堀部家住宅高塀 街路景観をつくる瓦葺の塀

堀部家住宅の主屋にたどり着く前に、まず街路で迎えるのがこの塀である。敷地の北辺を、背後の主屋と並行して走り、途中で折れ曲がりながら延長およそ二十二メートルに及ぶ。木造に瓦を葺いた高塀で、それ自体が登録有形文化財に数えられる。庭を囲うだけでなく、屋敷への導入部の調子を決める役目を負う。

堀部家は犬山城主成瀬家に仕えた武家で、十二代勝四郎が明治期に事業で財を成し、この地で養蚕を営んだ。塀が建ったのはやや遅れて昭和初期のことだが、屋敷全体を貫く端正な表構えへの意識は、この塀にも通じている。

登録の理由と価値

高塀は平成十八年(二〇〇六)三月、堀部家の他の五棟とともに登録有形文化財となった。他の建物と同じく「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として評価されている。登録有形文化財の制度は、地域の景観を形づくってきた建造物を対象とする。

塀という境界の工作物は保護対象として控えめに映るかもしれない。だがここでは相応の重みをもつ。街がまず目にする面がこの塀であり、その重厚で整った構えが、屋敷を城下町の街並みへと結びつける。塀がなければ、背後の武家風屋敷は、屋敷を一つのまとまりとして見せる導入の間合いを失う。

見どころ

塀は玉石を積んだ基礎の上に建ち、要所に控柱を添えて長い延長を支える。まっすぐ通すのではなく折れ曲がる造りに従って歩けば、表構えに奥行きが生まれるのがわかる。頂部の瓦屋根は雨を流し、守る建物と同じ屋根の理を塀にも与えている。

外面と内面で仕上げが違う点にも目をとめたい。街路に向いた外面は、腰の部分に波形鉄板を張り、風雨と傷みに備える実用の肌である。内面は土壁の中塗仕上げで、より柔らかく住まいに近い。塀と主屋のあいだには一間半ほどの前庭があり、かつて客はこの間を通って座敷へ向かった。

路地から見れば、塀と主屋がひとつづきの端正な表構えをつくり、格をもつ家の構えを示す。門をくぐる前に街路側で立ち止まれば、この一角がなお城下町らしく感じられる理由が、塀ひとつのうちに読み取れる。

Q&A

Q高塀とはどのようなものですか。
A住宅の前面を囲う背の高い塀のことです。ここでは木造に瓦屋根を載せた造りで、堀部家では街路の縁に沿って走り、主屋への導入部を形づくっています。
Q塀はいつ建てられたのですか。
A昭和初期の建築で、明治十六年の主屋より新しい造作です。正確な年は記録に残らないため、資料では昭和初期に加えられた工作物として扱われています。
Q外面と内面で仕上げが違うのはなぜですか。
A街路に面した外面は腰に波形鉄板を張って風雨に備え、庭側の内面は土壁の中塗仕上げとしています。実用の外皮と柔らかな内面が、それぞれの向きに合わせてあります。
Q中に入らずに塀を見られますか。
A見られます。塀は公道に面しているため、外からいつでも眺められます。屋敷本体は「木之下城伝承館・堀部邸」として無料公開され、月曜・火曜が休館です。
Q場所と行き方を教えてください。
A旧名古屋往還の外堀桝形を出た東側にあり、犬山城から歩いて行ける距離です。敷地内に駐車場はないため、公共交通機関か周辺のコインパーキングをご利用ください。

基本情報

名称堀部家住宅高塀(ほりべけじゅうたくたかべい)
所在地愛知県犬山市大字犬山字南古券272
指定区分登録有形文化財(平成18年3月27日登録)
建築年昭和初期(正確な年は記録なし)
構造木造、瓦葺、延長約22メートル
員数1棟
公開塀は街路から見学可。屋敷は無料公開、月曜・火曜休館。時間は変更の場合あり

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 堀部家住宅高塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005472
犬山市 — 旧堀部家住宅について
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001052/1003549/1001062.html
犬山観光ナビ — 旧堀部家住宅
https://inuyama.gr.jp/experience/detail/7/
木之下城伝承館・堀部邸(公式サイト)
https://horibetei.com/

最終更新日: 2026.07.10