秋山孝ポスター美術館長岡本館(旧長岡商業銀行宮内支店):大正の銀行建築がアートの発信拠点に
新潟県長岡市宮内地区、旧三国街道沿いに佇む秋山孝ポスター美術館長岡(APM)は、大正14年(1925年)に長岡商業銀行宮内支店として建設された鉄筋コンクリート造の建物を活用した、世界的にも珍しいポスター専門の美術館です。戦火や大地震を乗り越え、平成28年(2016年)に国の登録有形文化財に登録されたこの建物は、いま現代アートの拠点として新たな役割を担っています。
館内には、長岡市出身の国際的グラフィックデザイナー・秋山孝氏の作品が数多く展示されており、社会的なメッセージをユーモアと力強いビジュアルで伝えるポスターの数々は、言語を超えて世界中の人々の心に訴えかけます。入館無料で気軽に立ち寄れる美術館として、地域の観光案内所やカフェも兼ね備えた複合的な文化施設です。
建物の歴史
この建物は大正14年(1925年)に長岡商業銀行宮内支店として建設されました。鉄筋コンクリート造平屋建、切妻造瓦葺という構造で、正面外壁は洗出し仕上げ、側面はタイル張り、窓枠は人造石研出しと、大正末期の銀行建築にふさわしい重厚な意匠を備えています。豪雪地帯ならではの雁木(がんぎ)が設けられ、フレンチトラスト(鉄骨造)を内部に持つ構造は、当時の技術の粋を集めたものでした。
昭和27年(1952年)には曳家(ひきや)により建物が移設され、この際に雁木は鉄筋コンクリート造に改められました。その後、北越銀行などの金融機関として長く使用されてきましたが、2009年(平成21年)7月12日に秋山孝ポスター美術館として開館しました。
この建物は、第二次世界大戦末期の長岡空襲で市街地の大部分が焼失する中にあって、奇跡的に焼け残り、火災の延焼を食い止める役割も果たしました。さらに2004年(平成16年)の新潟県中越地震にも耐え、その堅牢さを証明しています。長岡市から「歴史的建築物」として支援を受けてリノベーションされ、現在は醸造のまち摂田屋の景観を彩るシンボル的存在となっています。
登録有形文化財としての価値
平成28年(2016年)8月1日、この建物は国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。文化遺産オンラインの解説によれば、旧三国街道に西面して建つ鉄筋コンクリート造平屋建の建物は、正面の洗出し仕上げ、側面のタイル張り、人造石研出しの窓枠など、大正末期の銀行建築の特徴をよく残しています。
曳家の際に雁木が鉄筋コンクリート造に改められたものの、全体として大正末の銀行建築の姿を良好に保っており、地域のシンボルとしての存在感を今に伝えています。建築面積は約94平方メートルで、地方都市における近代建築の貴重な遺構として高く評価されています。
秋山孝氏について
秋山孝氏(1952年〜2023年)は長岡市生まれのグラフィックデザイナー・イラストレーターです。多摩美術大学を卒業後、東京藝術大学大学院を修了し、国際的なポスターデザインの第一線で活躍しました。
1986年にはワルシャワ国際ポスタービエンナーレで自然保護ポスター「WILD LIFE-HELP」が金賞を受賞。1998年にはインド核実験反対のポスターで国連賞を受賞しました。2007年から2013年にかけてはアメリカのGraphis Poster Annualで19個の金賞を獲得するなど、世界各国のビエンナーレやコンペティションで多数の栄誉に輝いています。
秋山氏は、ヘルシンキ、メキシコ、イタリア、ウクライナ、深圳、上海、シカゴ、ワルシャワなど世界各地で国際ポスター展の審査員としても招聘されました。環境問題、公衆衛生、災害などの社会的テーマを、ユーモラスでインパクトのある表現で伝えることを信条とし、ポスターという媒体を通じて社会にメッセージを発信し続けた芸術家です。
見どころ・魅力
大正時代の銀行建築を体感
緑色の扉が印象的な外観は、大正時代の銀行建築の面影を色濃く残しています。重厚な鉄筋コンクリートの構造と、洗出し仕上げの正面壁面、タイル張りの側壁が醸し出す風格は、約100年の時を経た今なお訪れる人を魅了します。一歩中に入ると、かつての銀行の広々とした空間に色鮮やかなポスター作品が並び、歴史と現代アートが見事に融合した独自の世界が広がります。
世界的ポスターアートのコレクション
秋山孝氏の代表作をはじめ、環境保護、社会問題、新潟の自然美をテーマにしたポスター作品が展示されています。越後の名景を現代ポスターで表現した「越後百景十選」シリーズでは、長岡花火や山古志の牛の角突きなど、地域の魅力がダイナミックなビジュアルで描かれています。美術館内では作品集の閲覧も自由にでき、ポスターアートの世界をじっくり堪能できます。
APMカフェ
展示室の奥にはミュージアムカフェが併設されています。挽きたてのハンドドリップコーヒーや、APMのテーマカラーである緑をイメージしたオリジナルクリームソーダ、アイスクリームなどを楽しみながら、アートに囲まれたゆったりとした時間を過ごすことができます。展示室内での飲食も可能で、作品を鑑賞しながらくつろげる空間づくりが魅力です。
企画展・イベント
年に約3回の企画展と、年5回程度の「美術館大学」と題した講演会が開催されています。グラフィックデザインやイラストレーション、ビジュアルコミュニケーションに関する研究発表や教育プログラムが充実しており、美術館としてだけでなく学びの場としても機能しています。お子さん向けのぬりえコーナーも用意されており、家族連れでも楽しめます。
周辺情報:醸造のまち摂田屋
