製品が生まれた場所

主屋の背面に、主屋と直に接続して醸造蔵が建つ。土蔵造二階建で建築面積は約百三十三平方メートル。この屋敷に名を与えた薬酒が、実際につくられた場所である。東面の下屋が戸口をなし、その奥に作業の床が広がる。

内部は構造と作業を軸に組み立てられている。室内に四本の独立柱が立ち、頭上の小屋梁を直接受ける。一階は土間を挟んで、北に資材室、南に製品置場、西を製造タンクの倉庫とした。建物の年代は大正九年(一九二〇年)である。

登録された実働の建物

色漆喰で名高い屋敷では、財を稼いだ建物はつい見過ごされがちだ。醸造蔵に鏝絵の装飾はなく、見せ場となる妻もない。その面白さは機能にある。薬酒づくりの工場であり、原料の搬入から発酵、瓶詰めまでの流れに合わせて配され、登録では薬酒製造に欠かせない施設と記される。

令和三年に歴史的景観への寄与から登録されたこの建物は、主屋が語り始めた話を締めくくる。磨かれた表の座敷が客を迎え、この背後でタンクが仕事をこなした。二つを合わせて読むと、一家の家伝の酒が、海を越えて広がる事業へと育っていった経緯がよりよく見えてくる。

見学にあたって

醸造蔵は主屋の背後に接続して建つため、単独の目的地というより、実働の中核の一部として捉えるのがよい。敷地内からは、主屋とのつながり方や側面の戸口の位置が見て取れる。

屋敷地は長岡市の所有で、土曜・日曜・祝日に公開され、長期の整備が進むにつれてこうした背後の建物も少しずつ開かれていく。資材室、製品置場、タンクの倉庫という配置は外からは読みにくく、ガイドが説明してくれる。

Q&A

Q醸造蔵では何がつくられていたのですか。
A薬用のサフラン酒の製造にあてられ、原料、製造タンク、製品を収めました。登録では薬酒製造に欠かせない施設とされています。
Qなぜ室の中央に柱が立っているのですか。
A四本の独立柱が小屋梁を直接受ける簡明な構造で、その周りの作業の床を広く保ちます。
Q一階はどのように分けられていましたか。
A土間の通路で仕切られ、北に資材室、南に製品置場、西に製造タンクの倉庫が置かれました。
Q主屋とはどう関係していますか。
A主屋の背面に接続します。表の座敷が客に対応する一方、背後の醸造蔵が製造を担いました。
Q内部に入れますか。
A整備が進むにつれ背後の建物の公開も広がっています。案内見学では、内部が全て開いていなくても配置を説明できます。

基本情報

名称旧機那サフラン酒製造本舗醸造蔵
所在地新潟県長岡市摂田屋四丁目1027他
指定区分登録有形文化財(令和3年2月4日登録)
年代大正9年(1920年)
構造土蔵造2階建、瓦葺、建築面積約133㎡
員数1棟
所有者長岡市
公開敷地は土日祝に公開。内部は整備に伴い順次開放

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 旧機那サフラン酒製造本舗醸造蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013524
長岡市 旧機那サフラン酒製造本舗
https://www.city.nagaoka.niigata.jp/kankou/miru/brewing/kina-saffron.html
摂田屋・宮内 機那サフラン酒
https://settaya-miyauchi.jp/kinasaffron/
長岡観光ナビ 旧機那サフラン酒製造本舗
https://nagaoka-navi.or.jp/spot/5880

最終更新日: 2026.07.09