寶福寺鐘楼 ― 四方転びの柱で立つ文政元年の吹放ちの鐘楼

寶福寺鐘楼(ほうふくじしょうろう)は、岡山県総社市井尻野の臨済宗寺院・寶福寺で方丈の東南に建つ文政元年(1818年)の鐘楼で、2009年(平成21年)4月28日に国の登録有形文化財に登録された。

平面は一間四方で、壁を設けない吹放ちとする。切石積の基礎の上に建ち、屋根は南北に棟を通す入母屋造本瓦葺。面積は7.8平方メートルである。柱は四角い角柱で、4本がいずれも上に向かって内側へわずかに傾く「四方転び」に立てられている。

柱どうしは腰貫、内法貫、頭貫の3段の貫と台輪で固め、柱の上には三斗組の組物を置く。柱間の中央には蟇股を据え、軒は一軒の疎垂木とする。寶福寺鐘楼は、寶福寺の登録建造物24件のうち、2009年4月28日に登録された18件の一つで、登録番号は33-0213である。

登録の理由と価値 ― 緩い勾配が生む穏やかな姿

寶福寺鐘楼は「造形の規範となっているもの」として登録された。文化庁の解説は、妻を小さく、屋根の勾配を緩くして、穏やかな姿を見せている点に注目している。

入母屋造の屋根は、妻の三角形を大きく取れば屋根が高くそびえ、小さく取れば寄棟に近い落ち着いた形になる。寶福寺鐘楼は妻を小さくし、勾配も緩くしているため、屋根が低く横に広がって見える。四方転びの柱が裾を広げて建物を安定させる構造と相まって、どっしりとした安定感のある姿になっている。

四方転びは、柱を垂直ではなく内側に傾けて立てる技法で、柱と貫の接合部をすべて斜めに加工しなければならない。吹放ちの鐘楼は壁で固めることができないため、腰・内法・頭の3段の貫と台輪で柱をつなぎ、四方転びで踏ん張る形にしている。構造上の工夫と穏やかな外観とが一体になった建物である。

見どころ

寶福寺鐘楼を見るときは、少し離れて正面から柱の傾きを確かめたい。4本の柱が上に向かってすぼまり、裾が広がって見える。真横から見ても同じように傾いているのが四方転びの特徴で、2つの方向から見比べるとよくわかる。

次に柱の上部を見上げる。台輪の上に三斗組が並び、柱間の中央に蟇股が据えられている。蟇股は、蛙が脚を広げたような形の部材で、柱の上の組物の間を飾る。一軒の疎垂木は、垂木の間隔を広く取った簡素な軒で、屋根の緩やかな勾配とよく合っている。

寶福寺鐘楼は方丈の東南にあり、方丈の大屋根と並べて見ると、同じ入母屋造でも規模と勾配の違いで印象が大きく変わることがわかる。足元の切石積の基礎もあわせて見ておきたい。

見学の手引き

寶福寺鐘楼は屋外にあり、寶福寺の参拝時間(午前5時から午後5時)であれば外から見学できる。境内の拝観料はかからない。参拝者が鐘を撞けるという案内は、観光案内には出ていない。

仏殿から北へ進むと、方丈の東南に寶福寺鐘楼がある。基礎の上には上がらず、周囲から見学したい。

JR総社駅から徒歩で約30分、車なら岡山自動車道の岡山総社ICから約15分。境内には普通車75台分の駐車場がある。撮影に関する掲示は案内類に見当たらない。紅葉は例年11月中旬が見ごろとされる。

Q&A

Q寶福寺鐘楼はいつ建てられましたか。
A文政元年(1818年)の建築です。2009年(平成21年)4月28日に国の登録有形文化財に登録されました(登録番号33-0213)。
Q寶福寺鐘楼の「四方転び」とは何ですか。
A4本の柱をいずれも上に向かって内側へ傾けて立てる技法です。裾が広がり、建物が安定します。
Q寶福寺鐘楼の構造は?
A一間四方の吹放ちで、切石積基礎の上に建ち、入母屋造・本瓦葺の屋根を載せます。三斗組で、中備に蟇股を置きます。
Q寶福寺鐘楼の外観の特徴は?
A妻を小さく、屋根の勾配を緩くしているため、低く穏やかな姿に見える点です。面積は7.8平方メートルです。
Q寶福寺鐘楼の鐘は撞けますか。
A観光案内に参拝者が撞けるという記載はありません。参拝時間(午前5時から午後5時)内に外から無料で見学できます。

基本情報

名称寶福寺鐘楼(ほうふくじしょうろう)
所在地岡山県総社市井尻野1968-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2009年(平成21年)登録
員数1棟
寸法木造、瓦葺、面積7.8平方メートル
所有者宗教法人寶福寺
公開状況屋外のため見学可(拝観料なし)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)寶福寺鐘楼
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007674
文化遺産オンライン 寶福寺鐘楼
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/183886
総社市 国登録_宝福寺建造物群(方丈・庫裏・仏殿など全24件)
https://www.city.soja.okayama.jp/soshiki/26/2960.html
岡山観光WEB 宝福寺
https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_10821.html

最終更新日: 2026.09.10