APMが位置する摂田屋・宮内地区は、江戸時代に幕府の御領地として味噌・醤油・酒などの醸造業が発展した「醸造のまち」です。太平洋戦争の長岡空襲による被害が比較的少なく、明治・大正時代の建物が数多く残る歴史的な街並みが魅力です。地区内には17件もの国の登録有形文化財があり、旧三国街道沿いを散策しながら歴史的建造物をめぐることができます。
特に注目すべき周辺スポットとしては、明治20年創業の旧機那サフラン酒製造本舗があります。「鏝絵日本一」と称される色鮮やかな鏝絵で飾られた土蔵は必見です。その米蔵を改修した「摂田屋6番街発酵ミュージアム」では、地元食材を活かしたカフェや特産品販売、発酵文化に関する体験プログラムが楽しめます。
また、天保3年(1548年)創業の吉乃川酒造、弘化3年(1846年)創業の星野本店(味噌・醤油)、越のむらさき(醤油)、長谷川酒造、味噌星六など、現在も操業を続ける蔵元が集まっており、試飲や見学、直売を楽しむことができます。毎年秋には「HAKKO trip」と題した発酵をテーマにしたイベントも開催され、地区全体が活気にあふれます。
アクセス・訪問のご案内
APMはJR宮内駅から徒歩約3分と好アクセスです。宮内駅へはJR長岡駅から信越本線または上越線で1駅、東京からは上越新幹線で長岡駅まで約90分です。お車の場合は、関越自動車道の長岡ICから約20分。駐車場は美術館向かいの「M.Oパーキング」3番、または市営摂田屋駐車場をご利用ください。
入館は無料で、開館時間は9:00〜17:00。休館日は毎週火曜日(祝日の場合は営業し、翌日休館)および年末年始です。観光ボランティアガイドによる摂田屋地区の案内(利用日の10日前までに申し込み)も利用でき、より深く地域の歴史と文化に触れることができます。
Q&A
- 入館料はかかりますか?
- いいえ、秋山孝ポスター美術館長岡への入館は無料です。美術館は地域の観光案内所も兼ねており、摂田屋・宮内地区の情報も得ることができます。
- 東京からのアクセス方法を教えてください。
- 東京駅から上越新幹線で長岡駅まで約90分、長岡駅からJR信越本線または上越線で1駅の宮内駅下車、徒歩約3分です。お車の場合は、関越自動車道の長岡ICから約20分です。
- 美術館の周辺にはどのような見どころがありますか?
- 摂田屋地区には17件の登録有形文化財が集中しています。「鏝絵日本一」と称される旧機那サフラン酒製造本舗の土蔵、摂田屋6番街発酵ミュージアム(カフェ・ショップ併設)、吉乃川酒造、星野本店、越のむらさきなど、歴史ある蔵元が徒歩圏内にあり、醸造のまちの魅力を存分に味わえます。
- 開館期間について教えてください。
- 開館時間は9:00〜17:00で、休館日は毎週火曜日(祝日の場合は営業し、翌日休館)および年末年始です。最新の開館情報は公式ウェブサイトまたはSNSでご確認ください。
- 子ども連れでも楽しめますか?
- はい、お子さまも楽しめます。秋山孝氏のカラフルでユーモラスなポスターアートは年齢を問わず楽しめ、ぬりえコーナーも用意されています。カフェではアイスクリームやソフトドリンクもご用意しています。
基本情報
| 正式名称 | 秋山孝ポスター美術館長岡本館(旧長岡商業銀行宮内支店) |
|---|---|
| 文化財区分 | 登録有形文化財(建造物)、平成28年(2016年)8月1日登録 |
| 建設年 | 大正14年(1925年)、昭和27年(1952年)移築、平成21年(2009年)改修 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造平屋建、切妻造瓦葺、建築面積約94㎡ |
| 美術館開館 | 2009年(平成21年)7月12日(2023年7月に摂田屋にて再オープン) |
| 所在地 | 〒940-1105 新潟県長岡市宮内二丁目127-1 |
| 開館時間 | 9:00〜17:00 |
| 休館日 | 毎週火曜日(祝日の場合は営業、翌日休館)、年末年始 |
| 入館料 | 無料 |
| アクセス | JR宮内駅(信越本線・上越線)から徒歩約3分 |
| 所有者 | 長岡市 |
参考文献
- 秋山孝ポスター美術館長岡本館(旧長岡商業銀行宮内支店) - 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/250825
- 秋山孝ポスター美術館 長岡(APM) 公式サイト
- https://settaya-miyauchi.jp/apm/
- 秋山孝ポスター美術館長岡 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/秋山孝ポスター美術館長岡
- 秋山孝ポスター美術館長岡(アート)- 長岡観光ナビ
- https://nagaoka-navi.or.jp/spot/42534
- 秋山孝ポスター美術館 長岡 - 高田建築事務所
- https://www.takada-arc.com/general/4755
- 摂田屋・宮内 みんなで発酵【公式】
- https://settaya-miyauchi.jp/
- Nagaokaぶくぶく発酵めぐり「摂田屋」
- https://hakko.na-nagaoka.jp/round_settaya/
- 秋山孝ポスター美術館長岡(アート)- にいがた観光ナビ
- https://niigata-kankou.or.jp/spot/44256
- 醸造の町・長岡「摂田屋地区」:再発見された機那サフラン酒本舗の魅力 - nippon.com
- https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/gu900174/
最終更新日: 2026.03.26