長崎の島に建てられ、農家の顔をした教会堂

明治村大明寺聖パウロ教会堂は、愛知県犬山市の博物館明治村にある木造の教会堂で、明治12年(1879年)に長崎湾口の伊王島に建てられ、平成16年(2004年)に登録有形文化財となった。

キリスト教の禁教令が解かれたのは明治6年(1873年)である。それから数年のうちに、長崎の各地と周辺の島々に小さな木造の教会堂が建ちはじめた。大明寺聖パウロ教会堂は、その早い時期の例として知られている。旧所在地は長崎県西彼杵郡伊王島町、いまの長崎市伊王島町にあたる。

建設を指導したのはフランス人宣教師のブレル神父で、実際に木を刻んだのは地元の大工、大渡伊勢吉である。大渡は長崎の大浦天主堂の工事に加わった経験を持っていた。文化庁の記録も、この教会堂の大工として大渡伊勢吉の名を挙げている。

建物は昭和50年(1975年)に解体され、平成6年(1994年)に博物館明治村へ移された。村内では5丁目56番地に立っている。

外は和風、内は後期ゴシック

登録有形文化財としての登録は平成16年(2004年)2月17日、登録番号は23-0109で、基準は「造形の規範となっているもの」。員数は1棟、構造は木造平屋建、入母屋造桟瓦葺、建築面積172平方メートルと記録されている。

この建物の性格は、外と内の落差にある。外壁は柱を見せる真壁で、屋根には桟瓦が葺かれる。前を通っただけでは、規模の大きな農家に見えてもおかしくない。ところが扉を抜けると、身廊と側廊が縦に伸びる三廊式のバシリカ形式が現れ、天井は後期ゴシックの意匠でまとめられている。博物館明治村は、この和風の外観に禁教の時代の影響が色濃く残っていると説明している。

禁教が解かれて間もない土地で、外から見て教会と分かりにくい姿を選ぶ。その判断が、建物の形そのものに残っている。

堂内で目を向けたいところ

正面の玄関廊と鐘楼

正面には切妻の玄関廊が張り出し、その棟の上に鐘楼が載る。玄関の部分は本屋根より一段低く、階下が入口の土間、階上が聖歌隊席にあてられている。ただしこの鐘楼と入口の土間は建設当初のものではなく、昭和20年代、1945年から1954年にかけて信者の寄付をもとに増築された部分である。

漆喰でつくられたヴォールト天井

身廊を歩くと、視線は自然に上へ向く。天井は漆喰塗で、文化庁の記録は四分ヴォールトと記し、博物館明治村は後期ゴシックの教会堂に見られる交差リブ・ヴォールトを模したものと説明している。石を積んで架けるはずの構造を、木と漆喰で写し取っている。身廊を区切る柱は木製の束ね柱で、これも石造の柱束を木で置き換えたものである。

曲面を描く側廊の天井

側廊に移ると、天井の質が変わる。日本の座敷に使われる竿縁天井が、平らではなく曲面に張られている。和風の天井技法を、ゴシックの空間に合わせて曲げたことになる。身廊と側廊のあいだを行き来しながら見上げると、この教会堂が二つの伝統をどう縫い合わせたのかが分かりやすい。

祭壇とルルドの洞窟

身廊の正面には祭壇が据えられる。右の側廊の正面にはルルドの洞窟が設けられ、左の側廊の突き当たりが聖具室にあてられている。伊王島の信者が日曜ごとに立っていた位置に、そのまま立てる。

見学方法とアクセス

明治村大明寺聖パウロ教会堂は、博物館明治村の5丁目56番地にある。駐車場のある北口からは比較的近く、正門から歩く場合は村内をかなり北へ進むことになる。園内は自然の地形をそのまま使っているため、勾配のきつい坂や段差が各所にある。歩きやすい靴で訪れたい。

建物内部の様子は博物館明治村の公式ページでも案内されている。ただし事故防止のために立ち入りを制限している建物や箇所があり、修理などで見学できない期間も生じる。当日の公開状況は村内の掲示や公式サイトで確かめるのが確実である。なお、飲食店舗以外の建物内での飲食は控えるよう求められている。

開村時間は季節で変わる。4月から7月と9月・10月は午前9時30分から午後5時まで、12月から2月は午前10時から午後4時まで。入村の受付は閉村の30分前で終わる。休村日は数日まとまって設定されるので、公式の開村スケジュールを見てから日程を決めたい。

入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生は各700円で、未就学児は無料。20名以上の団体には割引がある。駐車場は普通車1,000円である。

撮影は私的な目的なら許可を要しない。ただし建物内での三脚・一脚・レフ板の使用と、長時間の撮影や通路を占領する撮影は禁じられている。堂内は狭いので、他の見学者の動きに気を配りたい。公共交通機関では名鉄犬山駅東口から明治村行きの路線バスが出ており、名古屋駅と栄駅からも直通バスがある。車では中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートルである。

Q&A

Q明治村大明寺聖パウロ教会堂は内部を見学できますか。
A博物館明治村は内部の様子を公式ページで案内しています。ただし村内には事故防止のため立ち入りを制限している建物や箇所があり、修理などで見学できない期間もあります。訪問日の公開状況は村内の掲示か公式サイトで確認してください。
Q明治村大明寺聖パウロ教会堂はもともとどこにあった建物ですか。
A長崎湾の入口に位置する伊王島、旧長崎県西彼杵郡伊王島町(現在の長崎市伊王島町)に明治12年(1879年)に建てられました。昭和50年(1975年)に解体され、平成6年(1994年)に博物館明治村へ移築されています。
Q明治村大明寺聖パウロ教会堂の外観が和風なのはなぜですか。
A外壁は真壁造、屋根は桟瓦葺という日本の民家と同じつくりで、外から見ても教会と分かりにくい姿をしています。博物館明治村は、この意匠にキリスト教禁制の時代の影響が色濃く残っていると説明しています。内部は三廊式の後期ゴシック様式です。
Q明治村大明寺聖パウロ教会堂を建てたのは誰ですか。
Aフランス人宣教師ブレル神父の指導のもと、地元の大工である大渡伊勢吉が建てました。大渡は長崎の大浦天主堂の工事に関わった経験を持つ大工で、文化庁の記録にもこの教会堂の大工として名前が記されています。
Q明治村大明寺聖パウロ教会堂への行き方と入村料を教えてください。
A愛知県犬山市内山1の博物館明治村内、5丁目56番地にあります。名鉄犬山駅東口から明治村行きの路線バスが出ているほか、名古屋駅と栄駅からも直通バスがあります。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生は各700円、未就学児は無料です。

基本情報

名称明治村大明寺聖パウロ教会堂
所在地愛知県犬山市内山1 博物館明治村内
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)
員数1棟
寸法建築面積172平方メートル
所有者公益財団法人明治村
公開状況一般公開。博物館明治村の入村者が見学できる

参考文献

国指定文化財等データベース 明治村大明寺聖パウロ教会堂(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003875
文化遺産オンライン 明治村大明寺聖パウロ教会堂
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/150485
博物館明治村 大明寺聖パウロ教会堂
https://www.meijimura.com/sight/大明寺聖パウロ教会堂/
博物館明治村 開村スケジュール
https://www.meijimura.com/guide/open/
博物館明治村 各種料金
https://www.meijimura.com/guide/price/
博物館明治村 アクセス
https://www.meijimura.com/guide/access/
博物館明治村 村内での撮影について
https://www.meijimura.com/photography/

最終更新日: 2026.09.03