石塔寺三重塔とは
石塔寺三重塔は、滋賀県東近江市石塔町の石塔寺境内に立つ奈良時代前期の石造三重塔で、明治40年(1907年)8月28日に指定され、現在は国の重要文化財となっている。寺の本堂裏にある丘の頂に立ち、寺伝にちなんで「阿育王塔(あしょかおうとう)」とも呼ばれる。
高さは約7.5メートル。花崗岩の石材を、基礎、塔身、屋根の順に積み上げて、三重塔の姿を石で表している。最上部の相輪は当初のものが失われ、いま頂に載っているのは後の時代に補われたものである。
文化庁の国指定文化財等データベースは、石塔寺三重塔の年代を奈良前期(710〜793年)としている。木造の塔と違って中は石の塊で、人が入る空間はない。
石塔寺三重塔が重要文化財とされる理由
第一の理由は古さと大きさである。石塔寺三重塔は奈良時代前期の作とされ、石造の三重塔としては日本で最も古く、最も大きいとされる。
第二に、国内に比べられる類例が見当たらない。滋賀県文化財保護協会の解説によれば、塔の各部の特徴は韓国の旧百済地域にある定林寺五重塔や弥勒寺石塔に近く、百済の影響を強く受けた石造物とみられている。塔の立つ一帯は古代の蒲生野にあたり、天智2年(663年)の白村江の戦いののち、百済から渡ってきた人々が住んだ土地でもある。造立に渡来系の人々が関わった可能性が論じられるのは、そのためである。
指定の時期も早い。石塔寺三重塔は明治40年(1907年)、現在の文化財保護法より前の古社寺保存法のもとで指定を受け、昭和25年(1950年)に文化財保護法が施行されてからは重要文化財として扱われている。
石塔寺三重塔の見どころ
石段を登りきったところでいったん足を止め、全体の輪郭を見たい。三つの屋根はどれも厚く、上の面がゆるやかにふくらむ。屋根のあいだの塔身は縦に長く、木造の塔のような深い軒はない。輪郭は簡潔で、遠目にも石の重さがそのまま伝わる。
近づいたら、いちばん下の塔身を横から見てほしい。上の二層の塔身は1つの石だが、初重だけは2枚の石を合わせてつくられている。重い屋根を載せても揺るがないようにする工夫とされ、側面に回ると継ぎ目の線を確かめられる。
頂の相輪は後補である。下の屋根や塔身と並べて、石の肌合いや風化の具合に違いが見えるか、目で比べてみるのもよい。
塔のまわりには、小さな五輪塔と石仏が数万基ともいわれるほど隙間なく並ぶ。後の時代の人々が供養のために納めた石の群れのなかから、奈良時代の塔が一段高く伸びている。この取り合わせも、石塔寺三重塔を訪ねる体験の一部である。
石塔寺三重塔の見学方法
石塔寺三重塔は屋外にあり、寺の拝観時間内であれば丘の上の平場で間近に見られる。中は石の塊なので、内部の公開はない。周囲の小さな石塔や石仏のあいだを歩くことになるため、石造物に触れたり寄りかかったりしないよう気をつけたい。
正面だけで終わらせず、側面からも眺めておきたい。初重の塔身を2枚の石で組んだ様子は、横に回ったときにいちばんよく分かる。撮影の可否について寺の公式な案内は確認できなかったので、気になる場合は受付で尋ねるのが確実である。境内への行き方と拝観料は石塔寺のページにまとめてある。
Q&A
- 石塔寺三重塔はいつ、誰がつくったのですか?
- 奈良時代前期の作とされます。造立者を記した記録はありません。各部の特徴が百済の石塔に近いことから、白村江の戦い(663年)ののちに蒲生野へ移り住んだ百済系の人々が関わった可能性が指摘されています。インドの阿育王の塔とする話は寺伝です。
- 石塔寺三重塔の高さはどのくらいですか?
- 約7.5メートルです。石造の三重塔としては日本で最も大きいとされます。紹介する資料によって数値に少し差があります。
- 石塔寺三重塔はなぜ「阿育王塔」と呼ばれるのですか?
- 阿育王が世界に撒いた8万4千の塔のうちの1基が近江に埋まっていると平安時代の僧・寂照が聞き、掘り当てられたのがこの塔だという寺伝によります。寺の山号「阿育王山」も同じ伝えに由来します。
- 石塔寺三重塔の相輪は当初のものですか?
- いいえ。当初の相輪は失われており、現在の相輪は後の時代に補われたものです。基礎・塔身・屋根は奈良時代前期のものとされています。
- 石塔寺三重塔は見学できますか?拝観時間と拝観料は?
- 見学できます。屋外にあり、拝観時間の午前9時から午後5時のあいだに丘の上で間近に見られます。拝観料は大人400円、小人100円です。内部の公開はありません。
基本情報
| 名称 | 石塔寺三重塔(阿育王塔) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県東近江市石塔町(石塔寺境内) |
| 指定区分 | 重要文化財 |
| 指定年 | 明治40年(1907年) |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 高さ約7.5メートル |
| 所有者 | 石塔寺 |
| 公開状況 | 屋外。拝観時間内に見学可(拝観料が必要)、内部公開なし |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース:石塔寺三重塔
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1479
- 滋賀県文化財保護協会:新近江名所圖会第294回 渡来人の足跡-東近江市石塔寺
- https://www.shiga-bunkazai.jp/shigabun-shinbun/best-place-in-shiga/%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%B1%9F%E5%90%8D%E6%89%80%E5%9C%96%E7%B5%B5%E7%AC%AC294%E5%9B%9E-%E6%B8%A1%E6%9D%A5%E4%BA%BA%E3%81%AE%E8%B6%B3%E8%B7%A1%EF%BC%8D%E6%9D%B1%E8%BF%91%E6%B1%9F%E5%B8%82%E7%9F%B3/
- 滋賀県観光情報(びわこビジターズビューロー):石塔寺
- https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/536/
- 東近江市観光協会:石塔寺(いしどうじ)
- https://www.higashiomi.net/media/miru/ishidoji
- 日本石材センター「お墓きわめ」:一度は見ておきたい重要文化財シリーズ・滋賀の旅編・その5
- https://ohakakiwame.jp/column/memorial-service/cultural-property-shiga-part5.html
最終更新日: 2026.10.06