崇福寺三門(楼門):朱に塗られた龍宮門
長崎電気軌道の終点、崇福寺電停から坂を上がると、最初に出迎えるのが朱塗りの門である。白漆喰の基部の上に瓦屋根の上層がのり、まわりに勾欄をめぐらせている。地元では龍宮門と呼ばれ、浦島太郎の伝説に出てくる海中の宮殿になぞらえた名で親しまれてきた。正式には崇福寺の外門にあたる三門で、いま建つ建物は嘉永2年(1849)の再建にさかのぼる。
三門という名は、中央の門戸の左右にもう一つずつ門戸を構える形に由来する。基部は石や瓦を練り積みにして漆喰で塗り、その上に入母屋造の二層を架けた楼門で、左右の脇門にもそれぞれ瓦屋根がのる。朱と白漆喰の対比が、訪れる人がまず写真に収める一枚になっている。
福州の唐人が開いた唐寺
崇福寺は黄檗宗の寺院で、山号を聖寿山という。寛永6年(1629)、長崎に住む福建省福州出身の唐人たちが、郷里の僧・超然を招いて開いた。檀家に福州の人が多かったことから福州寺とも呼ばれる。興福寺・福済寺とあわせて長崎三福寺に数えられ、中国様式の寺院としては国内で最も古い。
境内の古い堂宇には、変わった成り立ちのものが多い。材を中国で切り組み、唐船で長崎へ運び、唐人の工匠が現地で組み上げた。そのうち第一峰門と大雄宝殿は国宝に指定されている。
三門はこの流れから外れる。もとあった門が火災や風害で失われたあと、嘉永2年(1849)4月に再建された際の工事は、棟梁の大串五郎平をはじめ、すべて日本人の工匠の手で行われた。境内でいちばん中国趣味が濃く見えながら、実際には最も新しく、しかも日本人だけが手がけた門ということになる。
重要文化財に指定された理由
この門は明治39年(1906)に国の保護を受け、現在は重要文化財に指定されている。価値の一端は、いま述べた逆説にある。見た目は純粋に中国風でありながら、輸入された部材ではなく、中国の手本に倣った地元の職人の手で組み上げられた建物だという点である。
形式としては楼門で、二層のうち上層だけが独自の屋根を持つ。桁行は三間、梁間は二間、上層の屋根は入母屋造で本瓦を葺き、まわりに勾欄をめぐらす。左右の脇門は、漆喰塗りの基部に瓦屋根をのせている。崇福寺の古い堂宇が明末から清初の様式を大陸から直接伝えるのに対し、三門はその語彙を幕末まで引き延ばしてみせた。
見どころ
門をくぐる前に、少し離れて眺めたい。前には中国風の狛犬が一対すわっている。ずんぐりとして、どこか愛嬌のある姿は、神社の細身の狛犬よりも大陸の石獅子に近い。
上層に目を上げると、山号を記した「聖寿山」の扁額が掲げられている。黄檗宗を日本に開いた中国僧・隠元の筆と伝えられる。
屋根の意匠も見逃したくない。そのほとんどが火伏せにかかわるものだからだ。体が水でできているという魔伽羅をかたどった飾りが、棟と通路の天井に一対ずつのり、中央には瓢箪を模した飾りが据えられる。一度焼けている木造の門にとって、これは飾り以上の祈りだった。門扉には獣の面をあしらった環の取っ手がはめ込まれ、寺ではこの種のものとして国内唯一と説明している。ただし、いま掛かっているのは複製である。
周辺の見どころ
三門は、ゆっくり一時間ほど過ごしたい小さな境内の入り口でもある。門の先には石段が続き、登りきると国宝の第一峰門が立つ。組物は寧波で切り組んで運ばれたもので、四手先の詰組は国内に類例がない。さらに上には正保3年(1646)の大雄宝殿があり、本堂であると同時に長崎に現存する最古の建物で、これも国宝である。鐘鼓楼、護法堂、媽姐門は、いずれも重要文化財に指定されている。
門の外に出ても、界隈は歩く価値がある。寺町通りを少し北へ行くと、三福寺のもう一つ、国内最古の黄檗寺院である興福寺がある。その間を流れる中島川には、寛永11年(1634)に架けられた眼鏡橋がかかる。現存最古のアーチ式石橋とされ、もとは興福寺の参道の一部だった。
Q&A
- なぜ龍宮門と呼ばれるのですか。
- 白漆喰の基部の上に瓦屋根の上層が立つ朱塗り二層の姿が、伝説の海中の龍宮を思わせたためです。龍宮門という通称が定着し、いまでは正式名の三門と同じくらいよく使われています。
- 境内の国宝とは何が違うのですか。
- 国宝の第一峰門と大雄宝殿は17世紀に、中国で用意した材を唐人の工匠が組み上げたものです。三門の再建はずっと新しい嘉永2年(1849)で、日本人の工匠が手がけました。主要な建物のなかで最も新しく、指定も国宝ではなく重要文化財です。
- 門の中に入れますか。
- 中央の門戸を通って境内に入りますが、上層は公開されていません。扁額や狛犬、屋根の飾りはいずれも地上から眺めるもので、細部はむしろ下から見るほうがよく分かります。
- どうやって行けばよいですか。
- 長崎電気軌道1系統の終点・崇福寺電停が最寄りで、長崎駅から12分ほどです。電停から坂を3分ほど上ると門に着きます。境内に入ると急な石段があるので、足元に気をつけてください。
- 拝観料と拝観時間を教えてください。
- 拝観時間は8時から17時です。拝観料は大人300円で、高校生以下は無料です。時間や料金は変わることがあるので、訪問前に確認してください。
基本データ
| 名称 | 崇福寺三門(楼門) |
|---|---|
| 所在地 | 長崎県長崎市鍛冶屋町7-5 |
| 所有 | 崇福寺(黄檗宗・聖寿山) |
| 指定区分 | 重要文化財(明治39年・1906年に国の保護指定) |
| 年代 | 嘉永2年(1849)再建、江戸時代末期 |
| 構造 | 桁行三間、梁間二間、二重門、入母屋造、本瓦葺、左右脇門付 |
| 拝観時間 | 8:00〜17:00 |
| 拝観料 | 大人300円、高校生以下無料 |
| アクセス | 長崎電気軌道1系統・崇福寺電停から徒歩約3分 |
References
- 崇福寺三門(楼門) - 長崎市
- https://www.city.nagasaki.lg.jp/page/1198.html
- 崇福寺三門(楼門) - 長崎県文化財データベース
- https://www.pref.nagasaki.jp/bunkadb/index.php/view/110
- 崇福寺 - ながさき旅ネット(長崎県観光連盟)
- https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/96
- 国指定文化財等データベース - 文化庁
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3517
最終更新日: 2026.06.04