川辺に建つ住宅のようなポンプ室

三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室は、新潟県三条市中新の五十嵐川東岸に建つ昭和8年(1933年)の取水施設で、平成23年(2011年)10月28日に国の登録有形文化財となった。三条の水道は、ここで川の水を汲み上げるところから始まる。

建物は木造平屋建で、桁行13.7メートル、梁間7.3メートル。切妻造の鉄板葺の屋根を架け、正面に切妻屋根の玄関を突き出し、背面には寄棟造の付属屋が張り出す。外壁はモルタル塗りで仕上げている。

外から見ただけでは、ここにポンプがあるとは思えない。文化庁の解説は「小住宅」を思わせる外観と書き、土木学会関東支部新潟会の紹介も、一見して浄水場のポンプ室には見えない容姿だと述べる。

建物の中央には内径5.6メートルの取水井が設けられている。住宅めいた外皮の内側に、井戸を抱え込んだ機械の部屋がある。この二重性が、この一棟のもっとも面白いところだろう。

設計者が意匠を与えた理由

三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室は、浄水場から西へおよそ350メートル離れ、堤防の下にぽつんと建つ。浄水場の構内とは別に、町から川へ出た人の目に直接触れる位置にある。

三条市の説明によれば、大崎浄水場の建造物のうち、ろ過池や配水池のように工程の中核をなす構造物は装飾を省き、人目につく建物には瀟洒で独創的な意匠を与えている。取水ポンプ室はその筆頭に挙げられている。建物の設計を担ったのは、新潟市に事務所を構えた建築家の長谷川龍雄である。

川辺に機械の箱を置くのではなく、小さな家として建てる。三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室のこの判断は、水道が町の暮らしの一部として受け入れられることを意識したものと読める。取水ポンプ場の門と組んで、川辺の歴史的景観を形づくっている。

見るときの手がかり

まず屋根の組み合わせを見たい。本体の切妻、玄関の小さな切妻、背面の寄棟と、三つの屋根が大きさを変えて重なっている。正面から見ると玄関の切妻が本体の破風と相似形をなし、住宅らしさを決めているのはこの部分である。

三条市が紹介する写真は北東から撮られており、この角度だと玄関の張り出しと本体の長さの対比がよく分かる。内部の取水井は外からは見えないが、平面の中央に直径5.6メートルの井戸があることを頭に置いて外観を眺めると、建物の奥行きの意味が見えてくる。

三条市の上下水道課は、現在の原水を川床に埋めた長さ410メートルの集水埋渠から取る伏流水だと案内している。取水の方法は創設時から変わっている可能性があり、建物が今どの設備を収めているかは公表されていない。

見学方法

三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室は内部非公開である。浄水場の構外、五十嵐川の堤防の下にあり、春の桜の時期に浄水場の構内が開かれる際にも、この取水ポンプ場が対象に含まれるかどうかは市の案内で確かめたい。

外観を見るなら、北東側から玄関と本体をあわせて眺める位置がよい。すぐ東に取水ポンプ場の門が立つので、門と建物を一つの構図に収められる。浄水場への行き方と公開の条件は三条市水道局大崎浄水場のページにまとめてある。

よくある質問

Q三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室は昭和8年(1933年)の建築で、平成23年(2011年)10月28日に国の登録有形文化財となりました。大崎浄水場の建造物12件が同時に登録されています。
Q三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室はどんな建物ですか?
A木造平屋建、切妻造の鉄板葺で、桁行13.7メートル、梁間7.3メートル。正面に切妻の玄関、背面に寄棟の付属屋が付き、中央に内径5.6メートルの取水井を抱えています。外観は小さな住宅のようです。
Q三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室の中は見学できますか?
A内部は公開されていません。浄水場の構外にあるため、春の構内公開に含まれるかどうかも含め、三条市の大崎浄水場(電話0256-38-3539)に確かめるのが確実です。
Q三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室は誰が設計しましたか?
A大崎浄水場の建物の設計は、新潟市に建築事務所を構えていた長谷川龍雄が担いました。浄水の仕組みは水道工学者の茂庭忠次郎が指導しています。
Q三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室は浄水場からどのくらい離れていますか?
A五十嵐川の東岸にあり、浄水場から西へおよそ350メートルです。両者の間を国道289号が通っています。

基本情報

名称三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室
所在地新潟県三条市中新316
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成23年(2011年)10月28日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、鉄板葺、桁行13.7メートル、梁間7.3メートル、建築面積132平方メートル
所有者三条市水道事業
公開状況内部非公開。浄水場の構外(五十嵐川東岸)にあり、見学の可否は要確認

参考文献

国指定文化財等データベース「三条市水道局大崎浄水場取水ポンプ場ポンプ室」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008834
国登録有形文化財「三条市水道局大崎浄水場」(三条市)
https://www.city.sanjo.niigata.jp/soshiki/shimimbu/shogaigakushuka/bunkazai/bunkazai/1740.html
三条市水道局大崎浄水場(にいがた土木構造物めぐり 第49回/土木学会関東支部新潟会)
https://jsce-niigata.com/introduction/article/049/art049.html
きれいな水ができるまで(三条市 建設部上下水道課)
https://www.city.sanjo.niigata.jp/soshiki/kensetsubu/jogesuidoka/jousuidonituite/jousuijo/4621.html

最終更新日: 2026.09.25