大原谷の祇園社から大鳥神社へ

大鳥神社は、滋賀県甲賀市甲賀町鳥居野にある神社で、境内に建つ大正8年(1919年)建築の楼門や拝殿など社殿7棟が、平成14年(2002年)に国の登録有形文化財に登録された。社伝では、平安時代の元慶6年(882年)に勧請されたとされる。

主祭神は素盞鳴命(すさのおのみこと)で、大己貴命と奇稲田姫命を相殿に祀る。神社の公式サイトによれば、伊賀国阿拝郡河合郷の篠山嶽から大原中へ迎えられ、のちに現在の鳥居野へ移された。神宮寺は大原山河合寺と称し、比叡山延暦寺の別坊が36院あったとも伝わる。

織豊時代には河合祇園社とも大原谷の祇園社とも呼ばれ、牛頭天王の名でも知られた。氏子のあいだでは、いまも「てんのうさん」で通じる。

文化庁の解説は、鎌倉時代からこの社が佐々木氏の尊崇を集めたと記す。文禄4年(1595年)には花奪神事に豊臣秀吉のお墨付きが与えられたと伝わり、元禄2年(1689年)には徳川綱吉の生母桂昌院が修繕料として山年貢5石8斗を寄せた。現在の社名は明治元年(1868年)の令達によるもので、旧大原荘の「大」と鳥居野の「鳥」を組み合わせている。

大正の火災と再建

大鳥神社のいまの社殿群は、火災からの復興で生まれた。文化庁の解説によると、大正4年(1915年)の火災のあと、本殿を除く社殿が建て直されている。登録された7棟の建築年は、いずれも大正8年(1919年)とされる。

神社の公式サイトは、火災を大正5年(1916年)4月、復興を大正9年(1920年)と記しており、文化庁の記載とそれぞれ1年ずれる。このページでは年代を文化庁のデータベースに合わせた。公式サイトによれば、焼けたのは拝殿の一部と楼門、回廊、神楽殿、社務所、それに河合寺などで、再建は氏子の総意で進められた。

火を免れた本殿は、文化庁の解説では貞享2年(1685年)の建立である。三間社流造で、甲賀市の文化財になっている。大正の7棟は、江戸時代の本殿を中心に置いたまま、その前と周囲に新しく組み上げられた。

境内を歩く順序

参道の入口に鳥居が立ち、その先で大橋川を石造の太鼓橋が渡る。公式サイトによれば架設は延享元年(1744年)、作者は京都の石工杉本文右衛門で、この橋も甲賀市の文化財である。橋を越えると、朱塗りの楼門が正面に現れる。

楼門の左右からは透塀がのびて、社殿の区画を囲い込む。その中心に建つのが拝殿で、東に神楽殿、西に神饌所が向かい合う。神饌所の北には神輿蔵がある。

拝殿の奥が祝詞殿(中門)で、ここから左右に折れる透塀が本殿のまわりを閉じる。社務所だけは透塀の外、社殿の南西にあり、東を向いて建っている。境内社として八幡神社、日吉神社、西宮神社も祀られている。

公式サイトによると、大鳥神社の境内地は10,142坪あり、甲賀市の名勝となっている。本殿から北西へ50メートルあまりの一帯には方形の土塁が残る。移転前の社地なのか、河合寺の遺構なのか、中世の城跡なのかは、まだ分かっていない。

登録された7棟

大鳥神社の登録有形文化財は、楼門、拝殿、祝詞殿(中門)、神楽殿、神饌所、神輿蔵、社務所の7棟である。登録番号は25-0193から25-0199までの連番で、平成14年(2002年)6月25日に登録され、同年7月16日に告示された。登録基準は7棟とも「造形の規範となっているもの」。

規模の幅は大きい。建築面積は祝詞殿(中門)の12平方メートルがもっとも小さく、社務所の177平方メートルがもっとも大きい。屋根も一様ではなく、楼門・拝殿・祝詞殿は檜皮葺、神楽殿と神饌所は銅板葺、神輿蔵は本瓦葺、社務所は桟瓦葺で葺かれている。

神社の公式サイトは、朱塗りの楼門と回廊を京都の祇園社西門にならったものと説明している。各棟の構造と見どころは、それぞれのページで扱う。

参拝と行き方

大鳥神社の最寄り駅はJR草津線の甲賀駅で、公式サイトは駅から徒歩20分と案内している。甲賀市コミュニティバスの大原線には「大鳥神社」停留所があり、甲賀駅北口から5分ほどで着く。ただし1日の便数が少なく、運休日もあるので、市の時刻表を確かめてから出かけたい。

車なら、新名神高速道路の甲南インターチェンジか甲賀土山インターチェンジから約15分、名阪国道の上柘植インターチェンジからは約20分。境内に駐車場がある。

拝観料については、公式サイトにも甲賀市観光協会の案内にも記載が見当たらない。参拝時間や撮影についての案内も確認できなかったので、祭礼や祈祷の日に訪ねる場合は大鳥神社社務所(電話0748-88-2008)に問い合わせるとよい。

例祭は「大原祇園」と呼ばれ、毎年7月23日に宵宮、24日に本祭が行われる。神輿渡御に用いる千枚張の記載から、応永22年(1415年)に始まったと伝えられ、滋賀県の無形民俗文化財になっている。本祭の花奪神事では、花鉾の造花を奪おうとする人と、青竹でそれを阻む人とがぶつかり合う。「喧嘩祭り」の異名はそこから来ている。

初夏の夜も見どころがある。公式サイトによると、6月上旬から下旬にかけて、太鼓橋のあたりでゲンジボタルが多く飛ぶ。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)「大鳥神社祝詞殿(中門)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002775
国指定文化財等データベース(文化庁)「大鳥神社楼門」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002780
文化遺産オンライン「大鳥神社楼門」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/187510
大鳥神社公式サイト「由緒」
https://www.ootorijinjya.jp/html/000.html
大鳥神社公式サイト「文化財・遺跡等」
https://www.ootorijinjya.jp/html/002-2.html
大鳥神社公式サイト「神社概要」
https://www.ootorijinjya.jp/html/003.html
甲賀市観光ガイド「大鳥神社」
https://koka-kanko.org/see/otorijinjya/
甲賀市「コミュニティバス運行情報・時刻表」
https://www.city.koka.lg.jp/15230.htm

最終更新日: 2026.09.16

基本情報

名称大鳥神社
所在地滋賀県甲賀市甲賀町鳥居野782
所有者宗教法人大鳥神社
指定登録有形文化財 7件
座標34.91249, 136.22213