堀部家住宅作業場とは ― 士族が養蚕を営んだ建物

堀部家住宅作業場(ほりべけじゅうたくさぎょうば)は、愛知県犬山市大字犬山字南古券272の旧堀部家住宅の敷地にある明治26年(1893年)頃の木造平屋建の付属屋で、平成18年(2006年)3月27日に登録有形文化財に登録された。土蔵造の東に接続し、通りからもっとも奥まった位置に建つ。

堀部家は犬山城主成瀬氏に仕えた士族で、明治の初めに堀部勝四郎がこの土地を買い求め、養蚕を生業とした。明治16年(1883年)に建てた主屋は2階を蚕室に充てたと伝わり、その10年ほど後に建てられたこの作業場によって、養蚕は専用の建物を得た。平成18年に登録された6棟のうち、堀部家の暮らしの糧を直接示すのはこの棟である。

建築面積は69平方メートル。屋根は切妻造桟瓦葺で、内部は用途の異なる3つの部分が一列につながっている。

登録の理由 ― 生業を示す遺構

堀部家住宅作業場は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録され、文化庁のデータベースは「同家の生業を示す遺構」と評している。明治4年(1871年)の廃藩置県ののち農業や小さな産業に転じた士族は各地にいたが、その仕事場が残る例は少ない。小屋や蚕室は家業が変わればまず取り壊される類の建物だからである。

平面がその来歴を記録している。土蔵に近い部分は桁行3間半、梁間2の物置で、およそ6.4メートル×3.6メートル。これに桁行3間、梁間2間の農作業小屋が落棟で接続する。棟の高さを一段下げてつなぐため、二つの屋根が別々の量塊として見える。さらに桁行3間、梁間2間の蚕室が並置される。蚕を育てるには温度と風通しを管理できる部屋が要る。それに専用の一室を割いたことが、養蚕が片手間の仕事ではなかったことを示している。

外壁は真壁造で、柱を見せてその間を白漆喰で塗り、腰には下見板を張る。3つの部分が一続きの作業棟をなし、北側の主屋や離座敷とははっきり違う、簡素だが丁寧な造りである。

見どころ ― 屋根の段差と白壁

土蔵の脇を南へ回ると、屋敷の雰囲気が変わる。主屋と離座敷は縁側とガラス戸で庭に向かうのに対し、堀部家住宅作業場は飾りのない白壁を庭に向ける。西端に立って棟の線を目で追うと、物置と農作業小屋の境で屋根が一段下がるのが分かる。

壁面にも目を向けたい。露出した柱が白漆喰を等間隔の区画に分け、腰の下見板は雨の跳ね返りを受ける高さを示している。実用一点張りの建物だが、柱間はそろい、仕上げは主屋に劣らず整っている。

隣の土蔵は冷暖房が整えられ催しに使われている。作業場については市の内部案内に含まれていないので、庭から外観を見る前提で訪ねたい。主屋2階の、かつて繭を広げた部屋を先に見ておくと、堀部家住宅作業場は養蚕で生計を立てた一家の姿を補完してくれる。

見学方法 ― 開館時間・料金・アクセス

堀部家住宅作業場は犬山市が所有する無料公開施設「旧堀部家住宅」の一部である。市は所有者から建物の寄贈を受け、平成24年度(2012年度)に一般公開を始めた。平成27年度(2015年度)からは特定非営利活動法人古代邇波の里・文化遺産ネットワーク(ニワ里ねっと)が「木之下城伝承館・堀部邸」として管理運営し、展示や伝統文化の催しを開いている。

開館時間は正午から午後6時まで。休館日は毎週月曜日と火曜日(祝日の場合はその翌日)と、12月28日から1月4日である。観覧料は無料。午前中の見学は電話(0568-90-3744)での予約が必要になる。開館時間内は建物と庭を自由に見学でき、作業場は戸が閉まっていても庭から間近に眺められる。撮影については明文の案内がないため、屋内は係の人に確認するとよい。

最寄り駅は名鉄の犬山駅または犬山口駅で、いずれも徒歩約10分。名鉄名古屋駅から犬山駅まで約25分、名鉄岐阜駅からは約30分である。門は城下町の本通りから南に入った細い小路に面している。来訪者用の駐車場はなく、市は公共交通機関かキャッスルパーキングの利用を案内している。

Q&A

Q堀部家住宅作業場は見学できますか?入場料はかかりますか?
A見学できます。旧堀部家住宅の敷地内にあり、正午から午後6時まで無料で公開されています。月曜日・火曜日と12月28日から1月4日は休館です。作業場は庭から外観を見る形になります。
Q堀部家住宅作業場は何のための建物ですか?
A物置、農作業小屋、蚕室の3つを一棟にまとめた建物です。犬山藩士だった堀部家は明治期に養蚕で生計を立てていました。
Q堀部家住宅作業場はいつ建てられましたか?
A文化庁は明治26年(1893年)頃と推定しています。平成18年(2006年)3月27日に登録有形文化財に登録されました。
Q堀部家住宅作業場の大きさは?
A建築面積は69平方メートルです。桁行3間半・梁間2間の物置と、桁行3間・梁間2間の部分が2つ(それぞれおよそ5.5メートル×3.6メートル)で構成されます。
Q堀部家住宅作業場へ名古屋からの行き方は?
A名鉄名古屋駅から名鉄で犬山駅まで約25分、そこから徒歩約10分です。旧堀部家住宅に駐車場はありません。

基本情報

名称堀部家住宅作業場(ほりべけじゅうたくさぎょうば)
所在地愛知県犬山市大字犬山字南古券272
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成18年(2006年)3月27日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積69平方メートル
所有者犬山市
公開状況敷地は正午から午後6時まで無料公開。月曜日・火曜日および12月28日から1月4日は休館

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)「堀部家住宅作業場」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005471
犬山市「施設案内 旧堀部家住宅」
https://www.city.inuyama.aichi.jp/shisetsu/koukyoshisetsu/1001550/1006914.html
犬山市「旧堀部家住宅について」
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001052/1003549/1001062.html
木之下城伝承館・堀部邸(運営者公式サイト)
https://horibetei.com/sample-page/
Aichi Now(愛知県公式観光サイト)「旧堀部家住宅」
https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/3890/

最終更新日: 2026.09.02