客のための建物
主屋の南奥、屋敷を抜けた先に離れ座敷が建つ。一族が客をもてなした建物である。木造二階建で建築面積は約百六十八平方メートル、入母屋の桟瓦屋根をいただく。その用途は玄関で告げられる。東面の入口には唐破風がつく。人を迎えるための建物にあてられてきた、うねる曲線の破風である。
深い庇が三方を廻る。二階のたちは高く、庭側の二面をガラス戸で開いて、奥の池の庭を室へ取り込む。一階は畳廊下に沿って大座敷と次の間を並べ、二階は十二畳の間を三室とる。建物の年代は昭和六年(一九三一年)である。
成功の見せ場
この座敷が建つころ、その施主は薬酒の処方を、海を越えて広がる財へと数十年かけて育て上げていた。ここは、その成功を客に示す場だった。唐破風の玄関、廻る庇、高く光に満ちた二階の間は、もてなしの建築であり、一言も語らずに格を伝える設えで客を迎えるためのものである。
登録では、屋敷の他の建物と同じく歴史的景観への寄与が挙げられている。主屋の背後の素朴な実働の蔵と合わせて読むと、事業がみずからをどう見せたかが見えてくる。表に商い、背後に製造、そしてここ、庭の縁で、大切な客へ向けた顔である。庭そのものは、遠方から運んだ溶岩や名石を配して造られた。
見学にあたって
離れ座敷と庭園は一体で公開され、見学を受け付ける主屋を通って入る。内部の見学では、大座敷、ガラス戸で庭に開く座敷、外からは想像しにくい高い二階の空間を見ることができる。
ここで一つ、実際的な注意がある。庭園と離れ座敷は積雪期、おおよそ十二月から三月にかけて閉鎖される。この一角を訪ねるなら、暖かい半年に合わせるのがよい。敷地は長岡市の所有で、土曜・日曜・祝日に公開される。
Q&A
- 唐破風とは何ですか。
- 東面の入口に見られる、うねる曲線の破風です。古くから格を伝える建物に用いられてきた形で、この座敷が客を迎えるための建物であることを示します。
- 離れ座敷は何のための建物ですか。
- もてなしのための建物で、一階に大座敷と次の間、二階に十二畳の間を三室備え、ガラス戸で開く庭を楽しめるよう設えられました。
- 座敷と庭園は見学できますか。
- はい、一体で公開され、主屋を通って入ります。ただし積雪期、おおよそ十二月から三月にかけて閉鎖される点にご注意ください。
- いつ建てられたものですか。
- 昭和六年(一九三一年)で、住まいの建物のなかでは最も新しく、サフラン酒の事業が最盛期にあったころに建てられました。
- 庭園はどのようなものですか。
- 座敷に面した庭は、遠方から運んだ溶岩や名石を配して造られ、池を備えます。暖かい季節にもっともよく見られます。
基本情報
| 名称 | 旧機那サフラン酒製造本舗離れ座敷 |
|---|---|
| 所在地 | 新潟県長岡市摂田屋四丁目2292-1他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(令和3年2月4日登録) |
| 年代 | 昭和6年(1931年) |
| 構造 | 木造2階建、瓦葺、建築面積約168㎡ |
| 員数 | 1棟 |
| 所有者 | 長岡市 |
| 公開 | 庭園とともに主屋経由で見学。12〜3月頃は閉鎖 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース — 旧機那サフラン酒製造本舗離れ座敷
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013521
- 摂田屋・宮内 機那サフラン酒
- https://settaya-miyauchi.jp/kinasaffron/
- nippon.com 醸造の町・長岡「摂田屋地区」
- https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/gu900174/
最終更新日: 2026.07.09