1棟の本殿 ― 1961年に国宝

大笹原神社本殿は、滋賀県野洲市大篠原にある室町時代中期の建造物で、1901年(明治34年)8月2日に重要文化財となり、1961年(昭和36年)4月27日に国宝に指定された。員数は1棟、所有は大笹原神社である。

重要文化財から国宝まで60年が経っている。青井阿蘇神社の75年、木造五智如来坐像の109年に次ぐ長さである。

構造は桁行三間、梁間三間、一重、入母屋造、向拝一間、檜皮葺である。年代の欄は1414年、解説は応永二十一年の建立とする。

神社の名と地名で、同じ音の字が違う

名称と所在地を並べると、字が食い違う。

名称は大笹原神社本殿である。所在地は滋賀県野洲市大篠原とされる。

神社の名は笹、地名は篠である。どちらも「ささ」と読むが、字が違う。

梨地螺鈿金荘餝劔では、餝と劔という異体字が名称に使われていた。あれは同じ語を書き表す字の違いである。

本件は異体字ではない。笹と篠は別の字であり、意味も違う。それが同じ読みで、社名と地名に分かれている。

記録は理由を書いていない。本稿は文化庁の記録どおり、名称に笹、所在地に篠を用いる。

小規模であることを断ったうえで、最上級が使われる

評価の書き方に特徴がある。

小規模な神社本殿であるが、細部手法が特に優秀で、欄間や戸などの意匠も美しい、とある。

まず小さいことが述べられ、それでもと続く。大きさではないところに価値を置いている。

不動院金堂は、中世禅宗仏殿で最大規模を誇り、と大きさを挙げていた。薙刀〈銘備前国長船住人長光造〉は、消耗品であるため残りにくいと事情を述べた。

本件は、小さいことを認めたうえで細部を評価する。

結びも独特である。中世の神社建築としてもっとも傑作の一である、とある。もっともという最上級と、一という限定が一つの文に同居している。

「もっとも傑作の一」という言い方

最上級の使われ方を並べておきたい。

埴輪武装男子立像は、東日本では武人埴輪が多く発見されているが、最も優れた作品、とされた。範囲を示したうえでの最上級である。

明王院本堂は、鎌倉時代本堂の優作のひとつであって、とされた。複数のうちの一つという限定である。

浄土寺本堂は、年代の確証あるものとしては最古の例に属する、とされた。条件を付けたうえでの最古である。

大笹原神社本殿は、もっとも傑作の一である、と書かれる。最上級と限定が同時に置かれている。

中世の神社建築という範囲は示されているが、もっともと一が並ぶ書き方は他になかった。本稿は記録どおりに引く。

参拝

所在は滋賀県野洲市大篠原で、所有は大笹原神社である。境内に建つ建物であり、外観は参拝の際に見ることができる。

寸法は桁行三間、梁間三間である。園城寺新羅善神堂も三間と三間だった。あちらは流造、本件は入母屋造で、屋根の形が違う。

屋根の材も違う。園城寺新羅善神堂は檜皮葺で本件も檜皮葺だが、明王院本堂や浄土寺本堂は本瓦葺である。

評価に挙げられた欄間や戸は、建物の細部にあたる。全体の規模ではなく、こうした部分の意匠が価値とされている。

関連作品には、同じ滋賀県野洲市の御上神社本殿や御上神社拝殿が並ぶ。内部の拝観については神社の定めによる。訪問前に確認したい。

Q&A

Q大笹原神社本殿はいつ指定されましたか。
A1901年(明治34年)8月2日に重要文化財、1961年(昭和36年)4月27日に国宝へ指定されました。あいだは60年で、員数は1棟、所有は大笹原神社です。
Q神社の名と地名で字が違うのはなぜですか。
A記録は理由を書いていません。名称は大笹原神社、所在地は野洲市大篠原とされ、どちらも「ささ」と読みますが笹と篠で字が違います。本稿は記録どおりに用いています。
Qいつ建てられたのですか。
A年代の欄は1414年とし、解説も応永二十一年の建立とします。和暦と西暦が一致しています。時代は室町中期です。
Q何が評価されているのですか。
A文化庁は「小規模な神社本殿であるが、細部手法が特に優秀で、欄間や戸などの意匠も美しい」と記します。大きさではなく細部の手法に価値が置かれています。
Q「もっとも傑作の一」とはどういう意味ですか。
A文化庁の記録の言葉です。「中世の神社建築としてもっとも傑作の一である」とあり、最上級と「一つ」という限定が同じ文に置かれています。本稿は記録どおりに引いています。

基本情報

名称大笹原神社本殿(おおささはらじんじゃほんでん)/所在地の表記は大篠原で字が違う
所在地滋賀県野洲市大篠原
指定区分国宝(建造物・宗教建築)
指定年1901年(明治34年)8月2日 重要文化財/1961年(昭和36年)4月27日 国宝
員数1棟
寸法桁行3間、梁間3間、一重、入母屋造、向拝1間、檜皮葺。年代の欄は1414年で、解説も同じ年を元号で記す。時代は室町中期
所有者大笹原神社
公開状況境内に建つ建物で、外観は参拝の際に見ることができる。内部の拝観は神社の定めによる

参考文献

文化遺産オンライン 大笹原神社本殿
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/189283
滋賀県神社庁 大笹原神社
https://www.shiga-jinjacho.jp/
野洲市 文化財
https://www.city.yasu.lg.jp/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.05