長徳寺行在所とは

長徳寺行在所(ちょうとくじあんざいしょ)は、新潟県新発田市大栄町の長徳寺に大正10年(1921年)に移された明治天皇ゆかりの木造2階建の座敷棟で、平成29年(2017年)10月27日に登録有形文化財となった。

行在所は「あんざいしょ」と読み、天皇が行幸の途中に滞在する仮の御所を指す。長徳寺行在所は庫裏の南に接続し、銅板葺で、建築面積は109平方メートル。長徳寺の登録5件のなかでいちばん新しく、ただ1棟の2階建である。

明治天皇の北陸巡幸と白勢家

明治11年(1878年)、明治天皇は北陸と東海道をめぐる巡幸に出た。新潟県立図書館の解説によると、一行は同年9月10日に新潟県に入り、県内に18日間滞在している。

このとき天皇を迎える建物を用意したのが、新発田の豪商白勢(しろせ)家である。文化庁の資料は、長徳寺行在所を、白勢家の新潟別邸のうち明治天皇のための行在所として建てられた部分を移築したものと説明する。地元紙は、明治天皇がこの行在所に3泊したと報じている。

別邸の一部がなぜ長徳寺へ移されたのかについて、文化庁と新発田市の資料は詳しく述べていない。

1878年と1921年、2つの年代

長徳寺行在所には年代が2つ重なっている。天皇が泊まった明治11年(1878年)と、文化庁のデータベースが年代として掲げる大正10年(1921年)である。

新発田市の文化財一覧は、この大正10年を「移築」の年と記している。文化庁の解説も、床脇や建具の意匠を大正期らしいものと評している。つまり、いま長徳寺に建つ長徳寺行在所の細部には、移築された大正10年ごろの手が大きく入っていると読むのが自然である。明治11年当時の部材や間取りがどこまで残っているかは、公開された資料からは確かめられない。

玉座の間と数寄屋風の意匠

長徳寺行在所の1階は、玉座の間と推定される10畳を中心に3室を配し、2階には2室を設けている。玉座の間とは、天皇が座った部屋のことである。

座敷でありながら長押を廻さず、数寄屋造の流れをくむ軽やかな意匠でまとめている。長押を省くと壁面がすっきりと見え、格式ばった書院の座敷とは違う柔らかな印象になる。床脇の構成や建具にも凝った意匠が見られ、文化庁はこれを大正期らしい瀟洒な造りと評価した。地元紙は、ガラス戸の波形の格子がこの建物の特徴だと伝えている。

こうした意匠が「造形の規範となっているもの」と認められ、長徳寺行在所は登録番号15-462として登録された。

長徳寺行在所の見学

長徳寺行在所は通常は公開されていない。令和6年(2024年)6月15日と16日、新発田の寺町一帯で開かれた催し「しばた寺・びらき」で初めて一般公開されたと、地元紙が報じている。

その後の公開の予定は、寺からは案内されていない。内部の見学や撮影を希望する場合は、長徳寺に事前に問い合わせたい。庫裏の南に接続する建物なので、公開日以外は境内から外まわりを眺めるにとどめることになる。境内への行き方は長徳寺のページにまとめた。

Q&A

Q長徳寺行在所の読み方は何ですか。
A「ちょうとくじあんざいしょ」と読みます。行在所は、天皇が行幸中に滞在する仮の御所のことです。
Q長徳寺行在所は、もとはどこにあった建物ですか。
A新発田の豪商白勢家の新潟別邸のうち、明治天皇のための行在所として建てられた部分を長徳寺に移したものとされています。
Q長徳寺行在所はいつ長徳寺に移されましたか。
A文化庁のデータベースは年代を大正10年(1921年)とし、新発田市の文化財一覧はこれを移築の年としています。
Q長徳寺行在所の建物の特徴は何ですか。
A1階は玉座の間と推定される10畳を中心に3室、2階に2室があり、長押を廻さない数寄屋風の意匠と、大正期らしい床脇や建具が特徴です。
Q長徳寺行在所は見学できますか。
A通常は非公開です。令和6年(2024年)6月に初めて一般公開されました。見学を希望する場合は長徳寺(電話0254-22-6226)に問い合わせてください。

基本データ

名称長徳寺行在所(ちょうとくじあんざいしょ)
所在地新潟県新発田市大栄町2丁目甲1203
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 15-462
指定年平成29年(2017年)10月27日登録
員数1棟
寸法木造2階建、銅板葺、建築面積109平方メートル
所有者宗教法人長徳寺
公開状況通常非公開(2024年に初めて一般公開)

参考文献

国指定文化財等データベース 長徳寺行在所(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011920
文化遺産オンライン 長徳寺行在所
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/223017
登録有形文化財(建造物)の登録について(文化庁、平成29年7月21日)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/r1392281_22.pdf
新発田市の指定文化財一覧(新発田市)
https://www.city.shibata.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/026/451/r6-18-25.pdf
越後佐渡ヒストリア 第33話 お出迎えはつらいよ 御巡幸の舞台裏(新潟県立図書館)
https://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/1b8446f94c08f7ae67441d7d895601a6/%E8%B6%8A%E5%BE%8C%E4%BD%90%E6%B8%A1%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2/%EF%BC%BB%E7%AC%AC%EF%BC%93%EF%BC%93%E8%A9%B1%EF%BC%BD%E3%81%8A%E5%87%BA%E8%BF%8E%E3%81%88%E3%81%AF%E3%81%A4%E3%82%89%E3%81%84%E3%82%88%E3%80%80%EF%BD%9E%E5%BE%A1%E5%B7%A1%E5%B9%B8%E3%81%AE%E8%88%9E%E5%8F%B0%E8%A3%8F%EF%BD%9E
明治天皇が3泊した長徳寺「行在所」初の一般公開(新潟日報、2024年6月15日)
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/423170

最終更新日: 2026.09.28