永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀とは
永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀は、埼玉県川口市本町一丁目にある大正前期(1912年から1918年)の門と塀で、平成31年(2019年)3月29日に登録有形文化財となった。門は敷地の東面南寄りに開き、塀は敷地の東面と北面を区切る。門と塀を合わせて1基として登録されている。
種別は建築物ではなく「その他工作物」である。同じ屋敷の7件のうち、この1件だけが建物ではない。人が入る空間を持たず、敷地の境を引くことだけを役目とする構築物として登録されている。
塀は煉瓦造で延長75メートル。高さは2.7メートルあり、イギリス積で積む。上端には二段に張り出した蛇腹を回し、その上に桟瓦葺葺の屋根を載せる。門は石造で、文化庁の解説は切石の組積造風とし、門柱の仕上げをモルタルの洗い出しと記す。
登録の理由と価値
永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、広大な屋敷構えを格式高く整えていると述べる。7件のうちで、この評価がいちばん字義どおりに当てはまる。塀は屋敷の輪郭そのものであり、通りを歩く人が最初に、そしてほとんどの場合それだけを見るものだからである。
延長75メートルという数字を具体に置き換えてみたい。高さ2.7メートルの煉瓦壁が75メートル続くと、壁面はおよそ200平方メートルになる。同じ敷地の建物で最大の洋館が建築面積188平方メートルであることを思えば、この塀は屋敷の中でも屈指の量を持つ構築物ということになる。
塀の上に瓦屋根を載せている点も見逃せない。煉瓦の壁体に日本の瓦屋根という組み合わせは、屋敷の内側で洋館と和館が並んでいる構成を、境界の上でもう一度なぞっている。二段の蛇腹という洋風の要素と桟瓦葺という和の要素が、1本の塀の上端で接する。
見どころ
この屋敷で唯一、公道から間近に見られるのが永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀である。ほかの6棟が塀の内側に隠れるのに対し、これだけは正面から観察できる。
まず煉瓦の目地を見たい。イギリス積は、長手だけの段と小口だけの段を交互に積み上げる方法で、壁面を横に見ていくと段ごとに表情が切り替わる。同じ敷地の旧発電所はフランス積で、こちらは1つの段の中で長手と小口が交互になる。塀で積み方の型を覚えてから敷地の奥へ目を向けると、違いが分かりやすい。
上端の処理も観察の対象になる。壁面がまっすぐ立ち上がったあと、二段の蛇腹が階段状に張り出し、その上に桟瓦の屋根が載る。蛇腹は雨水を壁面から離すための実用でもあり、同時に壁の終わりに水平線を引く意匠でもある。
門柱は洗い出しの肌を確かめたい。洗い出しはモルタルが固まりきる前に表面を洗い、中の骨材を露出させる仕上げで、近づくと粒が見える。石を積んだように見せながら、実際にはモルタルで仕上げているという手つきは、同じ敷地の土蔵の腰にも使われている。
なお門の間口については一次資料の中に食い違いがある。文化庁データベースの構造及び形式等は間口2.9メートルとするが、同じデータベースの解説文は門柱を間口3.6メートルで立てると記す。本記事は両方を併記し、どちらかに丸めることはしない。
見学方法
永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀は個人の所有物だが、公道に面しているため外側からの観察は妨げられない。門の内側に入ることはできない。所有者が運営する紹介サイトにも見学の受け付けや公開日の案内はない(2026年9月13日確認)。
見るなら東面である。塀は敷地の東面と北面を区切るので、道路に沿って歩けば煉瓦の面が続く。目地を確かめるには塀の近くに寄り、全体の長さを実感するには道路の反対側から見通すのがよい。日が高い時間より、朝夕の斜めの光のほうが積み目と蛇腹の陰影が出る。
撮影を禁じる掲示は確認できなかった。塀と門を対象にする限り公道からの撮影に支障はないが、門扉の内側や住宅の窓へレンズを向けるのは控えたい。塀の前は生活道路でもあるので、長く立ち止まらないようにしたい。
敷地全体の行き方と見学の条件は、永瀬孝男家住宅のページにまとめてある。
Q&A
- 永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀は公道から見られますか。
- 見られます。敷地の東面と北面に沿って公道があり、7件のうちこれだけが間近に観察できます。門の内側には入れません。
- 永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀の煉瓦はどう積まれていますか。
- イギリス積です。長手だけの段と小口だけの段を交互に積みます。同じ敷地の旧発電所はフランス積で、積み方が異なります。
- 永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀の塀はどれくらいの長さですか。
- 延長75メートル、高さ2.7メートルです。上端に二段の蛇腹を回し、その上に桟瓦葺の屋根を載せています。
- 永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀の門の間口はいくつですか。
- 一次資料に食い違いがあります。文化庁データベースの構造及び形式等は2.9メートル、同じデータベースの解説文は3.6メートルとしています。
- 永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀はなぜ1基と数えるのですか。
- 建築物ではなく「その他工作物」として、門と塀を合わせて1件で登録されているためです。同じ屋敷の7件のうち、建物でないのはこれだけです。
基本データ
| 名称 | 永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀(ながせたかおけじゅうたくおもてもんおよびれんがべい) |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県川口市本町一丁目21-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 11-184 |
| 指定年 | 平成31年(2019年)3月29日登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 門 石造、間口2.9メートル/塀 煉瓦造、延長75メートル、高さ2.7メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開。外観のみ公道から。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 永瀬孝男家住宅表門及び煉瓦塀(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012698
- 川口市 指定文化財一覧(令和8年7月9日現在)
- https://www.city.kawaguchi.lg.jp/material/files/group/185/R80709cul.pdf
- 川口の文化財(川口市教育委員会文化財課)
- https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/04010/040/2346.html
最終更新日: 2026.09.12