城下に時を告げた鐘楼
願正寺鐘楼は、佐賀県佐賀市呉服元町の願正寺にある明和5年(1768年)再建の鐘楼で、令和3年(2021年)10月14日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。本堂の南東に建ち、屋根は入母屋造・本瓦葺、建築面積は14平方メートル。文化庁の解説は、佐賀城下の時鐘として用いられたと伝わる、木柄の太い重厚な鐘楼と評している。
鐘楼の歴史は現在の建物より古い。寺の年表によれば最初の鐘楼は元禄9年(1696年)に建ち、明和5年に建て直された。そのとき基壇は建立時のものがそのまま使われたという。つまり、上に載る木造部分は18世紀後半のもの、足元の石積みは17世紀末のもの、という二層の時間を持つ建物である。寺の年表は平成6年(1994年)の改修も伝えている。
佐賀市の文化財情報によれば、願正寺の鐘が城下の時鐘として使われ始めたのは元禄9年である。佐賀城本丸の時太鼓が藩の役人に出勤の刻限を知らせたのに対し、願正寺の鐘は城下の町人に時刻を告げたとされる。時鐘の制度は昭和3年(1928年)4月に廃止されたと、同じ資料は記している。
赤石の基壇と袴腰
願正寺鐘楼は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。境内の南東の角で、参道から見た寺の景観を形づくる要素として評価されたことになる。
足元から見ていくと、まず基壇が目に入る。赤みを帯びた石を切石にして、あえて目地をそろえない乱積みで積み上げ、下へ向かって裾を広げている。寺の年表が伝える「建立時のまま」の基壇がこれにあたる。
その上の下層は、裾を広げて覆った袴腰である。上層は丸柱を長押で締め固め、柱の上に三斗を置いて桁を受け、柱間には蟇股を入れる。四周には高欄付きの縁がめぐり、その縁を木鼻のような形に刻んだ板状の持送りが下から支える。
全体に部材が太い。とくに上層の丸柱と組物は、14平方メートルという小さな平面に対して重く見えるほどで、それが入母屋の大きな屋根を受け止めている。文化庁が「重厚」と評したのは、この木柄の太さである。
願正寺鐘楼の見どころ
鐘楼は四方から見られる。基壇の石積みを確かめるなら、裾の広がりがよく分かる斜めの位置から見るとよい。
上層の縁を下から見上げると、板状の持送りが等間隔に並び、高欄付きの縁を持ち上げている様子が分かる。袴腰の上で建物が一段外へ張り出す、その境目がこの鐘楼の輪郭を決めている。
鐘が実際につかれるのを聞く機会もある。寺の令和8年(2026年)の予定表では、12月31日の除夜会で午後11時30分から除夜の鐘をつくことになっている。城下に時を知らせていた鐘楼が、年に一度、ふたたび町に音を響かせる晩である。
願正寺鐘楼の見学方法
願正寺鐘楼の外観は、境内から自由に見学できる。拝観料の定めは寺の公式サイトに見当たらない。上層へ上がったり鐘をついたりできるという案内も出ていない。
外観の撮影を制限する案内は公式サイトに見当たらないが、除夜会など行事の最中は参拝者の妨げにならないよう配慮したい。境内への行き方と参拝の条件は願正寺のページにまとめてある。
Q&A
- 願正寺鐘楼はいつ建てられましたか?
- 現在の建物は明和5年(1768年)の再建です。寺の年表によれば最初の鐘楼は元禄9年(1696年)に建ち、再建の際も基壇は建立時のものが使われました。
- 願正寺鐘楼の鐘は佐賀城下の時鐘だったのですか?
- そう伝わっています。佐賀市の文化財情報によれば、元禄9年から城下の町人に時刻を知らせる時鐘として使われ、昭和3年(1928年)4月に廃止されました。
- 願正寺鐘楼の鐘の音を聞くことはできますか?
- 大晦日の除夜会で聞くことができます。寺の令和8年の予定表では、12月31日の午後11時30分から除夜の鐘をつくことになっています。
- 願正寺鐘楼の建築上の特徴は何ですか?
- 赤い石の切石を乱積みにした裾広がりの基壇、袴腰の下層、長押で固めた丸柱と三斗・蟇股の上層、木鼻状の板持送りで支えた高欄付きの縁です。部材が太く重厚な造りです。
- 願正寺鐘楼は見学できますか?
- 外観は境内から自由に見られます。拝観料の定めは公式サイトに見当たりません。上層へ上がったり鐘をついたりできるという案内はありません。
基本情報
| 名称 | 願正寺鐘楼(がんしょうじしょうろう) |
|---|---|
| 所在地 | 佐賀県佐賀市呉服元町182他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)、登録番号41-0124、登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」 |
| 指定年 | 令和3年(2021年)10月14日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積14平方メートル |
| 所有者 | 願正寺(宗教法人) |
| 公開状況 | 外観は境内から見学可、拝観料の定めなし。上層公開の案内なし |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):願正寺鐘楼
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014122
- さがの歴史・文化お宝帳(佐賀市教育委員会):願正寺
- https://www.saga-otakara.jp/search/detail.html?cultureId=478
- さがの歴史・文化お宝帳(佐賀市教育委員会):願正寺 本堂、貴賓室、大広間、大玄関、鐘楼、山門 計6件
- https://www.saga-otakara.jp/search/detail.html?cultureId=5440
- 佐賀市公式ホームページ:佐賀市都市景観重要建築物等 願正寺
- https://www.city.saga.lg.jp/main/4796.html
- 宝海山願正寺 公式サイト:本堂修復耐震の経緯について
- https://gansyoji.com/archives/2815
- 宝海山願正寺 公式サイト:願正寺のご案内
- https://gansyoji.com/guidance
最終更新日: 2026.09.24