阿閦、南に宝生、西に阿弥陀、北に不空成就の各如来が安置され、八尊の菩薩がこれに従う。四本の四天柱には金剛界曼荼羅が描かれ、側柱には八大龍王、壁には真言の教えが空海へと受け継がれた八祖の姿が描かれている。

心柱をよく見ると、一本の材ではなく、複数の材を継ぎ、角を面取りしてあることがわかる。十七世紀には、この高さに見合う一本材がすでに入手困難になっており、大工は短い材を継いで用いた。日本の森林の変化を静かに記録する実務的な工夫である。

この内部は一年の大半を通じて非公開である。寺が初層を開けるのは、おおむね正月の数日間、三月にかけての冬の特別拝観、そして春と秋の限られた時期に限られる。扉が閉じているときでも、塔は外から眺める価値がある。開門直後の午前五時台、人の少ない境内を歩くひととき、あるいは枝垂桜が咲く頃、その奥に立つ塔の姿は記憶に残る。

周辺の見どころとアクセス

五重塔は、東寺を半日かけて巡る行程のなかの一つである。慶長八年(一六〇三年)に再建され、同じく国宝に指定される金堂には、薬師如来の大きな坐像が安置される。その背後の講堂には、二十一体の仏像が立体曼荼羅として配され、空海の時代にさかのぼる国宝も含まれる。境内北西には、空海をまつる御影堂(大師堂)が建ち、こちらは無料で参拝できる。

毎月二十一日には、境内に弘法市が立つ。骨董や工芸品、植木、屋台の食べ物などを商う露店が数百軒並ぶ。東寺は京都駅の南側から徒歩約十五分、近鉄東寺駅からは徒歩約七分と近い。駅に近いため、伏見稲荷大社など京都南部の見どころと合わせて一日の行程を組み立てやすい。

Q&A

Q塔の内部に入れますか。
A初層内部の公開は、おおむね正月、一月から三月にかけての冬の特別拝観、春と秋の限られた期間のみです。二層から上は公開されません。これらの期間以外は、境内から外観を拝観できます。
Q高さはどれくらいですか。
A約五四・八メートルで、現存する木造の塔として国内で最も高い塔です。資料によっては約五五メートルと記すものもあります。
Q拝観料はいくらですか。
A境内を歩いて塔を外から眺めるだけなら無料です。金堂・講堂の有料拝観は通年で大人八〇〇円、塔の初層が公開される期間は共通の拝観券が大人一二〇〇円です。
Q撮影に適した時間はいつですか。
A人の少ない午前五時の開門直後と、枝垂桜が咲く三月下旬から四月上旬がよく知られています。
Q京都駅からの行き方は。
A京都駅の八条口(南側)から徒歩約十五分です。近鉄京都線で一駅の東寺駅で降り、徒歩約七分で着く経路もあります。

基本情報

名称教王護国寺五重塔(東寺五重塔)
所在地京都府京都市南区九条町
所有者教王護国寺(東寺)
指定区分国宝(昭和二十七年〔一九五二年〕十一月二十二日指定/明治三十年〔一八九七年〕重要文化財指定)
建立寛永二十一年(一六四四年)完成、江戸時代前期、五代目の再建
構造・形式三間五重塔婆、本瓦葺、総高約五四・八メートル
員数一基
世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産(一九九四年登録)
開門時間午前五時〜午後五時、有料拝観の堂宇は午前八時〜午後五時(受付終了午後四時半)
アクセス京都駅から徒歩約十五分、近鉄東寺駅から徒歩約七分

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1834
東寺 公式サイト 五重塔
https://toji.or.jp/smp/guide/gojunoto/
東寺 公式サイト 拝観のご案内
https://toji.or.jp/smp/admission/
京都観光Navi(京都市公式)
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=4232

最終更新日: 2026.06.01