矢田貝家住宅主屋とは

矢田貝家住宅主屋は、鳥取県西伯郡伯耆町上細見の矢田貝家住宅の中心に建つ嘉永7年(1854年)建築の民家で、平成23年(2011年)に登録有形文化財に登録された。

矢田貝家住宅主屋は、日野川右岸の敷地の中央からやや東寄りに、東を正面として建つ。桁行18m、梁間12m、建築面積204㎡。木造のつし二階建で、屋根は切妻造桟瓦葺、南面と東面に下屋を差し掛ける。

内部は北と南で性格が分かれる。北半分は土間と日常の居室、南半分は床を上げた部分で、6室を2列に並べ、表側の部屋を接客に充てている。文化庁のデータベースは、構造の欄で「木造平屋建」、解説文で「つし2階建」と書き分けている。

矢田貝家住宅主屋が登録された理由

矢田貝家住宅主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、土間と2列6室の床上部からなる構成を挙げ、鳥取地方の民家形式をよく伝えると評価する。鳥取県も、当地方の伝統的な民家形式をよく残す建物として紹介している。

建築年が確かな点も強みである。厨子二階に上棟の棟札が残り、嘉永7年(1854年)の年紀を記す。島根大学の研究グループの総論によれば、同じ年に初代が上細見の土地を買い受けて分家しており、主屋の普請はこの家の始まりと重なる。

その後の変化は、家に伝わる家相図から追うことができる。藤木竜也の論文によると、建てた当初の床上部は表側2室・裏側3室の計5室だった。安政7年(1860年)までに南側へ便所と風呂場を角屋として足し、明治12年(1879年)までに西側の下屋を広げて南西の部屋をナンドとナンドマエの2室に分け、北側の土間も拡張した。いまに続く間取りの骨格は、この時点でほぼ固まっている。

文化庁のデータベースは、昭和前期の改修・増築と、昭和59年(1984年)・昭和63年(1988年)の改修を記録する。昭和前期の増築には、戦時中とみられる時期に土間に続けて付け足した「新書斎」と呼ばれる角屋が含まれる。藤木はこの部屋を、竿縁天井の和室に板敷きの床やガラス戸の出窓を組み合わせた民芸調の意匠と読んでいる。

矢田貝家住宅主屋の見どころ

まず厨子二階に注目したい。藤木によると、ミセと呼ばれる部屋から梯子段で上る、天井の低い2階である。江戸時代の民家によく見られる形だが、土間の上には設けないのがふつうで、矢田貝家住宅主屋では土間の上にも根太天井を張って広く取っている。藤木は、草創期の敷地に家財を納める土蔵がまだなかったため、ここに収納を求めたのではないかと推測している。

屋根の色も、時代とともに変わった。もとは赤褐色の石州瓦で葺いて棟に石を載せていたと伝わり、昭和63年(1988年)ごろの屋根の改修で、いまの黒い燻瓦の桟瓦葺と熨斗棟に改められたという。

通りから見るときは、長屋門越しに東正面を見ることになる。明治末から大正時代の写真では、矢田貝家住宅主屋は道路にじかに面していた。門を挟んで主屋を望む今日の眺めは、昭和15年(1940年)に長屋門が移されてからのものである。

矢田貝家住宅主屋の見学

矢田貝家住宅主屋は個人の所有で、文化財としての常設の公開はない。屋敷が飲食店や催しに貸し出されているときでも、主屋のどの部屋に入れるかは、その時々の使われ方による。東正面は国道181号から長屋門越しに見られる。撮影の可否は公表されていない。屋敷への行き方と見学の条件は矢田貝家住宅のページにまとめてある。

Q&A

Q矢田貝家住宅主屋はいつ建てられ、年代はどうして分かるのですか?
A嘉永7年(1854年)の建築です。厨子二階に残る上棟の棟札に、この年紀が記されています。その後、昭和前期に改修と増築があり、昭和59年(1984年)と昭和63年(1988年)にも改修されています。
Q矢田貝家住宅主屋の間取りはどうなっていますか?
A北半分が土間と日常の居室、南半分が床上部で、6室を2列に並べ、表側を接客に使います。建築当初の床上部は5室で、明治12年(1879年)までに現在の骨格が整いました。
Q矢田貝家住宅主屋の厨子二階とは何ですか?
A屋根裏に設けた天井の低い2階で、ミセの部屋から梯子段で上ります。ふつうは土間の上に設けませんが、矢田貝家住宅主屋では土間の上まで広く取っています。
Q矢田貝家住宅主屋が登録有形文化財になった理由は?
A「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として、平成23年(2011年)7月25日に登録されました。土間と2列6室の床上部からなる、鳥取地方の民家形式をよく伝える点が評価されています。
Q矢田貝家住宅主屋の中は見学できますか?
A常設の公開はありません。屋敷が飲食店などに貸し出されている時期でも、入れる部屋はその時々で変わります。東正面は国道181号から長屋門越しに見られます。事前に伯耆町教育委員会事務局生涯学習室へお問い合わせください。

基本情報

名称矢田貝家住宅主屋
所在地鳥取県西伯郡伯耆町上細見字樋ノ上486他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2011年7月25日(平成23年)登録
員数1棟
寸法桁行18m、梁間12m、建築面積204㎡
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況常設の公開なし。東正面は国道181号から長屋門越しに見える

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)矢田貝家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008754
文化遺産オンライン 矢田貝家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/195095
とっとり文化財ナビ(鳥取県文化財課)矢田貝家住宅
https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/117213810028FEE749257C5A00296E73
伯耆町 国登録有形文化財(矢田貝家住宅)
https://www.houki-town.jp/new1/10/20/2/5/4/01/
二階堂行宣ほか「矢田貝家の歴史」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55736
藤木竜也「家相図・日記に繙く矢田貝家住宅」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55741

最終更新日: 2026.10.07