久金属工業旧社長室 ― スクラッチタイルの小さな洋館

久金属工業旧社長室は、大阪府大阪市西成区北津守にある瓶キャップ製造会社の本社工場に建つ木造平屋建の建物で、昭和12年(1937年)頃に建てられ、令和元年(2019年)の改修を経て、令和3年(2021年)2月4日に登録有形文化財となった。

技術室の南隣に位置し、建築面積は50平方メートル。正面に社長室を構え、その奥に旧食堂がつながる。

建物の名は社長室だが、1棟のなかに経営者の執務室と従業員の食堂が同居していたことになる。

久金属工業旧社長室が登録された理由

文化庁の解説文は、規模は小さいものの丁寧なつくりで、内装や家具もよく残っている点を挙げ、正面を格調ある外観と評している。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

会社の説明によると、室内には神棚の付いたタイムレコーダーが据えられている。会社はこれを、当時の従業員の動きを知る手がかりとして紹介している。

見どころ ― スクラッチタイルと鉄平石の正面

正面の壁はスクラッチタイル貼りで、会社によれば横張りにしている。腰には鉄平石を、こちらも横方向にそろえて張る。櫛目の刻まれたタイルと、薄く割れる板状の石という2種類の素材で、壁の上下に異なる肌理を与えている。

軒の高さにはスペイン瓦の小庇を回し、その下に上げ下げ窓を左右対称に並べる。平屋の小さな建物でありながら、正面だけを見れば洋館の玄関のような品格がある。

屋根材は資料によって記載が異なる。文化庁の登録データは鉄板葺とし、会社と大阪文化財ナビはスレート葺としている。本記事では文化庁のデータに従った。

久金属工業旧社長室の見学

久金属工業旧社長室は工場の敷地の内側にあり、ふだんは見られない。内装や家具、タイムレコーダーを見られるのは公開行事のときに限られ、2024年のツアーでは建物内部に撮影できない場所があると案内されていた。

正面のスクラッチタイルは、光が斜めから当たると溝の陰影が浮き出る。南側に接して建つ品質管理室は同じ50平方メートルながら下見板張で、2棟を並べると、人に見せる正面にどれだけ手をかけたかが一目で分かる。

Q&A

Q久金属工業旧社長室はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A昭和12年(1937年)頃の建築で、令和元年(2019年)の改修を経て、令和3年(2021年)2月4日に登録有形文化財(建造物)として登録されました。
Q久金属工業旧社長室の外観の特徴は何ですか?
A正面がスクラッチタイル貼り、腰が鉄平石張りで、軒にスペイン瓦の小庇を回し、上げ下げ窓を左右対称に並べています。
Q久金属工業旧社長室の奥には何がありますか?
A旧食堂がつながっています。1棟のなかに社長室と従業員の食堂が同居していました。
Q久金属工業旧社長室の室内には何が残っていますか?
A当時の内装と家具がよく残り、神棚の付いたタイムレコーダーも据えられています。
Q久金属工業旧社長室は見学できますか?
Aふだんは公開されていません。公開行事のガイドツアーで案内される場合があり、内部には撮影できない場所があります。

基本情報

名称久金属工業旧社長室
所在地大阪府大阪市西成区北津守3丁目52
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和3年(2021年)
員数1棟
寸法建築面積50㎡
所有者合名会社ヒサ・コーポレーション
公開状況通常非公開(公開行事の際に見学できることがある)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)久金属工業旧社長室
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013600
文化遺産オンライン 久金属工業旧社長室
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/516687
久金属工業株式会社 本社建造物
https://www.hisakinzoku.co.jp/structure/
大阪文化財ナビ 久金属工業株式会社
https://osaka-bunkazainavi.org/bunkazai/%E4%B9%85%E9%87%91%E5%B1%9E%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE
生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2024 久金属工業株式会社
https://ikenchiku.jp/ikefes2024/program/hisakin/

最終更新日: 2026.09.23