矢田貝家住宅茶室(観楓庵)とは
矢田貝家住宅茶室は、鳥取県西伯郡伯耆町上細見の矢田貝家住宅の露地に建つ昭和前期建築の茶室で、平成23年(2011年)に登録有形文化財に登録された。
観楓庵(かんぷうあん)と称する。矢田貝家住宅茶室は離れから露地を隔てて建ち、桁行6.4m、梁間3.6m、建築面積18㎡の平屋建で、屋根は寄棟造の鉄板葺である。土庇を回し、2畳と4畳半の2つの茶席を、半間幅の水屋を挟んで東西に並べる。鳥取県の解説も、水屋を中心に置き、両側に茶室を2室並べると説明している。
一棟に2席を収める構成は、主屋に接続する離れの4畳半台目の茶室とは、まったく別の考え方でつくられている。
矢田貝家住宅茶室が登録された理由
矢田貝家住宅茶室の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、トコ飾りに皮付きの材を用いるなど、野趣を加えた独特な形式の茶室と評価する。
年代は文化庁のデータベースで昭和前期とされ、昭和63年(1988年)に改修されている。4代当主・矢田貝顯造の日記を読んだ藤木竜也と田中宏夫の論考によると、この茶室は伊藤家という他家から買い取り、邸内で建て直したものである。昭和13年(1938年)4月9日に「元伊藤茶室」の工事に取りかかり、4月18日に建て上げ、10月16日には新しい茶室で家族の点前による茶を味わっている。翌昭和14年(1939年)2月5日、旧伊藤茶室を観楓庵と名付けた。
名の由来について、藤木は松江の普門院にある茶室「観月庵」にちなむとする。顯造は昭和13年9月10日に観月庵を見学に出かけている。板畳を添えた2畳と4畳半を組み合わせる点も観月庵と共通しており、藤木は矢田貝家住宅茶室をその写しとみている。
矢田貝家住宅茶室の見どころ
藤木の論文は、2つの席の違いを具体的に記している。東側は板畳を取り合わせた2畳で、炉は隅炉、床は洞床とする。西側は4畳半で、炉を四畳半切に切る。そのあいだに水屋がある。2畳の席は待庵に、4畳半の席は又隠に通じる取り合わせで、節の付いた面皮材を多く使い、利休好みを感じさせる野趣に富むつくりだという。
離れの茶室が遠州好みを基調としたのと比べると、矢田貝家住宅茶室は素朴な材の表情を前に出している。同じ当主がわずか5年ほどのあいだに、性格の違う茶室を2つ用意したことになる。
屋根はいま瓦棒葺の寄棟造だが、竣工時は桟瓦葺で、土庇は杮葺だった。土庇の位置について、文化庁の解説は南面と東面とし、藤木は東側から北側へ回すと書いている。
使われ方も日記から分かる。田中によると、観楓庵は親しい友人や身内を招いて茶を楽しむ場で、建ててからは煎茶を喫する記述が連日のように現れる。藤木は、2席を持つことが、完成後も網代天井や漆喰塗りの工事が続いた理由だろうとみている。
矢田貝家住宅茶室の見学
矢田貝家住宅茶室は個人の所有で、常設の公開はない。中門の内側、露地の奥に建つため、国道181号からは見えない。屋敷に入れる日でも、露地や茶室まで入れるという案内は確認できなかった。撮影の可否も公表されていない。屋敷への行き方と見学の条件は矢田貝家住宅のページにまとめてある。
Q&A
- 矢田貝家住宅茶室はなぜ観楓庵と呼ばれるのですか?
- 4代当主が昭和14年(1939年)2月5日に名付けました。研究では、当主が前年に見学した松江の普門院の茶室「観月庵」にちなむ名とされ、2畳と4畳半を組み合わせる構成も観月庵と共通しています。
- 矢田貝家住宅茶室はいつ建てられましたか?
- 文化庁のデータベースは昭和前期としています。当主の日記によると、伊藤家から買い取った茶室を昭和13年(1938年)4月に邸内で建て直し、同年10月には使い始めています。昭和63年(1988年)に改修されました。
- 矢田貝家住宅茶室の広さと間取りは?
- 桁行6.4m、梁間3.6m、建築面積18㎡の平屋建です。半間幅の水屋を挟み、東に板畳を添えた2畳、西に4畳半の茶席を並べています。
- 矢田貝家住宅茶室が登録有形文化財になった理由は?
- 「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として、平成23年(2011年)7月25日に登録されました。トコ飾りに皮付きの材を用いるなど、野趣を加えた独特な形式の茶室として評価されています。
- 矢田貝家住宅茶室は見学できますか?
- 個人所有で常設の公開はなく、露地の奥にあるため道路からは見えません。事前に伯耆町教育委員会事務局生涯学習室へお問い合わせください。
基本情報
| 名称 | 矢田貝家住宅茶室(観楓庵) |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県西伯郡伯耆町上細見字樋ノ上486他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2011年7月25日(平成23年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行6.4m、梁間3.6m、建築面積18㎡ |
| 所有者 | 個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 常設の公開なし。露地にあり道路からは見えない |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)矢田貝家住宅茶室
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008756
- 文化遺産オンライン 矢田貝家住宅茶室
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/161567
- とっとり文化財ナビ(鳥取県文化財課)矢田貝家住宅
- https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/117213810028FEE749257C5A00296E73
- 藤木竜也「家相図・日記に繙く矢田貝家住宅」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
- https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55741
- 田中宏夫「近代村落地主の作庭記」『山陰研究』別冊2(島根大学、2026年)
- https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/55742
最終更新日: 2026.10.07