専念寺庫裏とはどのような建物か

専念寺庫裏は、愛知県犬山市大字犬山字西古券にある浄土宗専念寺の僧侶の住まいと寺務の場を兼ねた建物で、元禄2年(1689年)の建築、平成19年(2007年)12月5日に国の登録有形文化財(建造物)となった。木造平屋建、建築面積216平方メートル。本堂の東側に、同じく南を向いて建つ。

規模は桁行21メートル、梁間11メートル。屋根は切妻造桟瓦葺妻入である。棟の向きが南北に通り、三角形の妻壁のある側が正面に来る。仏堂である本堂が入母屋造で正面に向拝を張り出すのに対し、専念寺庫裏は棟の短辺から入る住まいの形をとる。境内に並ぶ二棟の性格の違いが、屋根の形だけで見分けられる。

庫裏は本来、台所や食事の支度、寺務、住職一家の生活を引き受ける建物である。参拝者が上がる場所ではないが、寺の日々はここで回っていた。専念寺庫裏の内部も、その用途に沿って明確に区分けされている。

本堂と同じ平成16年(2004年)に改修が行われた。文化庁の国指定文化財等データベースは年代を「元禄2/平成16改修」と記録している。

なぜ専念寺庫裏が登録有形文化財になったのか

専念寺庫裏の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録番号は23の0263、第57回の登録で、告示は平成19年(2007年)12月19日に出された。本堂が「造形の規範となっているもの」で登録されたのに対し、庫裏は町の景観への貢献という別の基準で評価されている。同じ境内の二棟が異なる基準で登録された点は、この寺を見るうえで押さえておきたい。

年代の古さも評価の要素である。文化庁は専念寺庫裏を、江戸中期にさかのぼる庫裏として注目されると記す。庫裏は生活の器であるだけに、家族構成や生活様式の変化に合わせて建て替えられやすい。17世紀の庫裏がまとまった形で残っている例は多くない。

内部の構成もよく残る。正面側には土間などが配され、その奥、建物の後ろ寄りにある床上の部分が縦方向に二分される。西側は床の間などを設けた座敷で、檀家や来客を迎える接客の空間。東側は内向き、つまり住職一家が日常を過ごす居室にあてられている。接客と生活を左右に分ける単純な原理で、21メートルという長い建物が破綻なく使い分けられていた。

専念寺庫裏と犬山城下町の景観

専念寺庫裏の登録基準が景観への寄与であることは、この建物の立地と結びついている。犬山城下町は堀と土塁で外周を囲む総構えの町で、犬山市の歴史的風致維持向上計画によれば、その北西部には常満寺から専念寺までを結ぶ土塁が築かれていた。専念寺の境内は、町を守る線の内側の端にあたる。

天和元年(1681年)作成の「尾張国犬山城絵図」には、城下町の出入口となる木戸が9か所描かれている。そのうちのひとつが専念寺の門前にあった中切口である。専念寺庫裏が建てられた元禄2年(1689年)は、この絵図が作られてから8年後にあたる。門前が町の出入口として機能していた時期に、この庫裏は建てられたことになる。

明治以降、土塁と総堀は急速に姿を消した。同計画は、専念寺坂の付近でも土塁や堀が失われたことを記録している。防御の構造物が消えたあと、江戸時代の町の輪郭を今も示しているのは、寺院や町家といった建物のほうである。専念寺庫裏が景観の基準で登録されたのは、そうした事情による。

専念寺庫裏の見学方法

専念寺庫裏は現に住職一家が生活する建物であり、拝観の制度も拝観料もない。内部は非公開で、見学できるのは境内から見た外観に限られる。本堂の東側に立つ妻入の屋根を、参道から確かめる程度と考えてほしい。

境内には社会福祉法人が運営する白帝保育園があり、平日の日中は園児が過ごしている。子どもが写り込む撮影は避け、外観の撮影も個人で楽しむ範囲にとどめたい。掲載や商用の利用を考えている場合は、事前に寺へ問い合わせが必要である。

アクセスは名鉄犬山駅の西口から徒歩約15分、距離にして約1.1キロ。名鉄犬山口駅からも徒歩約15分ほどである。犬山城下町の本町通りから一本西へ入った通りに参道があり、門を入って正面が本堂、その右手が専念寺庫裏という位置関係になる。

ここに記した見学の情報は2026年9月1日時点のものである。生活の場である建物なので、静かに見学し、長く立ち止まらない配慮をお願いしたい。

Q&A

Q専念寺庫裏は拝観できますか。内部を見学できますか。
A拝観の制度はなく、拝観料もありません。住職一家が生活する建物のため内部は非公開で、見学できるのは境内から見た外観のみです。
Q専念寺庫裏はいつ建てられた建物ですか。
A元禄2年(1689年)の建築です。平成16年(2004年)に改修が行われています。江戸中期にさかのぼる庫裏として、文化庁の国指定文化財等データベースでも注目されると記されています。
Q専念寺庫裏はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という登録基準によります。犬山城下町の総構えの内側に立ち、江戸時代の町の姿を伝える建物として評価されました。本堂とは別の基準での登録です。
Q専念寺庫裏はどのような間取りになっていますか。
A桁行21メートル、梁間11メートルの規模で、正面側に土間などを配し、後ろ寄りの床上の部分を縦に二分します。西側は床の間を設けた接客用の座敷、東側は住職一家の居室です。
Q専念寺庫裏へは最寄り駅からどのくらいかかりますか。
A名鉄犬山駅の西口から徒歩約15分、約1.1キロです。名鉄犬山口駅からも徒歩約15分ほどで、犬山城下町の本町通りから一本西の通りに参道があります。

基本データ

名称専念寺庫裏
所在地愛知県犬山市大字犬山字西古券262
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成19年(2007年)12月5日登録
員数1棟
寸法桁行21メートル、梁間11メートル、建築面積216平方メートル
所有者宗教法人専念寺
公開状況外観のみ見学可、内部は非公開

参考文献

国指定文化財等データベース 専念寺庫裏(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006495
文化遺産オンライン 専念寺庫裏(文化庁)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/142258
犬山市歴史的風致維持向上計画(犬山市)
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001072/1001074.html
犬山市の文化財(犬山市)
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001068.html
施設案内 白帝保育園(犬山市)
https://www.city.inuyama.aichi.jp/shisetsu/youchien/1002763.html

最終更新日: 2026.08.31