醪を仕込む蔵
仕込蔵は敷地北辺の中央、道路脇の水路に妻を向けて、清酒蔵と並んで建つ。ここは醪(もろみ)を仕込む蔵である。蒸米、米麹、酒母、水を合わせて発酵させる作業がこの蔵で行われ、日本の酒造りでいう三段仕込みの手順に従って、数日かけて仕込みが積み重ねられる。藤居本家は鈴鹿山系の伏流水を仕込み水とし、水と米がタンクのなかで最初に出会うのがこの場である。
蔵は桁行約三二メートル、梁間約一二メートルの大きな建物で、土蔵造、寄棟造桟瓦葺とする。建設は大正一二年(一九二三年)頃である。
土壁と立ち上がる架構
内部の構造は明快で力強い。柱を建て登らせて梁を直接受ける形式をとり、大きな荷重のかかる開放的な仕込みの場に適した造りとなっている。外壁は漆喰仕上げで、風雨をしのぎ内部の温度を安定させる。醪をゆっくりと均一に発酵させるうえで、この温度の安定は重要である。水路側の妻面には戸をたて、矩形の窓を配する。
文化庁は平成二〇年(二〇〇八年)一〇月にこの建物を登録した。その価値は、形づくる歴史的景観にある。長い漆喰の壁、並び建つ二棟の土蔵、そして水路の石積が一体となって、大正期の稼働する酒造場の姿を保っている。
訪ねるにあたって
天保二年(一八三一年)に創業し「旭日」で知られる藤居本家の仕込みは寒い時季、例年一一月から翌三月初めにかけて行われ、仕込蔵はその季節に最も活気づく。無料の蔵見学が予約制で行われ、この蔵で醪を起こす鈴鹿山系の伏流水、その仕込み水そのものを試飲できる機会も設けられてきた。仕込みの時季を外しても、水路沿いの外観はゆっくり眺める価値がある。
水路脇の道を歩き、蔵が石積の水路と接する様子を見てほしい。上には漆喰の壁、下には切石の護岸、そこに妻面の戸と窓が構成に組み込まれている。飾り気のない作業の表構えであり、その飾らなさこそ、登録が守ろうとするものである。
Q&A
- 仕込蔵とは何ですか。
- 醪(もろみ)を仕込む蔵です。蒸米、麹、酒母、水を合わせ、発酵させて酒のもととする作業が行われます。
- 三段仕込みとは何ですか。
- 醪の原料を一度に加えず、数日かけて段階的に仕込む方法です。発酵を安定させるために行われます。
- どのような構造ですか。
- 土蔵造の二階建で、桁行約三二メートル、梁間約一二メートル、寄棟造桟瓦葺、外壁は漆喰仕上げです。
- なぜ水路が取り上げられるのですか。
- 蔵が道路脇の石積水路に面し、両者が一体となって、登録が認める歴史的景観を形づくっているためです。
- 稼働する様子はいつ見られますか。
- 仕込みの時季、例年一一月から翌三月初め頃です。無料の蔵見学は予約制で通年行われていますので、時期は事前にご確認ください。
基本情報
| 名称 | 藤居本家東蔵仕込蔵(ふじいほんけひがしぐらしこみぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県愛知郡愛荘町長野601 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 平成20年(2008年)10月23日 |
| 員数 | 1棟 |
| 構造 | 土蔵造2階建、寄棟造桟瓦葺、桁行約32m・梁間約12m、建築面積約380㎡ |
| 年代 | 大正12年(1923年)頃 |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 交通 | JR稲枝駅からタクシー約6分/近江鉄道愛知川駅から徒歩約15分 |
| 所有・運営 | 藤居本家(造り酒屋) |
参考文献
- 蔵元 藤居本家 — 公式サイト
- https://www.fujiihonke.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース — 藤居本家東蔵仕込蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007368
- たのしいお酒.jp — 藤居本家「旭日」
- https://tanoshiiosake.jp/5550
最終更新日: 2026.07.04