政府の図書館として建てられた庁舎

明治村内閣文庫は、愛知県犬山市の博物館明治村にある明治44年(1911年)建築の官庁建築で、平成16年(2004年)2月17日に登録有形文化財として登録された。明治政府の中央図書館であった内閣文庫の庁舎のうち、事務を執った主屋の部分にあたる。

内閣文庫の出発点は明治6年(1873年)にさかのぼる。赤坂離宮内に「太政官文庫」の名で開かれた政府の図書館で、江戸幕府から引き継いだ古文書に、各地の記録や海外の書籍が買い足されていった。書物が増えれば器も要る。明治44年(1911年)に建てられたのが、この建物である。

設計したのは大蔵省臨時建築部の大熊喜邦。のちに国会議事堂の建設を指揮することになる建築家が、政府の書物を収める建物を手がけた。旧所在地は東京都千代田区千代田で、事務棟の背後には煉瓦造の書庫棟が控えていた。明治村内閣文庫として移されたのは、そのうち前面の主屋である。

煉瓦から鉄筋コンクリートへ

登録有形文化財としての明治村内閣文庫は、鉄筋コンクリート造2階建、スレート葺、建築面積292平方メートルとして登録されている。ただし建設当初の構造はこれではない。もとは煉瓦の躯体に安山岩系の月山石を組み入れた煉瓦造で、昭和59年から60年(1984年から1985年)にかけて解体されたのち、平成2年(1990年)の移築にあたって構造が鉄筋コンクリート造へ改められた。

文化庁の国指定文化財等データベースが記す登録基準は「造形の規範となっているもの」である。構造が置き換わってなお登録されたのは、評価の重心が意匠にあることを示している。日本人建築家が西洋の様式建築をどこまで自分のものにしたか、その到達点を外観と内装が示している。

ドリス式の正面と、ケヤキの階段室

明治村内閣文庫の正面には、ドリス式の半円柱4本が並び、隅に角柱が添う。柱が受けるのは唐草模様を刻んだ大きなペディメントで、その中央にメダリオンが置かれる。古代ギリシャ・ローマの神殿建築から受け継がれた構成を、明治末の官庁建築が使っている。棟の上には小ぶりなドーム形のランタンが載る。

外壁の二層

外壁は上下で仕上げが違う。1階はモルタルを塗り、筋状に目地を切って石積みのように見せる。2階は白いタイル張り。縦長の窓は両開きのガラス窓で、規則正しく並ぶ。近づいて上下を見比べると、同じ壁面が二つの質感で組み立てられているのが分かる。

内部の造作

内部は上下階とも同じ構成をとる。正面にホールと階段室があり、両翼へ廊下が延び、奥に大部屋、翼屋の端に小部屋が並ぶ。玄関ホールと階段室まわりの造作にはケヤキが用いられ、漆拭きで仕上げられている。壁と天井は白漆喰塗り、天井には蛇腹がめぐる。

天井の中心飾りと暖炉枠

明治村内閣文庫では、エントランスを含むすべての部屋の天井に中心飾りが付く。主な部屋には暖炉があり、その枠はケヤキ、白大理石、人造石と部屋ごとに材料が変えてある。蔵書を守るための堅牢さを求めた建物でありながら、細部にはこうした選択が積み重ねられている。

見学方法とアクセス

明治村内閣文庫は博物館明治村の五丁目59番地に建つ。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生が700円で、未就学児は無料である。内部の意匠も公式サイトが鑑賞ポイントとして案内しているが、修理などで見学できない建造物や立ち入りを制限した箇所がある場合もあるため、当日の状況は現地の掲示で確かめたい。

開村時間は季節で変わる。3月と、4月から7月、9月・10月は午前9時30分から午後5時まで。8月は午前10時から午後5時まで。11月は午前9時30分から午後4時まで。12月から2月は午前10時から午後4時までである。休村日があるので、公式サイトの開村カレンダーを確認してから出かけたい。

撮影は個人の範囲でできる。建物内での三脚使用は禁止されており、山林に立ち入っての撮影も認められていない。飲食店舗以外の建物内での飲食も控えることになっている。

アクセスは名鉄犬山駅からバスで20分。名古屋駅と栄駅からは直通の高速バスがある。車なら中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートルで、駐車場は普通車900台分、駐車料金は1,000円である。

Q&A

Q明治村内閣文庫はもともとどこに建っていたのですか?
A東京都千代田区千代田です。明治政府の中央図書館であった内閣文庫の庁舎で、明治44年(1911年)に建てられました。移築されたのは事務棟である主屋の部分で、背後には煉瓦造の書庫棟が建っていました。
Q明治村内閣文庫の設計者は誰ですか?
A大蔵省臨時建築部の大熊喜邦です。のちに国会議事堂の建設を指揮した建築家で、ルネッサンス様式を基調とした意匠にまとめています。
Q明治村内閣文庫の構造は煉瓦造ですか、鉄筋コンクリート造ですか?
A建設当初は月山石を組み入れた煉瓦造でしたが、平成2年(1990年)の移築時に鉄筋コンクリート造へ改められました。文化庁のデータベースには鉄筋コンクリート造2階建、スレート葺、建築面積292平方メートルとして登録されています。
Q明治村内閣文庫はいつ登録有形文化財になったのですか?
A平成16年(2004年)2月17日に登録されました。登録基準は「造形の規範となっているもの」が適用されています。
Q明治村内閣文庫へはどう行けばよいですか?
A名鉄犬山駅からバスで20分の博物館明治村内、五丁目59番地にあります。名古屋駅と栄駅からは直通の高速バスも運行しています。車の場合は中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートルです。

基本情報

名称明治村内閣文庫
所在地愛知県犬山市内山1 博物館明治村内
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)登録
員数1棟
寸法建築面積292平方メートル
所有者公益財団法人明治村
公開状況博物館明治村内で公開。有料入村

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 明治村内閣文庫
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003877
博物館明治村 内閣文庫
https://www.meijimura.com/sight/内閣文庫/
博物館明治村 開村時間・休村日
https://www.meijimura.com/guide/open/
博物館明治村 チケット・料金
https://www.meijimura.com/guide/price/
博物館明治村 アクセス
https://www.meijimura.com/guide/access/
文化庁 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/

最終更新日: 2026.09.03