屋号「清水屋」のもとになった水場
丸本酒造井戸及び石垣は、岡山県浅口市鴨方町本庄字吉宗2485にある大正初期の石造の井戸と切石積の石垣で、平成15年(2003年)12月1日に国の登録有形文化財に登録された。
屋敷の北端、水場にあたる位置にある。井戸の面積は1.8平方メートルで木造の上屋が付き、石垣は延長30メートル。井戸と石垣の二つが一組で1件として登録されている。
丸本酒造は慶応3年(1867年)の創業時、「清水屋」の屋号を名乗った。水がよいことに由来すると蔵元は伝えている。文化庁の解説も、この井戸を屋号のもとになった、醸造業に欠かせない存在と位置づける。酒の仕込みには大量の水が要り、水質が酒の味を左右する。造り酒屋にとって井戸は設備であると同時に、家業の出発点だった。
井桁組の井筒と、本瓦葺の上屋
井戸は石造で、石を井桁に組んで井筒を築く。井桁組は、角材状の石を「井」の字形に互い違いに積み上げる方法で、円筒形に石を積む井戸とは見た目がまったく違う。井戸口は四角になる。
井戸の上には1間四方の上屋をかける。切妻造・本瓦葺の小さな屋根で、雨や落ち葉が井戸に入るのを防ぐ。1間四方という小さな建物に、桟瓦よりも手間のかかる本瓦を葺いている点に、この井戸が屋敷の中で大切に扱われてきたことが表れている。
井戸の南東方、一段下がった田地との境には、切石積の石垣を築く。石垣は折れ曲がりながら延長30メートル続き、法面(斜面)を固める。水場の地盤を守り、田との高低差を処理するための土木構造物である。
醸造業に欠かせない存在として
登録は平成15年(2003年)12月1日、告示は同年12月25日、第39回登録である。登録番号は33-0076で、丸本家住宅及び丸本酒造の11件の中で最後の番号にあたる。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。
蔵元の沿革には、昭和7年(1932年)に西側の貯蔵庫を新築した際、井戸を掘ったところ良質な湧水を多く得たという記述もある。文化庁が大正初期とするこの丸本酒造井戸及び石垣と、昭和7年に掘られた井戸が同じものかどうかは、公開資料からは判断できない。屋敷には時期の異なる複数の井戸があった可能性がある。
建物ではない井戸と石垣が、座敷屋や蔵と並んで登録されていることには意味がある。酒造りに使う水をどこから得ていたのか、屋敷が田とどう接していたのか。その二つを示す構造物として、丸本酒造井戸及び石垣は屋敷構えの説明に欠かせない。
見学方法
丸本酒造井戸及び石垣は敷地の北端にあり、外の道から見通すことは難しい。見るなら、井桁に組んだ四角い井筒と本瓦葺の小さな上屋、そこから南東へ下がって田との境を折れ曲がる石垣の線に注目したい。
敷地内は常時公開されておらず、予約制の蔵見学も酒造りの工程に沿って案内されるため、この建物に立ち寄るとは限らない。蔵見学は2026年9月25日の確認時点で開催日が設けられていない。撮影について明文の規則は公表されていないので、見学の申込み時に確かめたい。敷地への行き方と見学の条件は丸本家住宅及び丸本酒造のページにまとめてある。掲載した内容は2026年9月25日時点で確認した。
Q&A
- 丸本酒造井戸及び石垣は見学できますか。
- 敷地の北端にあり、外の道からは見えにくい位置です。敷地内へは予約制の蔵見学の開催時に限って入れますが、2026年9月25日時点で開催日は設けられていません。
- 丸本酒造井戸及び石垣と屋号「清水屋」はどう関係しますか。
- 丸本酒造は創業時に「清水屋」の屋号を名乗りました。水がよいことに由来するとされ、文化庁はこの井戸を屋号のもとになった存在と位置づけています。
- 丸本酒造井戸及び石垣の井戸はどのような造りですか。
- 石を井桁に組んで井筒を築いた石造の井戸で、面積は1.8平方メートルです。上には1間四方、切妻造・本瓦葺の上屋がかかります。
- 丸本酒造井戸及び石垣の石垣はどこにありますか。
- 井戸の南東方、一段下がった田地との境にあります。切石積で、折れ曲がりながら延長30メートル続き、法面を固めています。
- 丸本酒造井戸及び石垣の指定区分と登録年を教えてください。
- 登録有形文化財(建造物)です。平成15年(2003年)12月1日登録、告示は同年12月25日、第39回登録で、登録番号は33-0076です。
基本情報
| 名称 | 丸本酒造井戸及び石垣(まるもとしゅぞういどおよびいしがき) |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県浅口市鴨方町本庄字吉宗2485 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成15年(2003年)12月1日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 石造井戸、面積1.8平方メートル、木造上屋付。石垣延長30メートル |
| 所有者 | 丸本酒造株式会社 |
| 公開状況 | 敷地北端の水場にあり、外の道からは見えにくい。見学は予約制の蔵見学の開催時のみ |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 丸本酒造井戸及び石垣(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003705
- 丸本酒造|岡山観光WEB(公益社団法人岡山県観光連盟)
- https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_11569.html
最終更新日: 2026.09.25