建物より先に築かれた石垣

長岡市摂田屋の旧機那サフラン酒製造本舗を訪れる人の多くは、最初に人目を引くために築かれたものの前をそのまま通り過ぎてしまう。敷地の東面を区切る石垣は、屋敷地全体の境界を定めるとともに、見せることを意図した構えをもつ。東面には南北二箇所の開口が設けられ、敷地への出入口となっている。

石垣は自然石を亀甲形に整形して六段に積み、上部に平らな葛石を載せる。区分の上では建物ではなく工作物にあたり、登録された十件のうち工作物はこの石垣だけである。石積みは十九世紀末から二十世紀初頭、およそ一八九八年から一九一二年ごろのもので、大正十一年(一九二二年)に改修の記録がある。

総延長をめぐって

石垣の長さは資料によって数字が異なる。この違いは丸めてしまうよりも、理由を押さえておきたい。東面の延長は約一〇四メートルとされる。これに敷地内の築山際に築かれた部分を加えると、登録上の総延長は約一二二メートルと記される。二つの数字は、同じ連続した石垣の異なる範囲を指している。

この石垣が登録有形文化財となったのは、周辺の歴史的景観を形づくっている点による。前面道路から見ると、一続きの長い石の線として読める。その上に、のちの主人の野心が積み上げられていった土台である。築いたのは吉澤仁太郎で、明治二十七年に薬酒の事業をこの地に移し、この境界から外へ向けて数十年にわたり普請を重ねた。

どこから眺めるか

石垣は歩いて見るのがよい。東面の前を歩けば、積み方や葛石の様子がもっともよく分かる。東を向くため午前中は光が回り、背後の主屋を撮る人が好む時間帯と重なる。

石垣の見学は無料で、公道に沿って立つため時間を問わず眺められる。屋敷地をめぐる出発点として自然な場所で、長岡市が土曜・日曜・祝日に案内見学を行っている。

Q&A

Q石垣がなぜ文化財に登録されるのですか。
A登録制度は優れた建物だけでなく、その土地の歴史的景観を形づくる要素を守ります。この石垣は屋敷地と前面の通りを区切っており、その点が登録の理由とされています。
Q石垣の長さはどのくらいですか。
A東面の延長は約一〇四メートルです。敷地内の築山際に築かれた部分を加えると、登録上の総延長は約一二二メートルと記されています。
Q出入口を通り抜けられますか。
A東面の二箇所の開口は、もとは屋敷地への出入口でした。敷地内は土日祝の案内見学で入れます。石垣自体は公道に面し、いつでも見られます。
Q上部の石は何のためですか。
A頂部に載る平らな石は葛石と呼ばれ、石積みを覆って雨を落とし、上端の線を整える役割をもちます。
Qいつ築かれたものですか。
A石積みはおよそ一八九八年から一九一二年ごろのもので、大正十一年に改修の記録があります。

基本情報

名称旧機那サフラン酒製造本舗石垣
所在地新潟県長岡市摂田屋四丁目2292-1他
指定区分登録有形文化財(令和3年2月4日登録)
年代明治後期〜大正(1898〜1912年頃)/大正11年改修
構造石造、登録上の総延長約122m
員数1基
所有者長岡市
公開公道に面し常時見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 旧機那サフラン酒製造本舗石垣
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013529
長岡市 旧機那サフラン酒製造本舗
https://www.city.nagaoka.niigata.jp/kankou/miru/brewing/kina-saffron.html
摂田屋・宮内 機那サフラン酒
https://settaya-miyauchi.jp/kinasaffron/
nippon.com 醸造の町・長岡「摂田屋地区」
https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/gu900174/

最終更新日: 2026.07.09