酒が検められた部屋
清酒蔵の西面南寄りに接続して、酒の検査を担った小さな平屋が建つ。その名の「試験室及び受検室」は二つの機能を指す。藤居本家が自らの製品を確かめる試験の場と、外部の検査に酒を供する受検の場である。酒税の制度のもとでは醸した酒の検査が求められ、こうした専用の空間でその作業が行われた。建築面積は九〇平方メートル、内部は製品検査のための部屋などに間仕切られている。
建設は接続する土蔵群と同じ大正一二年(一九二三年)頃で、大正末の性格を共有する。屋根は入母屋造、桟瓦葺で、妻側から入る妻入とする。
意図された西正面
小規模な建物でありながら、西面は異例に重厚に扱われている。柱を塗り込めず見せる真壁造とし、白漆喰で仕上げ、下部の壁には腰板を張る。入母屋屋根の妻は塗り込め、そこに虫籠窓を穿つ。虫籠窓は塗り込めた縦格子の窓で、この地方の町家に古くから見られる意匠である。実用の作業室に求められる以上に、格式ある正面がここに成立している。
その丁寧さにこそ意味がある。文化庁は平成二〇年(二〇〇八年)一〇月、歴史的景観への寄与を理由にこの建物を登録した。整えられた西正面は、両側の漆喰塗りの土蔵と歩調をあわせ、酒造場が街道へ向ける整った表構えの一部をなす。
現地での見方
藤居本家は天保二年(一八三一年)以来「旭日」を醸してきた蔵元であり、この検査棟も展示物ではなく稼働する酒造場の一部である。無料の蔵見学が予約制で行われ、この建物は寄りかかる大きな清酒蔵との関係のなかで見るとよい。街道側にあたる西から近づくと、漆喰の妻面と虫籠窓がよく見える。
小さな検査棟と隣の大きな土蔵が、同じ白漆喰で仕上げられていることに注目したい。実用の付属屋が、一続きの練られた立面の一部として読める。かつては一季の酒の出来が、綿密で細やかな作業に見合う広さのこの部屋で検められた。
Q&A
- この建物では何が行われていましたか。
- できあがった酒を検める部屋が置かれていました。蔵自身の試験に加え、名称からは酒税制度のもとでの受検も行われたとうかがえます。
- 虫籠窓とは何ですか。
- 塗り込めた縦格子を密に並べた窓で、この地方の伝統的な町家に見られる意匠です。
- なぜ小さな建物がこれほど格式高く造られているのですか。
- 西正面が街道に面し、酒造場の表構えの一部をなすためです。両側の土蔵にそろえて白漆喰で仕上げられています。
- 建設と登録はいつですか。
- 大正一二年(一九二三年)頃の建設で、平成二〇年(二〇〇八年)一〇月に、歴史的景観への寄与を理由に登録有形文化財となりました。
- どこから見るのがよいですか。
- 予約制の無料蔵見学で、西側からご覧ください。漆喰の妻面と虫籠窓が清酒蔵とともに視野に入ります。
基本情報
| 名称 | 藤居本家東蔵試験室及び受検室(ふじいほんけひがしぐらしけんしつおよびじゅけんしつ) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県愛知郡愛荘町長野601 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 平成20年(2008年)10月23日 |
| 員数 | 1棟 |
| 構造 | 木造平屋建、入母屋造妻入桟瓦葺、建築面積約90㎡ |
| 年代 | 大正12年(1923年)頃 |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 交通 | JR稲枝駅からタクシー約6分/近江鉄道愛知川駅から徒歩約15分 |
| 所有・運営 | 藤居本家(造り酒屋) |
参考文献
- 蔵元 藤居本家 — 公式サイト
- https://www.fujiihonke.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース — 藤居本家東蔵試験室及び受検室
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007370
- 滋賀県観光情報 — 藤居本家
- https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/1075/
最終更新日: 2026.07.04