酒米を貯えた細長い小屋

武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツは、長野県佐久市茂田井の旧中山道沿いにある造り酒屋・武重本家酒造の明治後期の穀物庫で、平成12年(2000年)9月26日に国の登録有形文化財に登録された。木造平屋建、瓦葺、建築面積は28平方メートル。所有者は武重本家酒造株式会社である。

旧細工小屋の北、屋敷地の西辺に沿って建つ桟瓦葺切妻造の細長い建屋である。梁行はわずか1間、およそ1.8メートルで、東面は出桁の造りとし、前面に低い切目縁を付ける。戸口は片開きの戸が5戸前、横板を12段に落とし込む形式の戸口が8戸前、あわせて13の区画が並ぶ。

「穀ビツ」は穀物を入れる櫃、つまり大きな箱のことで、ここでは建物そのものが仕切りのある穀物の箱として造られている。屋敷にはもう一つ「奥穀ビツ」があり、こちらは大正期のL字形の建物である。前穀ビツはそれより古く、明治元年(1868年)創業の蔵が明治後期に酒米の貯蔵設備を整えた段階の建物である。

登録の理由と価値

登録基準は「再現することが容易でないもの」である。文化庁の解説は、造り酒屋の原料貯蔵の様子を伝える施設として貴重だと述べる。仕込蔵や店は多くの造り酒屋に残るが、米を貯える小屋は用途が失われると真っ先に建て替えられる。武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツは、その失われやすい建物が残った例である。

落し板の戸口は、板を一枚ずつ上から差し込んで閉じ、下から順に外して開ける仕組みで、米を入れるときは板を積み上げ、出すときは必要な高さまで板を抜く。12段の板は、その区画にどれだけの米が入っていたかを示す目盛りでもあった。

細長い平面と1間の梁行は、区画ごとに米を分けて管理するための形である。産地や品種、精米の度合いごとに米を分ければ、13の区画は帳簿の欄のように働く。建物の形が、そのまま酒造りの原料管理の方法を示している。

見どころ

前穀ビツは屋敷の西辺、醸造区域の側にあって通りからは見えない。酒蔵開放の日に敷地へ入り、旧細工小屋の北へ進むと、西の塀際に細長い瓦屋根の小屋が続く。武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツはこれである。

東面に立って、戸口の数を数えたい。片開きの戸が5つ、横板を差し込む戸口が8つ。板の段数が12であることも、板の縁の摩耗とともに確かめられる。板を抜き差しした跡が、この小屋が長く使われた証拠になる。

出桁の軒と低い切目縁は、戸口の前で作業をするための工夫である。軒が深く張り出して雨を避け、縁が米俵を置く台になる。小屋の前に立てば、俵を担いで板を一枚ずつ差し込んでいた作業の様子が想像できる。

見学方法とアクセス

武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツは屋敷の西辺、醸造区域の側にあり、旧中山道からは見えない。春分の日前後の酒蔵開放で敷地に入れば、旧細工小屋の北に続く細長い小屋として見ることができる。開放日に見学が許される範囲は年によって異なるため、当日の案内に従いたい。

武重本家酒造は稼働中の酒蔵であり、武重家の住まいでもある。建物の内部は通常公開されておらず、敷地に入れるのは事務所と売店の営業時間内、平日の午前8時から午後5時までに酒を買いに立ち寄る場合に限られる。土日祝日と年始、旧暦の盆は休みである。年に一度、春分の日前後(例年3月20日から21日ごろ)に酒蔵開放が開かれ、仕込蔵に入って試飲ができる。2026年の酒蔵開放では佐久平駅からチャーターバスの送迎が行われた。予約制の試飲会も企画され、蔵の案内が組み込まれることがある。日程は公式サイトで確認しておきたい。

最寄りはJR北陸新幹線の佐久平駅で、千曲バスの望月・芦田方面行きに乗り「茂田井入口」で降りると徒歩約2分。ただしバスは平日のみの運行なので、週末は佐久平駅からタクシーか車で約30分、距離にして約15キロを見込む。上信越自動車道の佐久インターチェンジ、湯の丸インターチェンジからも車で約30分である。公道からの撮影は自由だが、敷地内で撮る場合は行事のときにスタッフの案内に従いたい。

Q&A

Q武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツはいつ建てられましたか。
A明治後期の建築です。文化庁のデータベースは年代を明治後期(1868〜1911年の範囲内)としており、具体的な年は記録されていません。
Q前穀ビツとは何ですか。
A穀物を貯える櫃(箱)の役目をもつ建物で、造り酒屋の原料米を区画ごとに納めた木造平屋建の小屋です。建築面積は28平方メートル、梁行は1間です。
Q武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツの戸口はどうなっていますか。
A片開きの戸が5戸前、横板を12段に落とし込む戸口が8戸前あります。落し板は上から一枚ずつ差し込んで閉じ、下から外して開けます。
Q前穀ビツは見学できますか。
A通りからは見えません。酒蔵開放の日に敷地へ入ると、旧細工小屋の北に続く細長い小屋として見ることができます。
Qなぜ登録有形文化財に登録されたのですか。
A「再現することが容易でないもの」という基準で、平成12年(2000年)9月26日に登録されました。造り酒屋の原料貯蔵の様子を伝える施設として貴重だと評価されています。

基本情報

名称武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツ
所在地長野県佐久市茂田井字東町2179
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成12年(2000年)9月26日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積28平方メートル(梁行1間)
所有者武重本家酒造株式会社
公開状況非公開(稼働中の酒蔵兼私邸)。平日午前8時から午後5時に売店へ立ち入り可。春分の日前後の酒蔵開放で内部見学・試飲

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 武重本家酒造及び武重家住宅前穀ビツ
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001805
佐久市ホームページ 茂田井間の宿
https://www.city.saku.nagano.jp/kanko/kanko/spot/nakasendo/motaiainoshuku/motaiainoshuku.html
武重本家酒造株式会社 公式サイト
https://takeshige-honke.jp/
信州たてしな観光協会 武重本家酒造株式会社
https://shirakabakogen.jp/spot/takeshiga_honke_syuzo

最終更新日: 2026.09.10