旧福元家住宅主屋とは
旧福元家住宅主屋は、山口県大島郡周防大島町西屋代に大正15年(1926年)に建てられた木造2階建の住宅で、令和4年(2022年)2月17日に登録有形文化財に登録された。
アメリカで貿易商として成功した福元長右衛門が、郷里の屋代地区に構えた屋敷の中心となる棟である。建築面積は294㎡、屋根は入母屋造の桟瓦葺。外から眺めるかぎり、瀬戸内の島にある大きな和風の家にしか見えない。
ところが板敷の台所に入ると印象が変わる。そこにはアメリカから持ち帰ったオーブンが据えられ、蛇口のついた流しがあり、屋敷の井戸から水が送られてきていた。平成10年(1998年)の改修を経て、現在は日本ハワイ移民資料館の展示室として使われている。
登録の理由 ― 和の骨格とアメリカの設備
旧福元家住宅主屋に当てられた登録基準は「造形の規範となっているもの」である。同じ屋敷の土蔵・井戸及び給水塔・塀が景観への寄与で登録されたのに対し、主屋だけが意匠と構成そのものを評価されている。
平面は、二階建の南北棟を芯に据え、中庭を囲むように角座敷を延ばした形をとる。全体の意匠は和風で通されており、山口県の解説は欄間の彫刻のような伝統的な細工を挙げる。そのうえで、洋室の天井や階段の手摺りには西洋の趣味が読み取れるとし、和洋折衷の住宅と位置づけている。
評価のもう一つの軸は水まわりである。旧福元家住宅主屋には、オーブンなどの台所設備、洗面器などの衛生設備、そして井戸から風呂と台所へ給水する水道がそろっていた。公共の水道が通る前の島で、蛇口をひねれば水の出る暮らしを自前で組み立てたことになる。県の解説はこれを、移民として暮らした人が持ち帰った「快適な生活を求める生活文化」の表れと見ている。
外観や座敷を伝統の作法で整え、日々の手間がかかる台所と水まわりだけをアメリカ式に置き換える。旧福元家住宅主屋は、その取捨選択の跡が建物に残っている点で、大正期の住宅の中でも読みごたえがある。
見どころ
最初に見ておきたいのは南側の玄関まわりである。文化庁のデータベースが旧福元家住宅主屋の代表写真に選んでいるのもこの玄関で、入母屋造の屋根をいただく和風の正面構えがよく分かる。
館内では、台所を見落とさないようにしたい。データベースのもう1枚の写真は、炊事場の蛇口と食器類を写したものだ。和風の屋敷の奥に、板敷の床と金属の水栓が並ぶ一角がある。
座敷では欄間の彫刻、洋室では天井の意匠、階段では手摺りの形に目を向けると、和と洋がどこで切り替わっているかが追える。中庭を囲む角座敷の配置は、館内をひと回りしてから中庭の位置と照らし合わせると頭に入りやすい。
見学方法
旧福元家住宅主屋は日本ハワイ移民資料館の建物そのものであり、開館日に入館すれば座敷や台所を含む内部を見学できる。展示室として使われているため、部屋には移民関係の資料が並んでいる。
館内での写真撮影は禁止されているので、建物の記録を残したい場合は外観にとどめること。車いすでの見学は可能で、事前に連絡すれば駐車場所を案内してもらえる。開館時間や入館料、最寄り駅からの行き方は旧福元家住宅のページにまとめてある。
Q&A
- 旧福元家住宅主屋の中には入れますか?
- 入れます。旧福元家住宅主屋は日本ハワイ移民資料館として使われており、開館日に入館料を払えば座敷や台所などの内部を見学できます。月曜日と年末年始は休館です。
- 旧福元家住宅主屋はいつ、誰が建てたのですか?
- 文化庁の記録では大正15年(1926年)の建築です。建て主はアメリカで貿易によって財を成し、郷里の屋代地区に戻った福元長右衛門です。資料館の案内には昭和3年(1928年)の建設とする記述もあります。
- 旧福元家住宅主屋の館内は写真撮影できますか?
- できません。資料館の館内は撮影禁止とされています。報道目的の場合は事前に資料館へ問い合わせてください。
- 旧福元家住宅主屋のどこに洋風の要素がありますか?
- 外観と座敷は和風ですが、洋室の天井や階段の手摺りに西洋風の意匠が見られます。板敷の台所には、アメリカから持ち帰ったオーブンや水まわりの設備が置かれました。
- 旧福元家住宅主屋はなぜ登録有形文化財になったのですか?
- 登録基準は「造形の規範となっているもの」です。大正期の和風住宅としての意匠に加え、アメリカ生活で得た台所設備や屋敷内の水道を組み込んだ点が評価されました。
基本情報
| 名称 | 旧福元家住宅主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 山口県大島郡周防大島町大字西屋代字下里2144 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和4年(2022年)2月17日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積294㎡ |
| 所有者 | 周防大島町 |
| 公開状況 | 日本ハワイ移民資料館として公開(入館料あり、館内撮影不可) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧福元家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014206
- 文化遺産オンライン 旧福元家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/584066
- 山口県の文化財 旧福元家住宅主屋
- https://bunkazai.pref.yamaguchi.lg.jp/sp/bunkazai/summary.asp?mid=110224
- 日本ハワイ移民資料館 よくある質問
- https://suooshima-hawaii-imin.com/ja/faq/
- 日本ハワイ移民資料館 資料館について
- https://suooshima-hawaii-imin.com/ja/about/
最終更新日: 2026.09.24