旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)とは

旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)は、愛知県尾張旭市旭前町にある木造2階建の事務所建築で、昭和14年(1939年)に建てられ、平成16年(2004年)6月9日に国の登録有形文化財に登録された。

建てられたときの名前は「大隈鉄工所旭分工場」である。尾張旭市の資料によれば、当時の海軍の規格に沿って設計された。工場に付属する事務棟として計画された建物が、のちに旭兵器製造の本社事務棟となり、社名が変わったあとも同じ会社の本館として使われ続けている。登録名称に旧称が併記されているのはこの経緯による。

建築面積は338平方メートル。屋根は寄棟造で鉄板を葺く。外壁は当初、板を横に重ねて張る下見板張だったが、現在はモルタル吹付に改められている。内部は1階を主に事務室とし、2階には応接間などを配する。

木造の事務所建築は、鉄筋コンクリート造が普及していく昭和10年代の産業施設のなかでは、すでに新しい選択とは言えない構法だった。それでも旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)は、外観に洋風の意匠をそろえた事務所として整えられている。文化庁の解説はこれを、洋風を基調とする事務所建築の好例と評価する。

なぜ登録有形文化財なのか

旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)の登録基準は「造形の規範となっているもの」である。登録番号は23-0133で、42回目の登録にあたる。文化庁の分類では種別が「産業2次」、すなわち製造業に関わる建物として扱われている。

評価の軸は二つある。ひとつは外観と内装の設計水準で、木と漆喰という限られた材料を使いながら、質の高い室内をつくっていること。もうひとつは残り方で、玄関ホールから階段室にかけての空間と、2階南側の3室が、ほとんど建設当時のまま伝わっている。

尾張旭市が公開している文化財の一覧を見ると、市内で国の登録有形文化財となっているのはこの1件だけである(市の一覧は2023年3月更新)。県指定・市指定の文化財が仏像や古墳、民俗芸能に偏るなかで、昭和の産業建築が一件だけ並ぶ形になっている。

旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)の見どころ

外から目に入るのは、寄棟の大きな屋根と鉄板葺の面、そしてモルタル吹付の淡い外壁である。下見板張だった時期の表情は現在の外壁の下に隠れており、竣工当時の写真と見比べると印象がかなり違う。

尾張旭市の資料が挙げる内部の見どころは、天井の高さと材料の扱いにある。木部と漆喰という素朴な組み合わせで、落ち着いた室内が組み立てられている。玄関ホールから階段室へつながる空間は、竣工時の姿をよく保っている部分にあたる。

とくに知られているのが、漆喰天井に施されたレリーフである。図柄は錨と橘。いずれも旧海軍が用いた意匠で、この建物が海軍の規格で建てられたことと結びついている。戦前には皇族の貴賓室としても使われ、海軍に在籍していた高松宮の台臨を受けたと尾張旭市は記録している。

ただし内部は公開されていない。ここに書いた室内の記述は、旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)を訪ねて見られるものではなく、市が公開している調査記録と写真によるものである。

旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)の見学方法とアクセス

旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)は、現在も旭サナック株式会社の本館として使われている。内部は非公開で、一般公開の案内は文化庁、尾張旭市、所有者のいずれの公式情報にも見あたらない(2026年8月時点)。

建物は企業の敷地内にあり、周囲は私有地である。無断で立ち入ることはできない。外観を見たい場合は、事前に会社へ問い合わせて可否を確認するのが確実である。撮影も同様で、敷地内では許可が必要になる。公道から撮る場合も、稼働中の社屋であることに配慮したい。

アクセスは、名鉄瀬戸線の旭前駅から徒歩3分ほど。会社が公開している案内では、名古屋駅からは地下鉄東山線で栄まで行き、名鉄栄町駅から瀬戸線に乗り換えて旭前駅で降りる経路が示されている。地下鉄東山線の藤が丘駅からタクシーを使う場合はおよそ5キロ、15分ほどである。

車の場合は、東名高速道路の名古屋インターチェンジからおよそ20分、名古屋第二環状自動車道の大森インターチェンジからおよそ10分。訪問者用の駐車場を一般見学者が使えるかどうかは公開されていないため、こちらも問い合わせが必要になる。

Q&A

Q旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)は見学できますか。内部は公開されていますか。
A内部は公開されていません。現在も旭サナック株式会社の本館として使われており、一般公開の案内は文化庁・尾張旭市・所有者のいずれの公式情報にも見あたりません(2026年8月時点)。外観の見学を希望する場合は、事前に会社へ問い合わせてください。
Q旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)へのアクセスは。最寄り駅はどこですか。
A最寄り駅は名鉄瀬戸線の旭前駅で、徒歩3分ほどです。名古屋駅からは地下鉄東山線で栄へ出て、名鉄栄町駅から瀬戸線に乗り換えます。車では東名高速道路の名古屋インターチェンジからおよそ20分です。
Q旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A昭和14年(1939年)に「大隈鉄工所旭分工場」として建てられました。国の登録有形文化財になったのは平成16年(2004年)6月9日で、登録番号は23-0133です。
Q旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)の名前にある「旭兵器製造」とは何ですか。
Aこの建物をのちに本社事務棟として使った会社の旧社名です。建物自体は「大隈鉄工所旭分工場」として建てられ、社名の変更を経て、現在は旭サナック株式会社の本館になっています。
Q旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)の撮影はできますか。
A敷地内での撮影には所有者の許可が必要です。建物は稼働中の社屋であり、周囲は私有地にあたります。公道からの撮影も、業務の妨げにならないよう配慮してください。

基本情報

名称旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)
所在地愛知県尾張旭市旭前町新田洞5050
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)登録
員数1棟
寸法建築面積338平方メートル、木造2階建、鉄板葺
所有者旭サナック株式会社
公開状況内部非公開。企業の本館として使用中で一般の見学は行われていない

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004137
文化遺産オンライン(文化庁)旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/117217
尾張旭市デジタルミュージアム 旭サナック本館(旧旭兵器製造本社事務棟)
https://www.city.owariasahi.lg.jp/site/digitalmuseum/39394.html
尾張旭市 尾張旭市の指定文化財・登録文化財
https://www.city.owariasahi.lg.jp/site/asahi-miryoku/11491.html
旭サナック株式会社 会社概要
https://www.sunac.co.jp/about/brief.html

最終更新日: 2026.08.30