矢田貝家住宅離れとは

矢田貝家住宅離れは、鳥取県西伯郡伯耆町上細見の矢田貝家住宅で主屋の南側に接続する昭和前期建築の離れで、平成23年(2011年)に登録有形文化財に登録された。

矢田貝家住宅離れは主屋南側のブツマ(仏間)に接続し、桁行8.9m、梁間5.1m、建築面積46㎡の木造平屋建で、屋根は入母屋造桟瓦葺である。内部は、当地方特有のコドコを備えたオクナンドと、4畳半台目の茶室の2室からなり、そのあいだを中廊下が通る。茶室の前面には土庇がかかる。

「離れ」という名前は、登録の際に便宜上付けられたものである。藤木竜也の論文によると、矢田貝家ではこの建物を離れとは呼んでこなかった。

矢田貝家住宅離れが登録された理由

矢田貝家住宅離れの登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、オクナンドと、中廊下を介した開放的なつくりの茶室とからなる構成を挙げ、瀟洒な佇まいの接客施設と評価している。鳥取県も、茶室が開放的で瀟洒な接客空間をつくると説明する。

年代は文化庁のデータベースで昭和前期とされる。ただ、4代当主・矢田貝顯造の日記と古写真からは、2室の建った時期が違うことが分かってきた。藤木によると、オクナンドは主屋のナンドの南にあった便所と風呂場を建て替えたもので、大正時代の全景写真にすでに写っている。茶室は昭和6年(1931年)4月に計画が始まり、5月29日の日記に「奥納戸ノサキニ茶室ヲ作ル」とある。昭和8年(1933年)3月1日には炉に初めて火を入れており、それまでに完成していた。

顯造はこの茶室のために茶室と茶庭の本を取り寄せ、近隣の吉長にある茶室を見に出かけるなど、準備に熱心だった。

矢田貝家住宅離れの見どころ

藤木の論文は、2室の設えを具体的に記している。オクナンドは6畳で、当主の居間と書斎を兼ねた部屋だった。縁は群青色、室内は黄蘗色の色漆喰で仕上げ、床は釣床とし、床脇には天袋だけを備える。数寄屋風の軽い座敷飾りである。

茶室は4畳半台目で、床と台目畳を西側に並べた風炉先床の形式をとる。表庭に面した東側に躙口と付書院、露地に面した南側に貴人口を開き、茶室としては珍しく縁側を介して出入りする。遠州好みを基調にしながら、躙口に畳縁を重ねるなど定石に従わない点があり、藤木は顯造の好みが強く表れた茶室とみている。

建物の四周には半間幅の縁が回り、2室の境の中廊下も半間幅である。規模は桁行4間半、梁間2間半。

使われ方も日記から分かる。田中宏夫の研究ノートによると、顯造はこの茶室をおもに一人で茶を飲む場とし、親しい客を招くときは後に建てた観楓庵を使った。藤木の分析では、オクナンドは昭和初期を通じて顯造の居所で、茶を飲み、新聞を読み、ラジオを聴き、碁を打つ部屋として日記に繰り返し現れる。

矢田貝家住宅離れの見学

矢田貝家住宅離れは個人の所有で、内部の公開はない。主屋の南、庭門の内側にあり、国道181号からは見えない。屋敷に入れる日でも、離れの中まで入れるという案内は確認できなかった。撮影の可否も公表されていない。屋敷への行き方と見学の条件は矢田貝家住宅のページにまとめてある。

Q&A

Q矢田貝家住宅離れにはどんな部屋がありますか?
A当主の居間兼書斎だった6畳のオクナンドと、4畳半台目の茶室の2室で、そのあいだを中廊下が通ります。茶室の前面には土庇がかかります。
Q矢田貝家住宅離れはいつ建てられましたか?
A文化庁のデータベースは昭和前期としています。研究では、オクナンドは大正時代にはすでにあり、茶室は昭和6年(1931年)に計画されて昭和8年(1933年)3月までに完成したとされています。
Q矢田貝家住宅離れの茶室の特徴は?
A床と台目畳を西側に並べた風炉先床の4畳半台目で、東に躙口と付書院、南に貴人口を開き、縁側を介して出入りします。遠州好みを基調としながら定石に従わない点があり、当主の好みが表れた茶室とされます。
Q矢田貝家住宅離れが登録有形文化財になった理由は?
A「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として、平成23年(2011年)7月25日に登録されました。オクナンドと開放的な茶室を中廊下でつないだ、瀟洒な接客施設として評価されています。
Q矢田貝家住宅離れは見学できますか?
A個人所有で内部の公開はなく、道路からは見えません。事前に伯耆町教育委員会事務局生涯学習室へお問い合わせください。

基本情報

名称矢田貝家住宅離れ
所在地鳥取県西伯郡伯耆町上細見字樋ノ上486他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2011年7月25日(平成23年)登録
員数1棟
寸法桁行8.9m、梁間5.1m、建築面積46㎡
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況内部の公開なし

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)矢田貝家住宅離れ
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008755
文化遺産オンライン 矢田貝家住宅離れ
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/224706
とっとり文化財ナビ(鳥取県文化財課)矢田貝家住宅
https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/117213810028FEE749257C5A00296E73
藤木竜也「家相図・日記に繙く矢田貝家住宅」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55741
田中宏夫「近代村落地主の作庭記」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55742

最終更新日: 2026.10.07