建築面積21平方メートルの登録文化財
料亭河文用々亭は、愛知県名古屋市中区丸の内2-12-19にある昭和25年から27年(1950年~1952年)建築の木造平屋建の建物で、平成17年(2005年)2月9日に国の登録有形文化財に登録された。
建築面積は21平方メートル。ホテルの一室より小さい。それが登録対象の全部である。適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」で、一室と廊下からなる建物に与える評価としては相当に重い。
用々亭は主屋の北西に位置し、渡廊下で主屋と結ばれる。内部は6畳の主室が一つ、その南側に幅1間弱の廊下が通る。構成はそれだけである。
この小ささで登録に至る理由
まず柱と桁を見る。角材ではなく丸太が用いられている。数寄屋の手法であり、その背後にある茶室の系譜に属する選択である。製材した角材は格式と建築性を、丸太は非格式と自然さ、素材の来歴に近い感触を、それぞれ画面に持ち込む。私的なもてなしのために建てられた料亭の離れにおいて、この差は実際に働く。
天井は掛込み天井。屋根の勾配なりに斜めに納めた部分と、平らな部分とを組み合わせる形式である。小さな部屋の容積を不均等に割り、直方体の箱という印象を消す。6畳の部屋をそのまま6畳の部屋として感じさせないこと。茶室の設計者がこの手を選ぶのは、そのためである。
各面とも開口部が大きく取られている。四方が開くことで、この建物は囲われた室というより屋根のかかった見晴らし台に近い性格を持つ。文化庁の解説はこれを茶屋風の造りと記す。屋根は切妻造、桟瓦葺で一部を銅板葺とする。
公式の説明に出てくる「瀟洒」という語が、この建物の性格をよく言い当てている。規模は小さく手法は簡素でありながら、洗練を失わないという意味である。
用々亭を囲む屋敷
河文は、名古屋城築城に伴う都市移転、いわゆる清須越で名古屋へ移った河内屋文左衛門が開いた魚屋を起源とする。目利きが評判を呼び、仕出し店を経て料理店となり、やがて尾張徳川家の御用達となった。名古屋最古の料亭とされる。
敷地内の登録有形文化財は6件。主屋、表門、塀及び脇門、新用亭及び渡廊下、用々亭、厨房である。名称の対に注意したい。新用亭と用々亭は別の建物で、それぞれ独立して登録されている。似た字面のため取り違えている記述は少なくない。
主屋は名古屋の建築家、篠田進と川口喜代枝の設計とされる。敷地内には日本近代建築の重要な担い手である谷口吉郎が手がけた中庭と「水鏡の間」、石の彫刻家・流政之による「石の床の間」もある。名古屋城築城の際に植えられたと伝わる椎の古木、城へ通じていたと伝わる古井戸も残る。
伊藤博文、吉田茂、田中角栄ら歴代の首相、フランスのミッテラン元大統領などがこの料亭を訪れている。
訪問の実際
ここは営業中の料亭であり、その一点が訪問条件のすべてを規定する。拝観券はなく、見学のための開館時間も設定されていない。通常の入り口は食事である。歴史的な座敷での会席は予約制。同じ敷地内には旧大広間の座敷跡を改修したイタリアンレストラン「THE KAWABUN NAGOYA」があり、こちらは直近の予約が取りやすい。
館内の案内付き見学は、体験予約サイトを通じて随時設定されている。13代目当主が案内する回もあり、通常は入れない場所が含まれる。ただし当日どの部屋を巡るかは催行日によって異なる。用々亭が含まれるとは限らないため、この建物が目的であれば予約時に確認しておきたい。
料亭内の撮影は規則というより礼儀の問題である。スタッフに一言確認し、他の客のプライバシーが優先されることを前提としたい。所在地の丸の内へは、地下鉄桜通線・鶴舞線の丸の内駅から徒歩数分。名古屋城は北へさらに徒歩15分ほどで、この料亭の由来が城から始まる以上、両者を組み合わせる行程には意味がある。
Q&A
- 料亭河文用々亭は見学できますか。拝観時間はありますか。
- 河文は営業中の料亭であり、一般の拝観制度や拝観時間はありません。予約による食事利用か、体験予約サイトで設定される館内見学プランを通じて館内に入ることになります。巡る部屋は催行日により異なるため、用々亭が対象かは事前に確認してください。
- 料亭河文用々亭はどのくらいの大きさの建物ですか。
- 建築面積は21平方メートルです。6畳の主室と、その南側に通る幅1間弱の廊下からなり、国の登録有形文化財のなかでも最小の部類に入ります。
- 料亭河文用々亭はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
- 昭和25年から27年(1950年~1952年)の建築で、平成17年(2005年)2月9日に登録有形文化財として登録されました。告示は同年2月28日、登録番号は23-0159、登録基準は「造形の規範となっているもの」です。
- 料亭河文用々亭と新用亭はどう違いますか。
- 別々の建物で、それぞれ独立して登録されています。新用亭は渡廊下と合わせて1件として登録され、用々亭は単独で登録されています。同じ河文の敷地内には他に主屋、表門、塀及び脇門、厨房も登録されています。
- 料亭河文用々亭へはどう行けばよいですか。
- 地下鉄桜通線・鶴舞線の丸の内駅から徒歩数分です。名古屋城へは北へさらに徒歩15分ほどで、あわせて巡ることができます。
基本情報
| 名称 | 料亭河文用々亭 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市中区丸の内2-12-19 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 23-0159 |
| 指定年 | 平成17年(2005年)2月9日 登録(告示は同年2月28日) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積21平方メートル。6畳主室、南側に幅1間弱の廊下 |
| 所有者 | 株式会社河文 |
| 公開状況 | 一般拝観の制度なし。予約による食事利用、または随時設定される館内見学プランによる |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004556
- 名古屋歴まちネット 名古屋市の文化財
- https://www.nagoya-rekimachinet.jp/bunkazai/
- 名古屋コンシェルジュ 河文
- https://www.nagoya-info.jp/gourmet/detail/38/
最終更新日: 2026.08.06