矢田貝家住宅腰掛待合とは
矢田貝家住宅腰掛待合は、鳥取県西伯郡伯耆町上細見の矢田貝家住宅にある昭和前期建築の腰掛待合で、平成23年(2011年)に登録有形文化財に登録された。
腰掛待合は、茶事に招かれた客が露地の途中で腰を下ろし、亭主の迎えを待つための小さな建物である。矢田貝家住宅腰掛待合は、離れと茶室(観楓庵)を結ぶ露地に、東を正面として建つ。桁行2.5m、梁間1.2m、建築面積6.8㎡。切妻造の本屋に、南と西の二面で下屋を付けて雪隠(便所)とし、東の正面には土庇をかけている。
待つための腰掛と雪隠を一棟にまとめた構成で、露地で客が必要とする二つの役目を、畳1枚分ほどの本屋とその下屋に収めている。
矢田貝家住宅腰掛待合が登録された理由
矢田貝家住宅腰掛待合の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、柱の一部に皮付きの丸太を使い、桁や垂木まで丸太とした数寄屋風のつくりを挙げ、露地の空間に趣を添えていると評価する。
年代は文化庁のデータベースで昭和前期とされる。4代当主・矢田貝顯造の日記を読んだ田中宏夫と藤木竜也の論考によると、昭和14年(1939年)1月に大工の岩田が露地門と待合の廂を設計し、同年7月9日の日記に「待合一段落」と記されている。隣の中門と並んで、観楓庵の露地を仕上げる最後の工事の一つだった。
「腰掛待合」という名は、登録の際に付けられた呼び名でもある。藤木によると、矢田貝家には待合が複数あり、それらと区別するために便宜上この名称にしたという。道路寄りの築地塀に接して、顯造が「煎茶室」と呼んだ別の待合も建つが、こちらは登録されていない。
矢田貝家住宅腰掛待合の見どころ
藤木の論文は、矢田貝家住宅腰掛待合の細部を具体的に書き留めている。本屋は桁行1間、梁間半間。丸石を型枠代わりにしてコンクリートを打った基礎の上に、土台を据えて建てる。中の腰掛はL字形に回り、足元には自然石を埋め込んである。
屋根は竣工時、観楓庵と同じく桟瓦葺で、土庇は杮葺だった。いまは銅板のシングル葺に改められている。文化庁のデータベースは、構造の欄で「鉄板葺」、解説文で「銅板葺」と書き分けている。
近くで見るなら、柱と軒先に目を向けたい。一部の柱は皮を残した丸太で、桁と垂木も丸太のまま組まれている。削り込まない材を選んで混ぜるのは数寄屋のやり方で、2.5m四方にも満たない建物にもその作法が貫かれている。
矢田貝家住宅腰掛待合の見学
矢田貝家住宅腰掛待合は個人の所有で、常設の公開はない。露地は中門の内側、屋敷の奥にあり、国道181号からは見えない。屋敷に入れる日でも、露地まで立ち入れるという案内は確認できなかった。撮影の可否も公表されていない。屋敷への行き方と見学の条件は矢田貝家住宅のページにまとめてある。
Q&A
- 矢田貝家住宅腰掛待合とはどんな建物ですか?
- 茶事の客が露地で腰を下ろし、亭主の迎えを待つための腰掛待合です。離れと茶室(観楓庵)を結ぶ露地に東を正面として建ち、南と西の下屋を雪隠にしています。
- 矢田貝家住宅腰掛待合はいつ建てられましたか?
- 文化庁のデータベースは昭和前期としています。4代当主の日記によると、昭和14年(1939年)1月に大工が設計にかかり、同年7月9日に「待合一段落」と記されています。
- 矢田貝家住宅腰掛待合の大きさと屋根は?
- 桁行2.5m、梁間1.2m、建築面積6.8㎡の木造平屋建です。屋根は切妻造の銅板葺で、竣工時は桟瓦葺、土庇は杮葺でした。
- 矢田貝家住宅腰掛待合が登録有形文化財になった理由は?
- 「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として、平成23年(2011年)7月25日に登録されました。皮付きの丸太の柱や丸太の桁・垂木を使った数寄屋風のつくりが、露地の空間に趣を添えている点が評価されています。
- 矢田貝家住宅腰掛待合は見学できますか?
- 個人所有で常設の公開はなく、露地は道路から見えません。屋敷に入れる日でも露地へ入れるという案内は確認できませんでした。事前に伯耆町教育委員会事務局生涯学習室へお問い合わせください。
基本情報
| 名称 | 矢田貝家住宅腰掛待合 |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県西伯郡伯耆町上細見字樋ノ上486他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2011年7月25日(平成23年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行2.5m、梁間1.2m、建築面積6.8㎡ |
| 所有者 | 個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 常設の公開なし。露地にあり道路からは見えない |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)矢田貝家住宅腰掛待合
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008757
- 文化遺産オンライン 矢田貝家住宅腰掛待合
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/184258
- とっとり文化財ナビ(鳥取県文化財課)矢田貝家住宅
- https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/117213810028FEE749257C5A00296E73
- 藤木竜也「家相図・日記に繙く矢田貝家住宅」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
- https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55741
- 田中宏夫「近代村落地主の作庭記」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
- https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55742
最終更新日: 2026.10.07